Case Study

新潮流 ユーチューバーを起用した新市場開拓に向けたブランド戦略 ~ ユーチューバーとのコラボレーションの有用性と販促波及効果を考察 ~

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この数年ですっかり市民権を得たユーチューバー。このユーチューバーの活躍の背景に、2020年の感染症問題があります。緊急事態宣言によってステイホームが呼びかけられ、テレワークやリモートワークが推奨され、企業では既に定着しつつあります。このステイホーム期間をきっかけとして、ユーチューバーの活躍が更に注目され、その活躍領域や幅が広がりを見せたのではないかと推測ができます。

最近では、企業とのコラボレーション企画も多くなってきています。今回、視座を少し上げて、このユーチューバーの特質をパーソナルブランドと置き換え、企業の提供する商品やサービスとのコラボレーションによる有用性や販促の波及期待効果を考察してみました。

ユーチューバーと言えば、多くの方がHIKAKINのことをご存知かと。既にメジャーな存在になっており、幅広い世代からの人気を獲得しています。実際に、芸能人同様に「徹子の部屋」にも出演。また、女性人気ユーチューバーにはフワちゃんがいます。昨今、バラエティー番組では見ない日がないほどの活躍を見せており、もはや芸能人と遜色ない活躍をするユーチューバーです。

この流れを受けて、企業側も宣伝や販促としてユーチューバーとのコラボレーション企画を組む機会が増えてきています。その一例に、皆様も一度は食べたことがあるかと思われる米菓「ばかうけ」のコラボ記事を見つけました。(PRTIMES 2021年2月3日 12時00分 配信記事)

『ばかうけ』×『ヒカキン』のコラボ商品発売!「オリジナルヒカキングッズが当たる」キャンペーンも実施!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000063435.html

“ばかうけ”“星たべよ”“瀬戸しお”など米菓を製造販売する㈱栗山米菓(代表取締役社長:栗山敏昭 新潟市北区)は、「ばかうけ」と人気動画クリエイター「HIKAKIN」がコラボしたオリジナルパッケージの『18枚ばかうけ青のりしょうゆ味』『16枚ばかうけごま揚しょうゆ味』を期間限定で発売致します。(2021年1月下旬~3月下旬頃まで、全量、ヒカキンオリジナルデザインに変更。)


HIKAKINやフワちゃんは、幅広い世代に知名度の高いマルチなユーチューバーですが、彼らとは対照的に特定の分野や領域に強いユーチューバーも数多く存在します。彼らの専用登録チャンネルでは、かなり熱心なコアファンもおり、強い支持を獲得しています。その代表例の一つとして、ダイエット関連のユーチューブ番組があります。

先ほども述べましたが、感染症問題が発生しステイホームが呼びかけられ、室内に籠ることによる運動不足解消のストレッチやトレーニング動画が注目を浴びており、これに関し複数のアスリートや芸能人が動画を投稿していますが、ユーチューバーとして人気が一気に高まったのが「竹脇まりな」さんです。チャンネル登録者数は200万人を超え、ダイエット関連動画としては異例の大人気となっています。あえて、彼女のパーソナルブランドとしての代名詞を「身近で楽しくダイエット方法を教えてくれるユーチューバー」と仮置きしておきます。つまり、ダイエットで困ったら竹脇動画みたいなイメージで結構です。

Marina Takewaki
https://www.youtube.com/channel/UCw7HTQv0F4CB9zGRhqosYsg

ダイエットと言えば、一昔前にビリーズブートキャンプというダイエットプログラムが流行りましたが、この竹脇さんの動画はそれを彷彿とさせるものがあります。ビリーズブートキャンプと異なるのは、YouTubeという手軽なメディアを用いて気軽に始めることができるという点です。
竹脇さんの動画は種類も豊富で、時間は1分~120分と幅が広く、ストレッチや本格的な運動まで取り揃えており、更には定期的に内容も更新されるのでそのときの時間や気分に応じた内容を自由に選択できます。動画自体も健康的で明るい雰囲気があり、ノリのいい音楽に合わせて運動ができる上に、最も苦しい運動の場面では応援のコメントが入るなど、運動をせずに観ているだけでも楽しめるぐらい、動画全体が非常に工夫されています。結果としてコアなファンを沢山獲得しており、ダイエット関連動画では抜群の人気を誇るようになったというところです。

ここまでの人気となると、当然企業側もコラボレーション企画を持ち掛けてくることは想定がつきます。竹脇さんの場合は、やはり運動に関するコラボレーションが多く、一例としては明治の「VAAM」によるコラボレーション企画です。

VAAMはアスリート向けの本格的なスポーツ飲料として根強い人気があり、1995年から販売が続くロングセラーのヒット商品ですが、竹脇さんは通常の運動をしながら、合間の休憩にこのVAAMを美味しそうに飲んでいきます。
彼女の厳しいトレーニング動画では、定期的に30秒ほど休憩時間をとり、水分補給することが奨励されており、動画視聴者も彼女に合わせて自然とその休憩時間には飲料を飲む習慣が出来上がります。当然、その際に竹脇さんがVAAMを飲んでいれば、それを真似する視聴者も複数出てくることは推測でき、そこに企業の意図的な狙いがあるわけです。
特に竹脇さんの動画にたどり着いた視聴者は、運動に関する興味がある可能性が高いため、マーケティング上でVAAMのような本格的なスポーツ飲料の購入者との親和性があり、アスリートまでいかなくとも通常の運動量より多い人にはピンポイントで効果的な広告を打てることは推測できます。

