ネーミングの豆知識~音のイメージ~

ブランド名には、シンプルで発音しやすいこと、目立ち、ユニークであることなど、多くの考慮すべき条件がありますが、
今回は「音」に焦点を当て、ネーミングの際に役立つ豆知識を紹介します。

昔のネーミングは今よりもっと単純で、ブランド名が創業者自身の名前になっていたり、商品開発者が自分の家族の名前を商品名にしたりした例が見られます。
しかし今日のように物があふれ、複雑化した時代では、そのようなネーミングを採用するのは勇気が要るでしょう。
多くの会社が高度に発達したブランディングの理論を活用して、好ましいブランド名を開発するために相当の労力をかけています。

音のイメージ

ある研究者は、トップ・ブランドではabckmpsという文字が他の文字よりも頻繁に用いられていることを発見しました。
また別の研究者は、破裂音bcdgkptという硬い音の子音)で始まるブランド名は音の出る速度が速いため、荒く、直接的で、具体性が高いイメージを与えることを発見しました。破裂音はネームをより明確にし、記憶や連想を容易にすると考えられています。
対照的に、歯擦音sc)の響きは柔らかく、ロマンティックで穏やかなイメージがあります。

例:歯擦音が使われているブランド名
・シャネル(Chanel)
・サファリ(Safari) ラルフ・ローレンの香水

「音」と「意味」の間の関係

人間は、知らない言葉を初めて見聞きするときにも、何らかの意味を想像することがあります。
たとえば、「ミル(mil)」という音と、「マル(mal)」という音を聞いた場合、多くの人は「ミル」より「マル」のほうが「大きい」と感じるそうです。
母音の種類によってもイメージは異なります。
たとえば“bee”、“hit”の母音は「前舌母音」と呼ばれ、発音中の舌の最も高い位置が口の前のほうに来ています。
一方、“home”や“food”の母音は「後舌母音」と呼ばれ、舌の最も高い位置が口の奥のほうになります。実際に発音すると分かるように、前舌母音のほうが後舌母音よりも自然に高い音になり、この音程の違いが聴く人に異なるイメージを与えます。
ある研究者の調査によれば、前舌母音を含むネームは比較的、より小さい、より明るい、よりマイルド、より薄い、より柔らかい、より速い、より冷たい、より苦い、より女性的、より友好的、より弱い、より軽い、よりかわいらしい、と知覚される傾向があったそうです。
日本語の場合、前舌母音は「い」、「え」、「あ」、後舌母音は「う」、「お」です(英語の場合はもう少し複雑です)。

まとめ その活用方法

実際には、これらの法則性だけを手掛かりに機械的にネームを作っても、良いものができるとは限りません。
むしろつまらないアイディアしか出て来ないかもしれません。
ただし、ネーム候補が山ほどある場合や、逆に2~3案まで絞れたもののどうしても甲乙付けがたい場合などには威力を発揮することができます。
ネーム候補を絞るための基準の一つとして、この音のイメージに関する法則性を活用することができるでしょう。

参考文献

  1. 「ブランド要素の戦略論理」恩蔵直人、亀倉昭宏 著、早稲田大学出版部、2002年初版(第2章「ブランド・ネーム」)
  2. 「戦略的ブランド・マネジメント 第3版」ケビン・レーン・ケラー 著、恩蔵直人監訳、東急エージェンシー、2010年初版
    (第4章「ブランド・エクイティ構築のためのブランド要素の選択」)

■ブランドコンサルタント/ブランディング・ディレクター

・京都大学理学部卒、同大学院修了【修士(理学)】

・桑沢デザイン研究所 デザイン専攻科ビジュアルデザインコース卒

・一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 ブランド・マネージャー1級

・一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 認定トレーナー

秋田県出身。京都大学では物理学を学び、その後大手メーカーのシステムエンジニアを経てクリエイティブ業界に転身。論理的思考とクリエイティビティの両方を活かしたコンサルティングを得意とする。コンセプト開発、デザインのディレクションも行う。システムエンジニア時代に身に着けたプロジェクト管理のノウハウは、広告業界においてもディレクションに生かされている。ブランドコンサルティングにおいては、どんな分野の情報でも役に立つとの考えから、文学や歴史、文化人類学、社会学、美術やデザインなど、あらゆる知見を取り入れ、左脳と右脳をバランスよく使うことを心がけている。ライフスタイルに東洋医学や自然療法などを取り入れている。

最近の活動:特許庁のイベント「巡回特許庁 in 山口」にてブランディングと商標について講演(2018.09.27)https://www.jpo.go.jp/shoukai/soshiki/photo_gallery2018100501.html

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