ローソンの糖質オフ商品 ~ グループブランドシナジーの成功例 ~

ローソンで顧客支持が拡大している糖質オフ商品について、更に商品ラインナップが拡充する模様です。

ローソン/健康とおいしさ追求「糖質オフ商品」拡大

ローソンは6月15日、使用する原材料を工夫することにより「糖質オフ」を実現したおにぎり、チルド弁当、調理麺、サンドイッチを発売する。

使用するご飯の量を約4割に減らし、もち麦と大豆たんぱくに置きかえたおにぎり「昆布だしで炊いた鮭とわかめのおにぎり」(税込150円)、ご飯の代わりにもち麦と刻んだカリフラワーを使用したチルド弁当「おだしがおいしい もち麦冷し茶漬け(鶏飯風)」(399円) 、ブラン入り食パンを使用したサンドイッチ「ブラン入りサンド チキン&ベジタブル」(298円)、麺に使用する小麦粉の一部を食物繊維などに置き換えた冷し麺「裏切りの一杯 の5品がそろう。

6月11日行われたオンライン商品説明会で、友永伸宏商品本部長補佐は、「コロナ禍で健康に関する意識、ダイエットへの関心が高まっている。当社の健康機能性ベーカリーの販売数は右肩上がりとなっている。今回、商品ラインナップを拡大し、毎日飽きずに商品を選択できるようにした。価格も、ナチュラルローソンで培った健康関連商品のノウハウ、素材メーカーの協力もあり、高機能商品にしては、抑えめにすることができた」と述べた。

「昆布だしで炊いた鮭とわかめのおにぎり」は、日本食品標準成分表2020年版「おにぎり(うるち米)」具材なしと比較し、糖質37%オフ。ごはんは昆布だしで炊き、大豆たんぱくも昆布だしで炒めて加えている。米を約4割減らし、代わりに大豆たんぱく、もち麦を加えた。

「おだしがおいしい もち麦冷し茶漬け(鶏飯風)」は、ご飯を使わずに、もち麦と刻んだカリフラワーを使って約40%糖質をカットした。さば節、宗田かつお節、煮干し、昆布などを使ったこだわりのだしをかけて食べる冷たいお茶漬けとなっている。奄美大島の郷土料理・鶏飯(けいはん)をイメージし、具材には蒸し鶏、錦糸卵、椎茸煮、小松菜、人参、たくあんをトッピングし、様々な食材の食感や味わいが楽しめるという。

「ブラン入りサンド チキン&ベジタブル」は、2012年の「ブランパン」立ち上げから関わったメンバーが開発を担当。自社アンケートで健康意識の高い人は、調理パンに「野菜が食べられること」をあげていたことに着目し、レタスと人参を鶏むね肉に合わせた。糖質30%オフ食パン使用。
「裏切りの一杯 焙煎胡麻のコク!冷し担々麺」と「裏切りの一杯 鶏の旨み!冷し白湯麺」は、麺の量はいつもの量と変わらず、食べ応えはそのままに、糖質40%オフ麺を使用した。

「冷し担々麺」は、肉みそ、ナッツ、山椒、えびラー油もやしなどの具材と従来品の約2.5倍の練りごまを使用することで、本格的な担々麺の味付けにした。「冷し白湯麺」は、鶏の旨みを感じるスープにゆで卵と鶏肉 、さらにアクセントとしてフライドオニオンを加えた。それぞれ糖質オフ麺を使用しながらも、満足感にこだわって開発したという。

(2021年6月11日 流通ニュース 配信記事)
https://www.ryutsuu.biz/commodity/n061112.html

ローソンはコンビニエンスストア業界の中でも業態が複数に分かれて展開されていることが、競合他社に対しての差別化要因となっています。
この状況について、フレームワークである、バリューダイナミクスにて可視化してみたいと思います。

ローソンは三菱商事の子会社にあたるため、三菱グループの協力を得やすい状況下にあります。

三菱グループは金融・研究開発・商社などの幅広い領域をカバーする財閥ですが、その中でも商社機能を持つ三菱商事グループは、食品素材の調達にも大きな力を持っています。

研究開発力がある企業もグループ内に保有しており、なおかつテナント出店の際にも、三菱地所などの支援が見込めます。
そのことから、実験的な商品をグループ内企業に展開し、その評価結果についてデータを収集することも、ローソンが望むのであれば、比較的容易に行うことが可能であると考えられます。

そういった点で考えると、ローソンはグループシナジーによる資源活用が行いやすく、その効果を得られやすい環境下にあると言えます。

では、ローソン自体の経営環境を検討してみましょう。
ローソンの中核的資源(コアコンピタンス)を、可視化して分析してみます。

その結果は下記の通りです。

コンビニエンスストアとして重要なのは、やはり競合に対する独自性です。
ローソンでは、主に下記3つの店舗形態を展開しています。

①ローソン … 標準タイプの中価格コンビニエンスストア
②ローソンストア100 … 価格訴求型の低価格コンビニエンスストア
③ナチュラルローソン … 素材や品質に拘った、高価格のコンビニエンスストア

この中でも、最も差別化がしやすい店舗は③のナチュラルローソンになるかと思います。コンビニエンスストアとしては珍しく高価格の商品を揃えており、健康志向の顧客要望に応えた商品ラインナップが揃っています。

このナチュラルローソンでヒット商品となったのが、糖質オフ商品です。元々健康向けの商品が多いナチュラルローソンですが、ダイエットにも良いとされる糖質オフ関連商品が豊富に揃うということで、健康志向の顧客を起点として、それ以外の顧客にまでローソンに対する顧客支持が拡大していきました。

今回の糖質オフ商品の追加発売は、その時勢を考慮して企画されたものと思われます。

では、現在のローソンが置かれた状況を整理してみたいと思います。
5FORCES分析で可視化すると、下記のようになりました。

 

競合企業においても、定期的に健康志向の商品は発売されています。

一例としては、ファミリーマートとRIZAPがコラボレーションしたスイーツ等が発売されていたことがありました。
こちらも一定規模のヒット商品となりました。
その後も継続的に商品を企画・発売していますが、ローソンの糖質オフ商品に比べると、展開は緩やかなものに留まるようです。

それは、ファミリーマートを利用する顧客に、ファミリーマートが総花的なコンビニエンスストアであるというイメージが定着していることが関係しているものと推察されます。ローソンはナチュラルローソンという健康志向のブランドを展開していることもあり、顧客の思考において、ローソンには健康関連の商品が揃っているという刷り込みが予め行われています。

それに対して、セブン-イレブンやファミリーマートは総花的なコンビニエンスストアというイメージがあるため、健康志向の商品が揃っているという連想が働きづらいところがあります。

その結果、ローソンでは健康志向の商品が展開しやすいという下地作りがされており、なおかつ競合他社に対する差別化要因が生まれ、それがコアコンピタンスに繋がるという好循環が出来上がっているのです。

今回のローソンの戦略は、グループ内の他のブランドを用いて自社のブランドを拡充し、グループ内でのコアコンピタンスを育成するという好事例であると考えられます。

 

 

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