では、この一連の流れをマーケティングで使われるSTPで整理するとどのようなセグメント市場になり、どのようなターゲット像に購入してもらいたいか、ブランドポジションを簡単な成長戦略図にしてみました。

VAAMは、元々がアスリートなどの競技者向けの本格的なスポーツ飲料というブランド・イメージが強く、競合商品であるアクエリアスなどの汎用的なスポーツ飲料よりも一般人には馴染みが薄いところがあります。そこで、アクエリアスと正面対決するのではなく、

あえて新しい消費価値の概念を浸透させる政策をとることをここでは選択します。
つまり、VAAMは単なるアスリート向けスポーツ飲料でなく、ダイエットに効果的な成分を含むスポーツ飲料である強みを活かし、ダイエットで困る方々にVAAMは効果があるというブランド・イメージが想起できる最大のチャンスと捉え、競合商品に対する差異化を狙いました。

まずは競技者以外の新規顧客への浸透・拡大を図りたいところですが、既存顧客ではなく新規顧客(新規市場)へどのように販促をかけていくのかが重要課題となります。そこで、ピンポイントに訴求できるユーチューバーとのコラボレーションです。ただし、ここではインフルエンサー的なマルチユーチューバーとコラボして、不特定多数への販促政策を取るのではなく、親和性の高い専門領域に特化したユーチューバーとのコラボを選択します。
その理由は、従来の販促と違いその商品に興味関心やニーズを持つ可能性が高い層に絞ったかたちでのマーケティング施策が打てるということです。そうすれば、自社が浸透拡大を目指す新市場に低予算で効果的な販促ができると考えられます。
今回の場合、竹脇さんの動画(=ダイエット動画)に興味や関心を持つ人は、当然運動に関心を持つ人が多く、何らかのお困り(ニーズ)はあるはずです。特にダイエットにはかなりの関心、お困りを持っているでしょう。つまり、彼女の動画の視聴者にとってVAAMに興味や関心が持て自分の困ったを解消してくれる商品となるには、VAAMの新しいブランドポジションである“単なるアスリート向けスポーツ飲料でなく、ダイエットに効果的な成分を含むスポーツ飲料”であることをしっかり認知してもらうことが必要です。それが、実際の動画のなかで流れてくるコマーシャルでなく竹脇さん自ら飲んでいれば、コアなファンは何も疑いなく試されることかと思われます。

更に、これを消費者購買行動のAISASを使い、どの様ような市場波及効果が期待できるか整理すると、このようなイメージになるかと思います。

1.情報を見て、商品を知る(Attention)
⇒竹脇さんの動画を観る

2.商品を知った消費者が興味・関心を持つ(Interest)
⇒竹脇さんが飲んでいる、VAAMに注目する

3.商品やブランドを検索する(Search)
⇒VAAMの成分や効果を調べて、ダイエットに効果的だと知る

4.行動・購買する(Action)
⇒VAAMを購入する

5.購買した後に共有する(Share)
⇒竹脇さんの動画を観て運動し、VAAMを飲んだことをSNSなどに投稿する
(努力している自分をみんなに知ってもらうなどのため)
そして、それを見た人が竹脇さんのダイエット動画へ流入するという好循環が生まれる

これまでの企業広告は、マス向けに大量のGRP投下の広告を出すか、もしくはコアなファンがいるであろうと推測されるところに、なんとなく広告を打つようなマーケティング施策しかなく、費用対効果が不透明になりがちでした。ところが、現在はコアなファンがついている専門性の高いユーチューバーに直接広告を打つことで、投資対効果の高いマーケティング施策を行うことが可能になってきています。それは、既に芸能人を超える影響力を持ち始めており、効果的な販促施策としてますます選択肢の広がりを見せていると言えそうです。

改めてブランド戦略という観点から整理すると、ブランド同士のコラボレーションは既にどのような商品でも見受けられるようになりました。今回、ユーチューバーをパーソナルブランドと置き換え、自社ブランドの新市場開拓戦略を目的にどのようなブランドコラボレーションが政策的にブランド世界観を落とさず、かつ経営的に低予算で効果を上げやすいかという観点で有用性を考察してみました。したがって、不特定多数の単なるインフルエンサーと提携すれば良いという意味ではないことを理解してください。

インフルエンサーによる瞬間風速を上げることを否定しませんが、企業にとって本当のファンを掴むためには、商品やサービスとの親和性が高いコラボほど、人の記憶(特に心への記憶)に残りやすく、良いブランド・イメージを想起させやすくなります。そのため、ジェネラルなユーチューバーより、ある特定の領域に特化したユーチューバーとコラボするほうが、より効果的なマーケティングになるのではないでしょうか。ぜひ、企業の新しい販促の取組として、ユーチューバーを起用したブランドプロモーションも思案してみて下さい。

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 エキスパート認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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