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小粒でも、ピリリと辛い、存在感。 山椒ブームは現代世相の反映か

投稿日:2019年8月6日 更新日:

明治時代の牛肉しかり、平成のパクチーしかり。個性のある味の定着には時間がかかる。なじみのある食材や調味料でも、シーンが変われば「新しい味」としてすそ野が広がる。

そんな「新しい味」として強力に存在感を増しているのが「山椒」だ。英語だと“Japanese Pepper”と言われるが、日本では実を使ったスパイスとしてだけでなく、葉もハーブとして使う一人二役タイプのスパイス&ハーブ。実はちりめん山椒などに、葉を乾燥させた粉末状の薬味はうなぎには欠かせないし、生の葉は若竹煮のあしらいにも欠かせない。

和山椒は数年前まで、上記のような“脇”としての使われ方が多かったが、近年になって気鋭の飲食店が続々と花山椒や実山椒を使った鍋を提供するようになって一気に火がついた。

(中略)

当然、本筋の「食事」適性が見過ごされるはずもない。日経POS情報の売れ筋商品ランキングでは総菜・弁当部門でシノブの「ちりめん山椒ご飯弁当」が上位20傑の常連に。「キッコーマン うちのごはん 混ぜごはんの素」シリーズに新たに投入された「雑穀ごはん 鰹と昆布の合わせだし」も隠し味に山椒を香らせた。ウェンディーズ・ファーストキッチンも「夏野菜と海老のしびれる花椒パスタ」を商品ラインナップに加え、和洋中を問わず山椒・花椒、花盛りといった趣だ。

BIGLOBEニュース 2019/7/14
NEWSポストセブン 松浦達也氏 署名記事
山椒ブームが拡大 スナック菓子や蒸留酒、カップ麺にも

山椒は古くからある食材で、日本ではハーブのような薬味だが、どちらかというと脇役的な存在で扱われることが多かった。しかし、その脇役が徐々に存在感を増し、現在では主役を張るようにもなってきている。

日本の芸能界でも、最近ではバイプレーヤーと呼ばれる名脇役が主役を務める作品が人気となり、ちょっとした脇役ブームでもあるといえる。そう考えると、山椒のブームは、現代社会の世相を反映したところがあるのかもしれない。

見捨てられた文化や枯れた技術が、ふとしたことで息を吹き返し、新鮮な印象を持たれてリバイバルブームが起きるのは、これまでにも何度も繰り返されてきたことである。

自社が現在保有する商品・技術・ブランドは、現在用いられているところ以外でも、新たな価値を提起する機会がないか、今一度検証してみることが大切である。また、何らかの事情で社内に埋もれている、有為な人材がいないか、再点検してみることにも価値がある。山椒のように、小粒だがピリリと辛い、特異な機能・才能を放つ存在が、社内にはまだまだ隠れているのかもしれないのである

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

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