ブランドの独自性について

成功しているブランドには何かしら、他社には無い、あるいは他社が簡単には真似できない独自性があります。
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会の8つのステップからなるブランド構築法でも、4つ目のステップに「独自性の発見」を位置付けています。

良いブランドのコンセプトには、そのブランドの独自性が的確に反映されています。
いくつか例を見てみましょう。

・吸引力の変わらない ただ一つの掃除機(ダイソン/掃除機)
・サードプレイス(スターバックス/カフェ)
・第二の我が家(ザ・リッツ・カールトンホテル/ホテル)

ダイソンの例では、いくら使っても吸引力が落ちないという機能的価値がブランドの独自性になっています。
後の二つの場合、機能以外の価値によって差別化を図っています。
「サードプレイス」は、家でも職場でもない、くつろいでもらえる「第三の場所」である、と顧客に思ってもらいたいという企業側の意思の表れです。

しかし、ブランドには独自性が必要だと言うと、時折り次のような質問を受けます。

「どんなブランドでも独自性は見つかりますか?」

答えは「Yes」です。

差別化の切り口

商品そのもの、機能や性能での差別化が難しければ、他のもので差別化を図ることができます。
先程の例に戻れば、スターバックスは商品そのものであるコーヒーを差別化するのではなく、コーヒーを消費する状況(家でも職場でもない場所で、くつろぎながらコーヒーを飲む)を差別化しています。
また、牛丼の「すき家」はファミリー層を取り込むために、テーブル席を備えた店舗を出店しました。
従来の牛丼屋は男性が一人で入るもので、早くて安いことが売りで、カウンター席しかありませんでした。
すき家は「顧客の属性」に着目して、新しい独自性を打ち立てたと言えるでしょう。
もちろん、「情緒的価値」による差別化も可能です。創業者の思い、志など、ブランドの背景にあるストーリーに顧客は共感します。

要するに独自性の切り口は、機能・性能以外にも複数あるという話です。

独自性を見付けやすくする準備

それでもいきなり独自性を見出すことは、実際難しいものです。
それゆえブランドを構築する際には、3C分析などいくつかのステップを踏んで、アイディアが出やすくなるための準備をしていきます。
なかなか良案が出ないこともありますが、そんなときはアプローチの仕方を変えてみたりします。

たとえば、事業フローをいくつかの工程に分割し、この工程ごとに自社と競合を比べながら強みや弱みを抽出すると、漠然と考えていた時には分からなかった、意外な事実を発見できることがあります。
競合他社と比べて価格が高く、当初いかに値下げできるかが課題だと考えていた企業が、逆にその高価格を売りにすることに決めた、という例もあります。事業フローを丁寧に分析することで、自社のサービスレベルが競合に比べて明確に高い部分があることに気付き、価格を据え置くとともにサービスレベルを維持し、ワンランク上のブランドとして消費者・顧客に認知されることを目指そうと決めたのです。

プロセスを丁寧に進めることで、どんな商品・サービスでも、必ず何らかの独自性を見出すことができる。

私はそう信じて仕事をしています。

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