ブランディング応用

「わたし、定時で帰ります」を実現することによる、ブランディングの効果 令和時代の企業・個人のブランディング

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TBSテレビで放送されている、「わたし、定時で帰ります」が話題となっています。第1話以降も視聴率は好調をキープし、ネットでの支持も徐々に広まってきているようです。

TBSテレビ 「わたし、定時で帰ります」 ドラマ紹介サイト
https://www.tbs.co.jp/watatei/

主人公(吉高由里子さん)は、かつて就職状況が厳しい環境下で、やっとの思いで就職した大企業でのブラック過ぎる職場環境に疲弊した結果、勤務中に大けがをしてしまい、瀕死の重傷を負ったという辛すぎるトラウマを抱えています。それゆえ、社会復帰後は人生を謳歌するため、仕事を勤務時間内に処理し、定時で切り上げる主義を貫いています。

このドラマが支持される理由としては、主人公の「無駄なく効率よく頑張って、個々人が結果を出す」という姿勢が、視聴者の共感を得やすくなった社会背景が影響しているのではないかと思われます。実際に、売り手市場の中で就職した新入社員の間でも、定時で帰りたいという希望は過去最高の結果となっています。

2019年度新入社員、「定時に帰りたい」が4割で過去最高を更新 一方、「成長のためにたくさん働きたい」も1割超

人材育成のラーニングエージェンシーは4月23日、2019年度入社の新入社員を対象にキャリアに対する意識調査の結果を発表した。調査は今年4月に実施し、同社開催の新入生研修受講者5673人から回答を得た。
今後3年間の働き方を聞くと、「定時に帰りたい」(42.3%)が最多で、調査開始以降最多。「週に2~3回の残業まで」は40.3%で、「毎日残業でも構わない」(5%)、「仕事・成長のためにできるだけたくさん働きたい」(12.4%)という人もいる。

キャリコネニュース 2019/4/23
https://news.careerconnection.jp/?p=70733

かつて、このようなビジネスドラマは、主人公が果てしない過重労働をこなし、さまざまな逆境や苦難を乗り越え、最後に大逆転するというタイプのドラマが人気となることが多い傾向にありました。今回のTBSドラマで言えば、同時期に始まった「集団左遷!!」がそれにあたります。

TBSテレビ 「集団左遷!!」 ドラマ紹介サイト
https://www.tbs.co.jp/shudan-sasen/

このドラマの主人公(福山雅治さん)は、自ら困難な状況に飛び込み、火中の栗を拾うことを嘆願するという、「泥臭く頑張って、みんなで結果を出す」というところに力点を置いています。これは見事に昭和・平成の労働文化を反映しています。

「わたし、定時で帰ります」と「集団左遷!!」は、同時期に始まったドラマであり、どちらも物語は面白く、視聴率も好調なのですが、目指している方向性が明らかに違うのです。今後の令和時代の世相を反映したドラマとなる「わたし、定時で帰ります」と、昭和・平成時代を懐古するドラマの「集団左遷!!」の違いというところでしょうか。

近年、日本を代表する大企業においても、過労死やパワハラ、過重労働による労災など、凄惨な事件が相次いで発覚しています。現代はネット環境も整っており、こういった事態が発生すると、簡単にSNSなどで拡散されてしまいます。社会的価値観の変容により、前述のような事件が起きた場合、企業のブランドイメージは致命的な打撃を受けることになります。新卒・中途採用でも人材の獲得が困難となり、在職者も優秀な人材から去っていくことになるでしょう。また、BtoC企業であれば、消費者からの不買運動も起きかねませんし、BtoB企業であっても、反社会的企業として、投資家も投資を控えるようになるでしょう。どちらにせよ、上場企業であれば株価は暴落し、時価総額が下がり、今後のM&Aや資金調達にも支障が発生することとなります。

「わたし、定時で帰ります」の舞台となる会社は、新興IT関連企業です。会社の全体方針として残業を減らすよう取り組んでおり、主人公もそれに魅かれて入社を決めています。ITベンチャー企業は激務のイメージがありますが、「ホワイトベンチャー」に真剣に取り組む企業は、それ自体が自社のブランドイメージを高め、優秀な人材を獲得でき、なおかつ場合によっては自社の残業削減ノウハウをパッケージ化し、他社のソリューション解決ツールとして販売展開できる可能性まで出てきます。

実際に、世界中でITコンサルティングサービスを行うアクセンチュアでは、経営戦略として、自社の働き方改革をノウハウとして蓄積し、コンサルティングサービスに役立てると同時に、自社のブランドイメージを高めることにも成功しています。この戦略の結果、激務という印象のあるコンサルティング業界内でも、アクセンチュアは比較的離職率が低く、優秀な人材が長く働いてくれるようになり、また採用でも有利となるなど、企業側にも人材戦略でプラスになるという成果を生んでいるようです。

アクセンチュア独自の働き方改革
https://www.accenture.com/jp-ja/company-pride-project
アクセンチュア ホームページ

もちろん、努力は企業側だけでなく、労働者側も必要となります。無駄なく効率よく頑張って成果を出し、常に学習し自分の価値を高め続けることで、エンプロイアビリティ(雇用され続ける能力)を獲得し、あの人なら定時で帰っても当然だというパーソナル・ブランディングを自ら行っていかなくてはなりません。また、周囲もそれを当然とする労働文化を作っていかなくてはなりません。

そして、社員(正規・非正規)、管理職、経営者といった自社内の同僚だけでなく、取引先や委託先といった社外関係者に対しても、労働環境を悪化させないという意識をもつことで、企業としてのコーポレート・ブランディングも良好なものとなっていくでしょう。それは、今後の令和時代に相応しいブランドイメージを、自社が獲得できたことを意味することになるのです。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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