便利でロジックな「フレームワーク」に潜む落とし穴 ― その2―

今回は、私がクライアントのコンサルティング支援する際にいつも気をつけている “3つのポイント”の二つ目の“「事実情報」の収集”についてお話を進めて参ります。なぜ事実の情報収集が重要かと言うと、今起きている結果(事象)は全て事実の積み重ねによって起きているからです。なので、決して表層的事象に捕らわれ結論を早合点するのではなく、丁寧に因果関係をひも解き、深いところに隠れている主となる問題起因要素(ボトルネック)を発見することがコンサルタントの要です。そして、情報の事実性精度を上げてくれるのが「図解化」による情報の整理です。多くの情報を時間軸と空間軸で整理し図解化すると、事実でない情報(憶測情報)に振り回されず事実だけを見ることができ、事象の本質を見極めてゆく大きな手助けとなります。

バイヤスの掛かった情報の整理

ご面談やヒヤリング調査にて提供して頂く情報には、その人の解釈を介することでバイヤス(先入観や思い込み、勝手な解釈)が掛かることが多々あります。それをしっかりと見極めてゆくことがコンサルタントにとっては重要です。当然、お話し頂ける方は間違っていない情報(事実の情報)と考えておられるのですが、話が進んでゆくと途中で前半に聞いていることと後半に聞いていることとに矛盾が生じ始め辻褄が合わないことがあります。単なる私の解釈の間違いなら問題ありませんが、ご説明を頂いた内容を整理し、もう一度私の簡単な言葉や図解を用いて確認すると、ご本人も違いに気づくことがあります。恐らく他人の言葉や文字、図解で説明されると改めて整理がつき、そこで事実や因果関係が明確になることも多々あったりしますので、図解は「情報の整理」にとても役立ちます。

異種格闘技戦による情報錯綜

しかしながら、ご面談やヒヤリング調査では、いろいろな視座・視野・視点で言葉が交わされます。社長や部長、課長や現場の方々とお話しするときやその皆さんが一緒になるときなど。更に複雑で難易度が増すのは、いろいろな部署(生産、総務、営業、開発部など)が一緒になる場合で、言わば情報の異種格闘技戦となります。相対ですら事実情報の見極めが難しい中、異種格闘技戦ともなると業界専門用語、社内用語、部署用語などが飛び交い、理解ができず多くのヒヤリング・ミスをしてしまい、事実を見つけ出すまでに倍の時間を掛けてしまったこともありました。また、いつの間にか不毛の話し合いが続き、私のファシリテーションが上手く行かず、結論に至らないときもありました。

もっともらしい憶測

そこで必ず注意していることは、それが事実か憶測なのかを確認することです。例えば、“最近近所にオープンしたラーメン屋はいつも行列ができていて、特に女性が多く並んでいるからヘルシー系ラーメンなんじゃない”と言われると、根拠のある推測に聞こえます。しかし、競合他社の商品が売れている理由が“性能やデザインはともかく安いからね~”“だからうちも安くしないと売れないよ~”と言われると、なんとなく事実の様に聞こえますが、果たして…。私はこの事実の様に聞こえる“もっともらしい憶測”に惑わされないよう気をつけながら神経を張って傾聴し、情報整理を行っております。

時間軸と空間軸で図解化

私は多くの情報を整理する際に、極力文字は最小限にし「図解化」して簡単にまとめる様にしています。特にクライアントとのご面談やヒヤリング調査においては、煩雑な内容になるケースが多く、極力内容を図解化し、お互いの認識の共有を図り、事実確認を進めてゆきます。その際に重要なのは「時間軸」と「空間軸」になります。事象が生じた際の時間軸(いつ)と空間軸(どこで)を整理することで、事実関係が明確になります。例えば先程の“性能やデザインはともかく安いから売れる。だからうちも競合に合わせて安くしないと売れない”という例ですが、他社が売れて自社が売れてない事実は確かですが、安く販売できる場所がそもそも違い、時期が限定的で戦略的な製品かもしれません。そのどれでもなく、全く同じ売場で恒常的に安く販売できるとなると、改めてビジネスモデルの精査が必要になってくるでしょう。

事実情報を収集せずに単に憶測で推測し仮説を立てると、時に競合の思うつぼにはまり足をすくわれます。情報は良くも悪くも多く存在し、なにが本当で嘘か見極めることは容易ではありません。時には部下から吸い上げる情報も、斜に構えて見るのが良いかと思います。
我々コンサルタントの使命は、事実を拾い上げ論理を積み重ねることで見えてくる「解決すべき問題」を発見することです。発見さえできればコンサルティングは7割終わったようなものです。あとは社長の情熱をもって成し遂げるためのアクションプランを作成し、実行するのみです。

次回は、最後の三つ目「論理の落とし穴」を認識することです。事実を積み重ね、フレームワークで論理を固めることの重要性と、それによる「落とし穴」をご説明したいと思います。
そして、その3つを理解した上で、どの様にクライアントにとって有益なコンサルティングができるか、「論理の落とし穴」のコラムの後に筆を進めて参ります。

■シニアコンサルタント

・産業能率大学大学院修了【MBA:修士(経営管理)】

・日本経営士会 認定プロコンサルタント【経営士】

・一般社団法人 日本マーチャンダイザー協会 マーチャンダイザー 1級

・一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 ブランド・マネージャー1級

・一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 認定トレーナー

東京生まれの東京育ち。25年以上グローバルアパレルブランド企業に勤務。また、15年にわたり経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に役員として従事。プレイングマネージャーとしても海外市場におけるブランド・マネジメントを長く担当。これまでに国内外20強のブランディングやブランド・ライセンスに携わる。特に海外異文化市場におけるライセンスにおいては、唯一無二の正解はなく、常に市場適合を念頭に置き、千変万化させながらビジネス・モデルを再構築しブランド活性化を図っている。その業績が評判を呼び、テレビ東京の「日経スペシャル ガイアの夜明け」にも登場。趣味はバイクのツーリング。少林寺拳法は4段の腕前。

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