紙の基礎知識

2007年を表す漢字が「偽」だったことは、まだ記憶に新しいところですが、2008年もまだ続いています。なんと、再生紙まで偽装されていたとは、、、。
広告・デザイン・印刷業界で仕事をする身として、これまでの食品偽装などのニュースは消費者側から少し距離をおいて受け取っていたのですが、ここにきて断然身近なニュースになってしまいました。レイアウトしていたあの「R100」マークは何だったのだろう?
この再生紙の古紙配合率偽装問題で少し疑問に思うことがあります。
消費者が望む「エコ」でなおかつ「より白く」という無理な要求の実現と競争が不正につながったというような報道がありますが、仮にそうした商品ニーズがあったとして、メーカー側でそれを過大に考えすぎていたのでは?古紙が手に入りにくくなって配合率が維持できないのに「R100」じゃないといけない“空気”をつくっていたのは誰?(消費者?小売?メーカー?)といった疑問です。。。その真相は他に譲るとして、そんなに「エコ」じゃなくても「白く」なくても「紙の魅力」はいっぱいあるはずです。
というわけで、今回は「紙のことをもっとよく知ろう!」がテーマです。


では、一般的な「紙」の分類からはじめます。

■種類と原料・加工法

段ボール、衛生用紙(ティッシュ等)、情報用紙(コピー用紙等)、紙器等、、、紙の用途は多岐にわたりますが、ここではデザイン・印刷用に限定します。

○洋紙:

木材を主原料とするパルプ※1を使用し、機械抄き大量生産による表面の平滑な紙を、「(西)洋紙」(=明治初期にアメリカから輸入されたことから)といいます。

○和紙:

書画に使用される「美濃紙」「鳥の子紙」「画仙紙」などに代表されるように日本産植物(ミツマタ、ガンピ、コウゾ等)の樹皮を使用した古来の(中国で発明され朝鮮半島を経て伝来したものが日本で独自の発達を遂げた)手漉き製法によるもので、繊維質が長く丈夫で独特の風合いを持ったものを「和紙」と言います。ただし、現代では機械抄きも増加傾向にあり、中国産等も輸入されているようです。本来の和紙はオフセット等の印刷には不向きですが、様々な風合いの和紙テイスト印刷用紙が開発されています。
※1. パルプ
主に木材(針葉樹・広葉樹)を物理的に破砕(機械パルプ、グラウンドパルプ)したり、化学的に分解・分離(化学パルプ)することで繊維を取り出しほぐしたもので、化学パルプの配合割合によって上質紙・中質紙・下級印刷紙(更紙)に分類されます。一度使用した紙を原料としたものが古紙パルプであり、それ以外をバージンパルプ(フレッシュパルプ)と呼びます。
また古紙以外の非木材パルプとしては、草・藁・竹等があります。

○塗工紙と非塗工紙:

洋紙は、印刷適性を向上させるため表面に顔料などが塗布加工されているか否かで、「塗工紙」(コーテッドペーパー)と「非塗工紙」に分類されます。「微塗工紙」は両者の中間です。
さらに塗工紙は、その塗布量によってグレード分けされ、軽量コート紙<コート紙<アート紙などがあります。


■特種紙

こうした一般的な印刷用紙以外にも、「特殊紙」として、様々な特性、色、質感(触感、風合い、テクスチャー)の紙があります。
そのいくつかをご紹介すると、、、

○色上質

上質紙に色をつけたものです。

○模様や風合いの豊富な装飾性の高い紙

日本ではひとくくりに「ファンシーペーパー」(ファインぺーパー)と呼ばれ、着色、表面加工やエンボス(型押し)、混ぜ物などにより、多種多様のテクスチャーを実現しています。メーカー独自の商品名(=銘柄)で流通していますが、「レザック」(レザーライク)、「NTラシャ」(日清紡と竹尾のつくった羅紗)のように商品名から内容が想像できそうなものから、「シャレード」「マーメイド」「ミューズ」等、そのイメージ表現のような洒落たネーミングのものまで、沢山あります。

○特別な光沢を与えた紙

ニスやPP(ポリプロピレン)加工によって印刷物の光沢を実現する方法もありますが、ファンシーペーパーに分類される「アルグラス」「メタリック」など鏡面や金属面のような反射率の高い「光沢紙」も豊富にあります。

