企業ブランドの再構築で組織力を活性化~形骸化した経営理念を再起動させるチャンスの道筋~

さて、今回のコラムでは企業ブランドついて筆を進めようと思います。
日々のコンサルタント業務において、今年は昨年に続き多くの企業様からコーポレート・ブランド(企業ブランド)の再構築に関するご相談、ご依頼を頂戴しております。再構築理由は個社固有にございますが、そこから見えてくる共通点は「社外」向けというよりも「社内」に向けた取組みを中心に考えているところです。

社内に潜む問題

これまで、ブランディングのオファーの中核的なミッションは、「社外」向けのブランド価値訴求でした。ブランド認知を広げ、競合との差別化を強化し、競争優位を高めたいというご相談が中心でした。しかし、この度頂いているご相談の問題の多くは「社内」に潜むようです。その問題の一例ですが、

  • 事業領域を変革し成長したいが、社員がこれまでのやり方を変えたくない。
  • 上層部が作った経営戦略が末端の事業部までしっかりと伝わっていない
  • 中途採用の人材が増え、お互いの価値観が違うため意見が合わず、組織化してない
  • 人手不足のため、人材を補強したいが、人が集まらない。(他社にとられてしまう)

などなど、一つ一つは違った問題ではありますが、その共通する点は「ヒト」です。つまり従業員です。従業員は、会社にとって大事な経営資源です。まして今日では労働人口の減少は社会的問題ともなり、市場では言わば人材の争奪戦が繰り広げられております。
そんな中、企業としては一人でも多くの従業員に帰属意識を高めてもらい、会社に貢献してもらいたいと願うばかりです。では、従業員はどうしたら会社に対する帰属意識を高められるのでしょうか?

会社の存在意義(目的)ってなに?

結論から言うと、会社の目的は一体なにか?その目的に共感・共鳴できるか?がポイントです。従業員は、お給料の沙汰だけで勤めているわけではありません。自分が社会で成し得たい目的と、会社が成し得たい目的を照らし合わせ、そこに関心、共感し合えないと、お互い長くお付き合いすることはできません。
では、自社の目的は一体何か?社会における存在意義は何か?と問われると、ハッキリと答えられない企業様も少なくはありません。反面、それを端的に言語化して表している多くの例が企業理念です。企業によって、経営理念、ビジョン、フィロソフィー、コンセプト、社是など多少言い方は違うかもしれませんが、多くの企業は拠り所とするものをもっています。本来この理念に相当するものは毎年変えるものではなく、長く語り続けられなくてはならないものです。

形骸化した経営理念

しかしながら、その言葉の意味はどうでしょうか?その理念を作った当時、今のような先の見通しがつかないVUCA時代を予測して作られているのでしょうか?
そこで、今ある理念を刷新することを決めるのは決して否定は致しませんが、もっと重要な点は、今ある理念を現代の環境においてどのように咀嚼・解釈し、どの様に会社を外部環境に適合させてゆくべきかを整理するか、です。したがって、今の時代に沿っていないから理念を変えると即座に判断するのではなく、その理念を抽象化させ創業者が言わんとしている「本質」を見抜き、今の時代に合った解釈に置き換え、環境に適合させて行くかが現理念を活かした方法です。ところが、多くの企業では経営理念が形骸化し、一応あるけど深く意味を問いただしていなかったり、朝礼でお経のように毎朝読み上げているが、あくまでもルーティンとして言っているだけだったり、あくまでも他人事にようになっているのではないでしょうか?

「会社の目的」と「自分の目的」は一致する?

私がクライアント様企業へ出向き、御社の企業理念は何でしょうか?と尋ねると、多くの方は答えられます。しかしながら、その意味を問いただすと、文字化された表層的な言葉の意味の説明は当然できますが、その本質となることの説明ができる方が多くはありません。また、会社の目的と自分の目的が一致する点はどこですか?と尋ねると、答えられる方がほとんどおりません。

まずはブランド・アイデンティティを創ることから

企業ブランド(コーポレート・ブランド)構築するときの重要なポイントは、数ある情報を精査しながら体系的に整理し、まずは核となるブランド・アイデンティティ(BI)を形成することを目標とします。多くの企業は、このBIを創ることを目的にしますが、これは今起きている社内の問題を解決するツール(課題解決する手段)に過ぎないことを理解する必要があります。また、BI形成後に、従業員のみなさんが簡単に咀嚼、解釈ができるようにもうひとひねり、ふたひねりの工夫が必要となります。この“ひねり”が一番重要です。
自社の目的をもう少し嚙み砕いて(現代的に翻訳して)、なおかつ自分事として容易に理解できるように設計しなくてはなりません。

ブランド=自分の子供 創りをサポート

この一連の取組ですが、私がクライアント様と伴走しながら支援させて頂いている企業ブランドの再構築は、幾つかのフォーマットを組み合わせながらお互いに言語化し、可視化させながら丁寧に進めております。クライアント様は企業の人(身内の人)なので、なかなか自分の会社を客観的に見ることができませんが、私は社外の人(よそ者)なので、常に客観的に全体を俯瞰してみることができます。取り組むセッションでは、ワークショップを交えながらコーポレート・ブランド・アイデンティティを形成してゆきます。しかし、その過程で幾度も皆様が行き詰ることがあります。我々専門家は、皆様が苦しむところを都度サポートしながら前へ進めて行き、皆さまのブランドを皆様ご自身で創出できるように支援しております。皆さんが苦しんだ分、大切で想い入れのあるコーポレート・ブランド・アイデンティティが立派に誕生します。その感動は創った方にしかわかりませんが、達成感は大きなものです。

従業員の帰属意識を上げる秘訣 「ワクワク」 するブランド

企業ブランドの構築は決して簡単ではありませんが、その構築する本当の目的を見失わないことは重要です。目先の課題解決(例えば従業員の意識改革)のためでなく、また、いたずらに理念を変えるのではなく、働く従業員がそれを見て、ワクワク(未来に対する期待や魅力、喜び)するかがポイントです。評価制度や組織構造をいじってモチベーションを上げても、その根本となる企業の目的がしっかりとブランドとして社内に浸透していない限り、企業への帰属意識、貢献意識は高まりません。社員の意識改革を考え、明日からの行動変容を即座に期待することは大きな間違いですが、何もせず、今まで通り「空気を読め!」「上司の背中をみろ!」的な文化は既にオールドスタイルであり、これでは明日がありません。

一番近くにいる経営資源「人財」の活性化に本気に悩んだら是非、会社の壁にお飾りになっている額縁に入った経営理念や、毎朝お経読みになっている経営理念を見直す機会だと思って一歩前に踏み出してください。その思いさえあれば、私たちは全力でサポート致します。

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