仮説創造力による顧客提供価値の設計 その4

朝の通勤途中、歩道や電車から見える目黒川に咲く桜が日々段々と開花してゆくのを見て春を実感し始めているなか、三寒四温に困りコートやストールで調整しつつも手荷物が増えることで不便を感じているのは私だけでしょうか?また、この時期は私にとって一番不快となる花粉のシーズンです。長いお付き合いをしているのですが、今年もクライアント様とのコンサルティング業務中、ハンカチは手放せない辛い毎日を送っている次第です。

反面、嬉しいこともありました。去る3月上旬に、無事大学院の入学試験に合格し、4月から博士後期課程へ進学することが決まりました。周知の通りMBA(修士)は持っておりますので、学問最後の砦となる博士号は修士とはまた違うレベル感の学問(研究)領域になります。これから最低3年間は社会人学生として、平日は仕事。土日は、大学院の研究所。このようなことが続くことになります。生涯学習ともいわれているとおり、実務・実践派のコンサルタントとしてアカデミックな領域もしっかりと身につけながらバランスよくクライアント様をご支援し続けてゆきたいと思っております。

 

さて今回のコラムですが、前回、時間軸と空間軸で「不」を推測し、顧客のニーズを仮説立てする方法をお伝えしました。これは厚生労働省所管の生産性向上支援訓練で行った、自立自走の営業パーソン向けのセミナーで皆様にトライしていただいた研修内容と一緒です。セミナーの際は、顧客視点になって考えることを強調し、皆さんに取り組んでいただいたワークショップでした。皆さん普段使わない思考回路だったため、簡単に進まなかったことをよく覚えております。

 

本質的な欲求は何か?

それぞれの「不」を時間軸と空間軸で整理することで、どの様な不満がいつ、どこで、どのように起きているのか俯瞰できるようになったかと思います。ここで、顧客・消費者の本質的な欲求(≒解決したい課題)を探るため、改めて全体の「不」を見直してもらいたいと思います。それは、色々ある不満の中でも特に多いのはどの「不」であるか?を見直す事です。

見方として、全体的に「不安」が多いのか、それとも「不便」が多いのか、または「不信」が多いのか?などを確認。そして、各時間軸別にどの「不」が多いのかを再検証します。全体的に多い「不」が例えば「不信」だとすると、顧客・消費者は基本的にその商品・サービスを解決手段として選んでいる根拠に何らかの不満材料を払拭しうる便益があるからと推測できます。

 

本質的欲求への対処が重要!

仮に家族で食事をする際に、経済的で美味しいものが近場で待たずに気軽に食べられるカジュアルなお店を選んだ消費者は、価格に対する不安、距離に対する不便、美味しいか否かという不信、気軽か否かの不快など、平均的に一つずつ選びました。ここからこれをもっと掘り下げて行くと、ある程度口コミ数が多く知名度のあるお店で、中でもお墨付きの看板メニューが人気No.1にあり、仮に外れても許せる範囲の経済的価格で食べたいとなると、本質的な欲求は「不信」を解決したいというのが分かります。企業はこの本質的な欲求に対して、どの様な解決策を知らせてあげられるか?これを時間軸置き換えた場合、①の段階(「仮説想像力による顧客提供価値の設計 その3」をご参照)であればまずは「不信」を払拭できるメッセージを提供し、選んでもらえるようにすることが重要です。したがって、素材へのこだわりや調理法などついつい行きがちですが、例えばシェフが元有名ホテルや海外のレストランで働いていた経験などを教えてあげるのも一つの手かと思います。

 

当「仮説創造シリーズ」ですが、改めてもう少し丁寧に説明すると、市場機会を見出し、それに向けて戦略を組んでゆくプロセスに仮説構築が必要であることを再度お伝えします。この仮説構築をするには「想像」と「創造」があり、今回の「不」の取り組みは「想像」の方です。ここから出てきた情報(推測)をベースに戦略構築(仮説創造)を組んでゆきますので、次回は時系列に整理された「不」をどのように戦略として組み立て直すかコラムに書きたいと思います。

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