便利でロジックな「フレームワーク」に潜む落とし穴 ― その1―

仕事のイメージ

経営やマーケティング、ブランディングなどの戦略構築には、情報整理に役立つ「フレームワーク」が多くあります。フレームワークでは、頭の中にある煩雑な情報や思いを項目に沿って整理することで、今後の意思決定を進める有用な情報へと変化させるとても便利なツールです。中には学者やコンサルティングファームが開発したフレームもあり、3C、SWOT、VRIOや5フォースなどの分析フレームや、アンゾフの「成長マトリックス図」やポーターの「競争戦略図」などの戦略フレームなど、私自身もクライアントのコンサルティングの際に、とても重宝しており助かっております。

コンサルティングでいつも気をつけている“3つのポイント”

しかしながら、私はこの便利なフレームを使うとき、必ず心がけていることが3つあります。一つ目は「思考停止」に陥らないこと。二つ目は「事実情報」の収集。そして三つ目は、「論理の落とし穴」を認識することです。ついつい便利なのでフレームを使ってしまうのですが、その結果フレームに使われてしまうと、本来見つけ出さなくてはならない「解決すべき問題」が発見できず、クライアントに迷惑かけてしまう事になります。

フレームありきの情報収集

先ず一つ目の「思考停止」に陥らないとは、フレームに頼り過ぎてしまいフレームに沿った情報しか収集・整理しようしないという態度、思考に陥ることです。何となくフレームを使っていると、深く洞察し考えているつもりに思えるのですが、実際は深く考えていない事の方が多く見られます。例えば、皆さんが洋服ダンスに服をしまう時に、どこの引き出しに何をしまうかなど、さほど深く考えず収納されているかと思います。「靴下や下着は1番上」「Tシャツや肌着は2番目」「ズボンは3番目」など、ある基準に沿って端にしまうことだけを考えているかと・・・。しかも、タンスという限られた収納スペースには、「折りたたんで収納できる服」しか収納できませんので、そのタンスに収納できない服(つまり折りたたんで収納できない服)は、「服」であってもタンスというフレームから外れるので、無視してしまう方もいます。本来、服を整理することが目的なのに、タンス(フレーム)に入らないからと言って、整理対象から外してしまうことになるでしょう。

「思考停止」に陥らないために

コンサルティングの実務において、この様なフレームありきの情報整理によって整理対象外となった情報には、実は大きなヒントや問題起因となる種があったりします。これは経験測からのお話しではなく、その情報の文脈や本質をしっかり理解できているか否かの違いです。私は20年近くこの様なフレームとお付き合いしていますが、必ず言葉を丁寧に解釈するように努めております。そして、事象の本質を知るためのコツは、その事象の抽象度上げたり下げたり、または「別の言葉や物」で例えたりすることで、見えてくることが多いです。先程も「フレーム」を「洋服ダンス」に例えて説明したように、「整理する」を「収納する」に置き換えただけのことです。皆さんの身近な生活にある“何かに”例えて考えてみると、案外簡単に腑に落とせ、何も知らない人に説明するときなども、わかり易く説明ができる様にもなります。

目的は「問題の発見」であり、フレームを埋めることではない

そのような姿勢で常に取組むことで、今まで見落としていた情報が、実は重要な情報であったと気づくことができ、フレームに再整理することでしっかりとクライアントの抱える問題を発見することができることになるでしょう。もし、こちらのコラムをお読みになられた方で、“フレームを良く使われている”という方がいらっしゃいましたら、是非とも意識してみてください。

次回のコラムでは、二つ目に気をつけている「事実情報」の収集について筆を進めてゆきます。情報が事実か単なる思い込みか、私がクライアントからのヒヤリングの際に最も注意しているポイントです。なぜなら、そのヒヤリング・ミスで、今後の経営意思決定に大きく影響を及ぼすほどのパワーがあるからです。私がヒヤリング・ミスした事例なども交え、筆を進めたいと思いますのでお楽しみに。

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