Case Study

毀損したブランドは、甦ることができるのか 大塚家具のお家騒動に見る、傾向と対策

投稿日:2019年6月12日 更新日:

日本中を巻き込んだ大塚家具のお家騒動は、大塚家具の経営不振により、新たな展開を迎えることとなりました。

大塚家具社長、実父と和解へ=経営権争奪から4年ぶり再会-新団体で協力

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019042601246&g=eco
経営再建中の大塚家具の大塚久美子社長は26日、実父の勝久氏と会い、同社長が主導して設立した新たな業界団体への協力を要請した。勝久氏は前向きな考えを表明。両者が会うのは経営権をめぐり争った2015年以来4年ぶりで、父娘の対立は和解に向けて大きく前進した。

時事通信 2019/4/27

大塚家具は、現経営陣になってから、3年連続の最終赤字を計上しており、運転資金が枯渇。打開策として複数の企業との業務提携を模索し、資金調達を図ったものの、市場の見る目は厳しく、苦しい経営が続いています。

お家騒動の果て中国資本の支配? 3年連続赤字、大塚家具は再建なるか

https://www.sankeibiz.jp/business/news/190416/bsd1904160500001-n1.htm
父で創業者である大塚勝久氏との委任状争奪戦の末に経営権を握ったものの、3年連続の最終赤字。そんな大塚家具の大塚久美子社長が「攻めに打って出る態勢が整った」と宣言してから1カ月余りがすぎた。だが、同社の株価はさらに下落するなど、投資家らの反応は厳しいままだ。同社は今後、中国開拓を本格化させる計画だが、「お家騒動の果てに、中国資本に支配されるのでは」-。そんな雑音をはね返して、久美子氏は経営再建できるのか。

Sankei.Biz 2019/4/20
産経新聞編集委員・福島徳氏 署名記事

複数の識者により、大塚家具のこれまで・これからの経営について分析が行われていますが、肯定的な意見はあまり多くないのが現状です。ブランディングという観点で考えると、どのような方法を用いることで、再建の可能性が見いだせるのでしょうか。

再建方法として考えられる一例に「サブ・ブランド化」というマーケティング戦略が考えられます。日本の携帯電話業界で説明すると、最新のiphoneを提供するなど、高機能サービスを提供するソフトバンクに対して、その廉価版のワイモバイルというサブ・ブランドが展開されています。

ここから、高級家具を扱う「匠大塚」と、サブ・ブランドとして廉価家具を扱う「大塚家具」という住み分けを行うことで、双方の事業に一定のシナジー効果が得られる可能性が出てきます。こうすることで、顧客に伝えるメッセージが分かりやすくなるためです。

もしも親子和解が実際に成立し、今後の協業が可能になるようであれば、旧経営陣の提供していた高級家具を求める顧客は、匠大塚へ。もう少しお値打ちの商品が欲しい場合は、大塚家具へと、顧客を誘導することができるようになります。そのような点においても、今回の和解の方向性は、双方の企業にとって今後の経営戦略に大きな影響を与えるのではないでしょうか。

否定的に論説されることの多い大塚家具の現経営陣ですが、旧経営陣が大塚家具の経営を行っていたときも、経営状態が衰退してきていたことも事実です。そのため、経営権を争った際にも現経営陣を支持する投資家が多く、経営権を獲得できたという背景もあります。こういったことからも、現経営陣の方向性の全てが誤っていたわけではありません。

ただ、「大塚家具」というブランドの取り扱いを、現経営陣が適正に行うことができなかったことが、今回の事態を招いた一因ではあると思われます。顧客に高級家具のブランドイメージを残したまま廉価販売を開始してしまったために、顧客が抱くブランドイメージが混乱し、既存の高級家具を求める顧客は離反し、新たなターゲットとした廉価家具を求める顧客の支持を得ることができなかったのではないかと推定されます。

大塚家具が成長していた時期である1990年代後半~2000年台前半は、日本全体の景気が悪く、テナント賃料が比較的安かったため、都市部への進出が容易であるという時代でした。もともと家具という商材は売れる頻度が低いので在庫回転率が悪く、店舗内でも大きなスペースが必要となるため、販売するには効率の悪い商材です。

そのため、固定費となるテナント賃料は、できる限り安く済ますことが必須条件でした。しかし、景気循環によりテナント賃料が上がり始めると、固定費負担が重くなり、経営にはダメージを与えるようになります。2013年からの第二次安倍政権発足後は土地価格が上がり始めため、当然、テナント賃料も上がり、大塚家具には費用負担が重たくなってきていたことでしょう。

高級家具を販売しているときは、都市部に店舗を構えることはブランドイメージ上、仕方のないことでありますが、その分、営業努力で購買単価を上げることで店舗が維持できます。しかし、廉価家具を販売する場合には、購買単価が低いなかで高額のテナント賃料を払い続けなくてはならず、都市部の店舗は足枷でしかありません。そういう点からも、ブランディングによる齟齬が経営に影響を与えたところは、大きいと思われます。

経営の方向性を変更する場合は、ビジネスモデルの変更が必要となる場合も往々にしてありますが、旧ビジネスモデルの成功結果である既存顧客の離反を招く、前任者の否定のようなマーケティング戦略は回避するべきです。このようなときは、サブ・ブランドによるブランディングを行い、企業の新しい可能性を探っていくことが、最も正解に近づく処方箋になることでしょう。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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