例えばバッグを買いに行ったとしよう。
店員さんから2つ以上の商品を勧められ、
「どれもお客様にとてもお似合いです。いかがいたしましょう?」と
問いかけられたことがあるのではないだろうか。
もちろんこれはバッグに限った話ではない。
洋服も時計も然り、誰しも1度は経験があるはずだ。
そしてお客は、並べられた2つの商品を見比べて、
結局は、自分で選んだ商品を手に満足しながら店を後にする。
こんな当たり前のような行動だが、
実はここには『コントロールの錯覚』が生じているのだ。
では、『コントロールの錯覚』とはどのようなものだろう。
ある経済学者の研究によると、
人間は、自分の運命を自分の手で決めることが
できていると感じられる時の方が、幸福感が高いのだそうだ。
要は、人間は自らが選択したものの価値は、
自分で選択してなかった場合より高く感じるということだ。
つまり、自分が関与した、自分で選択したことによって、
自分に有利な結果が生じると考えるのである。
弊社のような広告屋などの場合も、
本命のアイデア以外に、いくつか対抗のアイデアを同時提案し、
クライアントさんに決定してもらうというケースが少なくない。
これもある意味『コントロールの錯覚』を
無意識に使っているケースと言えるだろう。
身近な例で言えば、寿司屋などの
「松」「竹」「梅」といったメニューも、
寿司屋側は、本命のメニューは「竹」とした上で、
どれにするのかお客自身に選択してもらうという流れを作り、
『コントロールの錯覚』を生じさせているのかもしれない。
※参考書籍『マーケティングの心理学』(重田修治著/明日香出版社)