ブランド名開発における商標調査~ブランド名と商標の関係その2

前回のコラム(2019.01.07)では、商標の2つの役割について触れ、商標を利用することでブランド名を保護できることを概観しました。今回は、実際にブランド名を作るときにどのようなタイミングでどのような調査をすればよいか、解説したいと思います。

ブランド名開発のプロセスと商標調査のタイミング

まず、一般的なブランド名開発のプロセスを簡単に説明します。ここに示した手順は絶対的なものではなく、各ステップを行ったり来たりすることもありますが、大筋このように進行します。

ブランド名開発の一般的なプロセス
1.案出し
2.絞り込み
3.商標調査
4.提案
5.商標出願

1.案出し~ブランド・アイデンティティに基づきたくさんの案を出す

案出しをする前に、「ブランド・アイデンティティ」(顧客からこう思われたい、という企業側の意思を表明した短い文言)など、ブランドの性格を規定するものはすでに決まっている必要があります。たとえば、ターゲットは若年層なのか中高年なのか、女性なのか男性なのか、クールなイメージなのか熱血なイメージなのか、などなどです。これらを取っ掛かりにして、数名でブレーンストーミングをしたり、多くの人から思い付きを集めたりして、まずはとにかく多くの案を出すことを目指します。
たくさん案を出していく過程で、当然ながら話がどんどんずれていくことがあります。しかし、ピントがずれたと思っていたら、突然名案が出てきたりするのがブレーンストーミングの面白いところです。ブレーンストーミングをする際は、メンバーの中に突拍子もない意見を言う人を、1人くらい入れておくと良いでしょう。たとえば、事業内容やブランディングについてほとんど何も予備知識をもたない若者などです。そのことが思わぬ化学変化をもたらします。案の「量」を多くすることを意識しましょう。

2.絞り込み~ブランド・アイデンティティを絞り込みの基準に

次は絞り込みです。突拍子もない案は、化学変化の起因にはなっても、それ自体では使えない場合がほとんどです。「ブランド・アイデンティティ」を絞り込みの判断基準として用い、これに整合しない案は排除していきます。ブランド名の推奨案を数個程度まで絞り込みます。

3.商標調査~自分たちでできる範囲と専門家に依頼すべきこと

絞り込みの次の段階で、商標の調査を行うことをお奨めします。商標の専門家(弁理士)に依頼するほうが確実ですが、専門家でなくても、自分たちでできる調査もあります。ここでは仮にこれを簡易調査と呼びます。
自分たちが開発したブランド名と全く同じものが、すでに商標として登録されているかどうかを、特許庁のウェブサイトで無料で調べることができます(※1)。

J-PlatPat
特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

こちらのサイトの「商標」から「3.称呼検索」で、ウェブ上で確認できます。称呼とは「呼び方」を意味する専門用語です。

もちろん、過去に登録された商標と完全に同じでなくても、「類似」しているため商標として登録できない、という可能性もあります。類似しているかどうかを調査する際も、J-PlatPatは使えますが、「類似」の判断は難しいため、自分たちでは軽々しく判断せず専門家(弁理士)に依頼すべきです(※2)。ただし、弁理士に依頼すると当然調査費用がかかるため、次のステップである「提案」で案を1つか2つに絞った後で行ったほうが良いでしょう。

4.提案

商標調査が済んだら顧客への提案(自社ブランドを作っている場合は自社の上司などへの提案)に進みます。ここで、数個の推奨案から1つを選び、ブランド名を決定します。
ここでどの案も選ばれなかった場合、1や2に戻って案を出し直すことになるのは言うまでもありません。

5.商標出願

決定したブランド名を特許庁に商標として出願します。審査が済むまで数ヶ月かかりますが、晴れて登録できると分かった段階で、ブランド名を実際に使用し始める、あるいはその準備をする(ブランド名を記載した名刺を作る、看板を作るなど)のが確実です。

読者の皆さんが商標をうまく活用して、ブランドを保護し、ひいては発展させることを祈っています。

 

※1 正確には特許庁ではなく、特許庁が所管する独立行政法人 工業所有権情報・研修館のウェブサイト
※2 商標の「類似」は、手短に言えば見た目(外観)、呼び方(称呼)、意味(観念)の3つの側面から判断されます。

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