ちょっと身のまわりにある印刷物を手にとってみてください。
おそらく色にあふれていると思いますが、その色はインクでしょうか?紙の色でしょうか?一般の商業印刷では、例え全面に色が敷かれていても、文字など白い部分の地があることで、白い紙にインクで全面に色をしいていることがわかります。ではその白い紙は皆同じでしょうか?少しその色についてみてみましょう。

■色について

印刷用紙の色は白が基本ですが、その白さにも幅があり、JISでは「白色度」として規定され、一般的には上質紙ほど白色度は高くなります。なお顔料の塗布量ばかりではなく、蛍光増白剤を添加したり、青味を白く感じる性質から染料による青味付けなどの工夫がなされているそうです。
白色以外にも「色上質」はじめ、多彩な色付きの製品もあります。
文字情報だけのスミ1色の印刷物を工夫したい場合、薄い色のある紙を用いることで、白地とは違った面白みのある効果を期待できます。またカラー印刷する場合の配色にあたっては、印刷インクが完全不透明ではないため、紙色が透過された時の変色を考慮すべきです。
特殊な例としては、濃い色の紙に明るい色で印刷したい場合、一度白インクなどを刷った上に重ねて刷る方法があります。

次に紙の大きさや厚さはどう扱われているのでしょうか?

■寸法

原紙(断裁加工前)の全紙サイズ(単位:mm)によってA判(625×880)、B判(765×1085)、四六判(788×1091)、菊判(636×939)、ハトロン判(900×1200)があります。これらを断裁・製本等の加工を経て製品化したサイズを「仕上り寸法」と言い、「A列」「B列」等があります。

■厚さ(重さ)

通常「連量」(=斤量)で表します。一定寸法の全紙(四六判、菊版など)を1,000枚積み上げた時の重さ(kg)で、同質の紙ならば重いほど厚みがあることになります。70、90、110、135kgなどが、よく使われる厚さです。ただし仮に同じ重さでも紙の種類によって厚みは異なるので、実際に見本を手にとってみることをお勧めします。
同様に「坪量」(=米坪)は1平方メールあたりの重さ(g/m2)で表します。
小売やメーカーが用意する紙見本では「連量」「坪量」の2つが併記されています。
ちなみに「連量」の「連」は全紙1000枚を1連とする業者間取引単位で、1.5連と言えば、全紙1500枚です。


次にそうした紙を印刷に使用する際に気をつけなければいけないことをみてみましょう。

■印刷適性

シルクスクリーン(孔版)印刷では比較的紙を選ばず印刷することができますが、オフセット(平版)印刷では、紙を水で湿らせる必要があるため吸水性や表面強度が必要です。グラビア(凹版)印刷では平滑性が関係する他、共通しては、極端な凹凸や光沢性の高い紙ほど、印刷が難しくなります。
また巻取り式の印刷の場合、あまり厚手の紙は不向きです。
厚みに関しては、薄くなるほど、インクが裏面に溶け出す「裏抜け=ストライクスルー」や、透けて見える「裏写り、透き通し=ショースルー」の注意が必要です。

■価格について

一般的に特殊紙や厚い紙、塗工量の多い紙ほど高くなります。
また再生紙のほうが製造工程の多さからコストがかかることも事実のようです。
印刷時には、印刷会社が大量保有する紙以外に、特別に仕入れてもらった場合などは割高になります。

■保存性について

極端な湿度や乾燥を避けることで、和紙で1000年※2、洋紙で100年〜300年くらいももつそうです。和紙のほうが寿命が長い理由は、もともと材料の繊維質が長く、手漉きのため壊れないまま重なりあっていることから結合に強度があり、経年での劣化の原因となる酸性※3の不純物が十分に取り除かれていることなどです。
また、白い紙が黄色く変色するのは、繊維中のリグニンという物質が紫外線によって化学変化して起こるもので、純度の高い化学パルプにはほとんど含まれていません。そのため化学パルプの配合割合の低い下級紙ほど変色しやすいと言えます。
※2. 外国産原料や機械抄きで製造される「和紙」は、従来の耐久性が期待できないかもしれないという説もあるようです。
※3. 欧米で19世紀中頃に作られた古書が100年ももたないで瓦解し、日本でも1980年代に早期の劣化が疑われる「酸性紙」が問題となりました。現在では製造過程で用いられる硫酸バンド(=硫酸アルミニウム)が原因とわかり、中性か弱アルカリ性のものが代用されたり、pH調整された「中性紙」が開発され、書籍やノート類、コピー用紙などに広く用いられています。

