Branding Method

景気後退時のブランド戦略 企業の未来を守る経営戦略とは

投稿日:2019年5月24日 更新日:

アベノミクスによる景気拡大が続いてきた日本経済ですが、再び暗雲が立ち込める事態が発生してきています。

景気悪化の公算大 専門家「間違いなく下方修正される」

景気動向指数の基調判断が、およそ6年ぶりに「悪化」となる公算が大きくなった。生産や出荷など判断のもとになるデータが26日発表され、中国経済の影響で落ち込んだ。「景気は緩やかに回復している」としてきた政府は公式見解を変えるのか、注目される。

朝日新聞デジタル 2019/4/26
https://www.ryutsuu.biz/accounts/l020715.html

実際、これを裏付けるデータとして、財務省発表の日本国債の金利情報をグラフ化すると、イールドカーブが右下がりとなってきており、景気は既に下降局面に突入してきていることが解ります。

日本国債金利 イールドカーブ
(2018年4月~2019年4月実績)

財務省ホームページ 国債金利情報

※グラフは上記ホームページより筆者にて作成

イールドカーブとは、債券の利回りと残存期間をグラフ化して、曲線で表したものです。金融機関での、長期金利と短期金利の関係を表したものと考えると、わかりやすいかもしれません。一般的には、長期金利は短期金利よりも金利が高くなる傾向があります。これが順イールドと呼ばれるもので、曲線は右上がりになります。これが逆転し、短期金利が長期金利より金利が高くなると、曲線は右下がりになります。実は、このイールドカーブは景気との関係を表す先行指数だといわれているのです。

イールドカーブは、右上がりになると景気上昇局面となり、右下がりになると、景気下降局面であるといわれています。実際に景気の先行指数として判断する場合、イールドカーブの結果がおよそ数か月後~半年後に表れてくると想定されます。現況についてグラフを見ると、2018年11月以降は逆イールドが発生して右下がり傾向になっており、その結果が2019年1-3月の景気後退に繋がってきていると推定できます。

このままで行くと、景気後退局面の中で消費税の増税をするという状況になるため、1997年の金融危機同様の事態が発生する恐れが出てきます。その場合、各企業はこれから正念場を迎える可能性があります。ここで問題解決の鍵を握るのが、企業の内部留保です。2017年度末の時点で、日本企業の内部留保が6年連続で過去最高を更新し、その金額は446兆円に達しています。

法人企業統計調査
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm
財務総合政策研究所 ホームページ

この内部留保は、企業が将来危機的状況に陥った際に必要な原資として確保しているものです。正にその時が訪れようとしているときに、安易に人員削減や事業閉鎖などのリストラに逃げることは、現代社会において強い非難を浴びることになります。なぜならば、好景気の時に将来に向けた投資を行わず、なおかつ経営危機に陥った際には人件費を削減してピンチを凌ごうとした場合、何のために膨大な内部留保を蓄えていたのか、意味がわからなくなるためです。

リストラは、一時的な投資家からの評価を得られるかもしれませんが、同時に将来の企業の成長を放棄することも意味します。また、リストラを行った企業は、従業員とその関係者や、取引先からの信頼を失う可能性が高くなります。なぜならば、リストラを行わなければならないほど経営状態が悪いということは、その会社の将来性や経営能力そのものに疑問を持たれることになるためです。これは、企業のブランド価値を大きく損ないかねない結果を生みます。リストラの当事者となった対象者・取引先はずっとそのことを覚えているでしょうし、景気が回復したときに、今までと同様の対応をしてもらえるということは、まず無いということになるでしょう。

そのため、企業の経営戦略としては、最後まで従業員の雇用と取引先を守る姿勢を見せ、そのために内部留保を投資する意思をきちんと表明することが、企業のブランド価値を高めることに繋がります。松下幸之助が伝説の名経営者として未だに名を馳せているのも、リーダーは最後まで従業員と取引先の面倒を見ることを約束したためであり、その信頼関係の結果が、世界に挑戦できる大企業へと雄飛できた要因の一つとなったと思われます。事業は継続することに意味がありますが、社会的に信頼や価値を失ったときは、否が応でも退出せざるを得ません。

逆境のときに身を挺して従業員や取引先を守ったという企業姿勢は、松下電器工業のように、必ず将来に渡り長く語り継がれ、企業のブランド価値を高める物語として、継続的な波及効果を生み出します。そして、厳しい局面に立たされたときこそ、お客様は経営者と企業姿勢を正視しています。苦しい場面でも最後まで企業と運命を共にして、支えてくれるのは、投資家ではなく、従業員や取引先です。是非とも、各企業での底力を発揮し、正しいかたちでの事業継続を図っていただきたいと思います。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

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