これからのブランディング 【第9回】これからの日本のブランディング(2)

みなさん、こんにちは。
シニアコンサルタントの山崎です。

連載コラム
「これからのブランディング」
第9回目です!

これからのブランディング 【第1回】ブランディングって世界ではどうなっているのか?~グローバルブランドランキングから

これからのブランディング 【第2回】ブランディングって世界ではどうなっているのか?~グローバル・トップブランドの3事例から

これからのブランディング 【第3回】ブランディングって世界ではどうなっているのか?~カンヌライオンズの観点から

これからのブランディング 【第4回】ブランディングって世界ではどうなっているのか?~ブランド動画:この10年のお勧め10選

これからのブランディング 【第5回】ブランディングって世界ではどうなっているのか?~ブランド動画:この10年のお勧め10選(後編)

これからのブランディング 【第6回】日本のブランディング状況について

これからのブランディング 【第7回】グローバルと日本のブランディングの比較について

これからのブランディング 【第8回】これからの日本のブランディング(1)

前回は、
これからの日本のブランディングについて
3回連続の(1)を
お話ししました。

ポイントは

  • グローバルのブランディングの潮流として
    社会課題への対峙が当たり前になっている
  • そのような中、日本のブランディングは大分遅れている
  • しかし実は、日本では以前から同様の思想が存在しており、
    「社会課題解決型」は、“日本が本家だった”

という内容です。

そんな日本であらためて
社会課題解決型のブランディングを目指すには
どういったアプローチが有効でしょうか?

具体的なアプローチ方法を次回にも分けてお話ししていきます。

まず今回は
一つ目のアプローチとして
「Social Good Branding」
~これからの日本型ブランディング「価値の探求方法」~
についてお話しします。

グローバルの潮流を洞察するために
カンヌライオンズの受賞作品を参考にすることが有効であるのは
これまでのコラムからもご理解いただけていると思います。

そして、日本のブランディングも
現在のカンヌ作品の多くに見られる「社会課題解決型」の方向性を目指すべき
と考えていました。

しかし、2022年あたりから
これまで同様、社会課題に対峙することは変わりないものの
(というより更に強くなっていった)
そのテーマの選定や表現といったアプローチ方法が、妙に重く感じるようになりました。

更に今年2023年の作品を見ると、その傾向は過激さを増し、
もはや「これは日本や日本人では無理だな」という位のレベルになってしまっています。

そのときは正直「これはどうしたものか?」
と感じました。

その後、悩んだのですが、
逆転の発想で
「(社会課題への対峙は変わらず必須だが)
そのアプローチ方法は、もはやグローバル(欧米中心)を追う必要はなく
むしろ日本型のアプローチを追求する時代になった
という考えに至りました。

では
日本型のアプローチ
とはどうすれば良いのか?という話になりますが

これは、グローバル・ブランドたちが対峙している社会課題、
戦争や銃社会、宗教、人権、環境、等々も
世界的ビッグイシューとして大事なのは当然ですが
日本は、まず日本国内の具体的社会課題に対峙してはどうか?
と考えました。

では、日本国内の具体的社会課題とは何か?

みなさん、どうお考えですか?

これは、実は私がコンサルティングをするときの
最初のワークショップで取り上げてきたテーマなのです。笑

日本国内の具体的社会課題って
人によって重要と思うポイントが結構異なります。

それによって、ワークショップに参加する各メンバーの
価値観や社会への見方やスタンスがわかってきます。

そして、日本は実は社会課題が山積みで、しかも年々急速に、
それも相当多岐にわたっています。

近年は、メディアもそういった社会課題をきちんと報道しなくなっており
国民の認識は、残念ながら非常に低下してきています。
(これもかなり大きな社会問題ですが)

こういった状況を踏まえ、
これからの日本が、社会課題解決型のブランディングを目指すアプローチとして
「3C分析のアレンジ方法」をご紹介します。

まず3C分析とは

  • Customer(市場、顧客)が求めていて
  • Company(自社)が持っていて
  • Competitor(競合)が持っていない

機会や価値を導き出すメソッドです。

そしてこの中の、
Customerを「市場、顧客」とする以前に
 「社会の課題と生活者のインサイト」とします。

自社が対峙すべき「社会の課題と生活者のインサイト」を導き出し
これを「市場や顧客とそのニーズ」に落とし込むのです。

「社会課題」としては、
PEST分析と言われるカテゴリー

  • 政治(Politics)
  • 経済(Economy)
  • 社会(Society)
  • テクノロジー(Technology)

などをベースにし、
どのカテゴリーの課題に自社は対峙していくべきかを考えていきます。

ここから新たな市場機会と顧客のニーズに落とし込んでいくことで
「社会課題に対峙したビジネス(市場)の創出」に繋げていきます。

また「生活者のインサイト」としては
出てきたアウトプットのレベル感を確認する指標として
「Global Truth:人間にとって大切な5つの基本的価値」
を使っていきます。

5つの基本的価値とは

  1. 喜びを感じさせる
  2. 結びつくことを助ける
  3. 探究心を刺激する
  4. 誇りをかき立てる
  5. 社会に影響を及ぼす

で、消費者インサイトの例えとして
「車はエコなものを買って、環境の改善に役立ちたい」
といったものより、更に本質的な、
人間なら国や民族を問わず誰でもが共通に感じられるものか?
という観点で確認します。

これは、元P&Gのジム・ステンゲル氏の2013年に出版された書籍
「GROW」 本当のブランド理念について語ろう
から引用しています。

この3C分析アレンジ版を使うと
対峙する対象も、「市場から社会課題へ」とスケールが大きくなりますが、
同時にブランドとしての新たな可能性や価値も導き出しやすくなり、
更にそのステージも一段あげられる傾向があります。

まあ、説明上では結構シンプルですが
実際にやってみると、その人の社会観が出てしまいますし、
日頃から社会課題に対する意識がないと、結構難しいかもしれません。

ただ、これからの企業は、儲かる市場だけを見ていれば良い時代ではないことは確かです。

その企業は社会にどう役立っているのか?
企業も社会からはそのような目で見られていくようになっていくでしょう。
「企業における社会的存在意義」は今後益々重要になるため、
上記のようなアプローチは、これから必須になっていくのではないでしょうか。

ということで
次回は、
具体的なアプローチ方法の二つめのポイントをお話しします。

次回もお楽しみに!!

 

著者プロフィール

山崎 浩人 Hiroto Yamazaki
・一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会
/アドバイザー
・株式会社CARTA COMMUNICATIONS
/ブランド・コンサルタント

マス広告・CRM・モバイル・クロスメディアと
常に最先端のマーケティングを開拓。
通信業界x広告業界でモバイルキャリアレップCEO。
広告業界x放送業界でクロスメディア事業者CEO。
東日本大震災をきっかけにプレイヤーへ復帰。
世界最大手外資広告グループ会社に5年在籍。
日本自動車メーカー8社共同プロジェクト
「Drive Japan」の総合プロデューサーとして2012年Web人 of the yearを受賞。
大企業中心にブランド、グローバル、デジタルと様々な戦略コンサルティングを手掛ける。
業界等のイベント登壇、講演、記事、インタビュー、多数。

その他コラムはこちら