■裏表と目

紙にはその印刷工程から裏表や目ができます。
一般的には漉く工程で、水分の抜け落ちる下側が裏になり、その逆がより平滑な表となります。ただし洋紙では両面加工を施すことで裏表の違いがないものがほとんどです。
パルプを一定方向に流がしながら製造するため、進行方向に平行して繊維がそろい「紙の目」ができます。目の方向は断裁方法によって縦目または横目になり、長辺に対し繊維質が平行するのが縦目(T目)で、長辺に直角方向になるのが横目(Y目)です。これらは製本や折加工の時に重要で、書籍では縦目が基本であり、折加工も繊維方向と平行して行います。


ところで、一般に呼びならわしている紙の名前にはどういう由来があるのでしょうか?和紙は「美濃」「越前」など産地の名前が多いようです。「コート」「上質」は分類名です。それ以外に「ケント」「ミューズ」等ありますが、これは商品名でしょうか?それとも一般名でしょうか?

■紙の名前について

厳密に言えば、製品につけられた正式な名前(=銘柄)は全て商標登録されており、同じ名前の違う紙はありません。ただ、デザイン制作の現場でも、小売店の売場でも、「ケント」「色上質」「アートポスト」というように一般名でメーカー数社の製品を同様に扱う場合と、「ユーライト」「ニューエイジ」というように銘柄名で扱う場合の両方があるようです。


では「再生紙」とは何でしょう? 問題になった「紙」における環境配慮はどうでしょうか?

■「紙」のサスティナビリティー(持続可能性)について

「再生紙」(=リサイクルペーパー)はバージンパルプに古紙パルプを混合し製品化したもので、その古紙が含まれる割合を「R70」(=70%)などのように表します。印刷用紙でも広範囲にわたり「エコ〜」「グリーン〜」「リサイクル〜」といった銘柄名で商品ラインナップも増えています。
これは、ひとえに自然環境へ配慮する消費者意識の高まりが無視できないものとなり、製紙業界をつき動かしてきたことのあらわれではないでしょうか? 偽装はそうした消費者の期待を裏切るものですが、これまで以上に誠実な努力を重ねることで、信頼を回復してもらいたいものです。環境への配慮としては、リサイクル以外にも計画的植林や間伐材の使用、木材以外の代替原料の開発など様々な取り組みがなされ、一定の成果をあげてもいるようです。
もともと「紙」は自然素材の循環型製品です。その量と化学物質さえコントロールできれば持続可能性が十分にあると言えるのではないでしょうか?


以上のように「紙」にはさまざまな特質・バリエーションがある事がおわかりいただけたかと思います。印刷物を製作する際は、その目的にかなった効果を考えてふさわしい特質のものを選択します。
以下、様々な印刷物において一般的に使用される紙の種類を列挙します。

●包装紙
(贈答用)
高級感・上質な感じ・品の良さ・新しさ・センスの良さ
特別感・めずらしさ・驚き・発見・和テイスト etc.
>>>「ファンシーペーパー」等
●書籍
(上製本=単行本)
保存性・上質な感じ・内容に則した個性的な感じ
>>>例えばカバーや扉・帯等では「ファンシーペーパー」
    表紙・口絵では「アート紙」「コート紙」、
    本文では「軽量コート紙」「非塗工(上質)紙」等
    というように数種類の紙を使用します
●書籍
(並製本=新書・文庫)
判読性・値ごろ感
>>>表紙「コート紙」
    本文「微塗工紙」「非塗工(中質)紙」等
●一般雑誌類
(週刊誌・マガジン)
安価・大量印刷への適性
>>>本文「非塗工(下級)紙」等
●カタログ・パンフレット
きれいさ・判読性・手頃さ〜高級感
>>>「アート紙」「コート紙」「非塗工(上質)紙」等
●リーフレット、チラシ
(ペラもの=フライヤー)
低コスト・値頃感・印刷のしやすさ 楽しさ・親しみやすさ・身近さ・手軽さ
>>>「軽量コート紙」「微塗工紙」等
●ハガキ、カード類 ある程度しっかりした感じ
>>>「アートポスト」「ファンシーペーパー」等
●名刺 保存性・視認性・個性的な感じ
>>>「ファンシーペーパー」等

いかがですか? こんなにいろいろある紙について、その風合いや色など味わってみませんか?

 

イズ・アソシエイツ
ディレクター 木虎 和生

 

 

 

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