企業ブランドの重要性について

近年ますます重要性を増す企業ブランド

ビジネスにおいて企業が展開するブランドには大別して企業ブランドと商品ブランドがあります。その二つが連動して、消費者の頭の中にブランドイメージ形成されています。商品ブランドが、特定の商品(群)の特長を訴求するのに対し、企業ブランドは、その商品を提供している企業はどういった企業なのか、を消費者に伝えている訳です。トヨタのプリウスを例にとると、トヨタという世界的に一流(技術はあるが、あまり尖った商品は出さない)の、最先端のハイブリッド技術を搭載したエコフレンドリーな乗用車というブランドイメージが伝えられる訳です。

私は事業会社において企業ブランド戦略及びマネジメントに携わり、その後の色々な業種の企業ブランド構築のお手伝いをしています。その中で感じるのは、良いものを作れば売れる時代から、企業とカスタマーの関係性がより密接に関わる時代と変化し、その結果として、企業がいかにカスタマーに理解されるかということがますます重要になってきたということです。言い換えると、企業ブランドの強さが今後ますます重要となるということです。

グローバルマーケットにおける日本ブランドの現状

ブランドの強さを示す指標はいろいろありますが、今回ここでは、インターブランド社が毎年発表しているGlobal Best Brands 100というランキングを見てみる事にします。

インターブランド
Best Global Brands 2017  Rankings
https://www.interbrand.com/best-brands/best-global-brands/2017/ranking/
(毎年10月にランキングを発表)

2017のランキングを見ると、日本ブランドは6社がランクインしています。トヨタ、ホンダ、日産、ソニー、パナソニック、キャノンです。トップ10を見ると、一位からApple. Google, Microsoft, Coca Cola, Amazon, Samsung, Toyota, Facebook, Mercedes Benz, IBMと錚々たるブランドが並んでいます。

一方、10年前の2007年の同じランキングを見てみると、トップ10はCoca Cola, Microsoft, IBM, GE, Nokia, Toyota, Intel, McDonald’s, Disney, Mercedes Benzとなっています。(日本ブランドは、Honda (19), Sony (25), Canon (36), Nintendo (44), Panasonic (78), Lexus (92), Nissan (98) )

この10年間の違いで明らかなのは、(1)世界のブランドパワーの中心が製造業からネット上のサービスへと明確なシフトを遂げたこと、そして(2)世界的に影響のあるブランドについても日米欧の三極体制から多極化、特にアジアブランドの台頭が顕著であるということです。

ちなみにIBMはこの10年でハードウェアを中心とするコンピューター産業からクラウドコンピューティングやコンサルティングといった知的集約分野に経営をシフトし、マイクロソフトもハードウェアに依存しないクラウドコンピューティングビジネスの中心の座を確立する事で、ブランド勝者の座を確保しています。

日本ブランドに焦点を当ててみると、10年間で新しく登場したブランドはありません。また、ランキングとしても足踏み状態にあると言えます。内容についても、時代に合わせて変革しようと努力している一方で、なかなか先に行けない状況にあるのでは無いかと考えます。
これをポジティブに、6社は世界市場で確固たる地位を獲得していると捉えることもできますが、危惧しなければならないのは、世界市場において、日本を代表するブランドは端的に言ってしまえば自動車と家電関連のみという構造は変わっていないということ。そして、10年前に比べて消費者行動における自動車や家電ブランドのコモディティ化に伴い重要度は相対的に低下しているということです。別の言い方をすれば、それまでハードウェアの進化によってライフスタイルの変革が促されていたのに対し。現在ではクラウド上にある情報によってライフスタイルの変革が実現され、ハードウェアはツールの座に甘んじようとしているということです。もちろん、ハードウェアビジネスが無くなることや、進化しないといったことは絶対に起こり得ません。それでも、多くの企業がその生き残りを賭けて付加価値の高い事業にて覇権を握ろうとチャレンジを続けています。

世界市場において日本ブランドが行き場を失うということは、その企業だけではなく、関連企業のビジネスダイナミクスに影響し、ひいては日本社会においてもネガティブインパクトを与える虞が高いと言えます。

新しいビジネル領域においてこれからの世界経済にインパクトを与えるような企業・ブランドが出てくることが必要なのは間違い無いですが、既存の日本のブランドがその価値を上げると同時に新しい価値を生み出すシフトチェンジを行うためにも、ブランド力を向上させることは非常に重要であると考えます。

日本企業のブランドのチャレンジ

企業ブランドは、そのブランドに信頼性と永続性を与えます。その事によって(1)事業継続・拡大にアドバンテージを与えると同時に(2)新規ビジネスへのチャレンジのハードルを下げると言った役割を担います。

前者の例がトヨタです。トヨタは、創業以来乗用車を主たる事業領域として、ある意味ぶれる事なくその市場におけるプレゼンスを向上させました。
一方の例はソニーでしょう。ウォークマンやトリニトロンカラーテレビの輝かしい成功がソニーを世界でも有名なブランドに押し上げました。従って、ソニーをコンスーマーエレクトロニクス企業であると認識している人も多いでしょう。しかし、現在のソニーは映画、音楽やゲームといったエンタテインメントから、銀行、保険といった金融まで幅広く展開しているコングロマリットです(ブランドイメージも広がっています)。ソニーが今のように多角ブランドとなったのは、まさに企業ブランドを巧みに活用したことがあります。

その辺りにつき、次回少し掘り下げていきたいと思います。

■シニアコンサルタント

・慶応義塾大学卒 大阪府出身 子供の頃数年をブラジルで過ごす。

・趣味:旅(特に人間の作った歴史的建造物を観に行くこと)、音楽、サッカー&フットサル、料理

1990年、ソニー株式会社入社。渉外部門にてトップの財界活動サポートに従事。1995年、知的財産部門商標意匠部に移動し、商標権の見地からブランドに関与。

1996年、コーポレートブランド戦略を行う組織としてCI室の立ち上げに参画。以後、2013年の退社まで一貫してコーポレートブランドの見地からソニーグループ全体のブランド戦略を主導。

2013年、ソニーを退社し、メットライフアリコ株式会社に入社。アリコジャパン ⇒ メットライフアリコ ⇒ メットライフ生命のリブランディング・コミュニケーション戦略を担当。

2014年に独立し、ブランドコンサルタントとして、乗用車メーカー、金融などのブランドコンサルタンティングを中心に、旅行業、飲食業などを展開。その後イズアソシエイツのパートナーとして業務に携わる。

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