ブランディング応用

ブランド構築のための初めの一歩「SWOT分析」を疑似体験 ヤマトホールディングス(ヤマト運輸)を参考に作成

投稿日:2019年11月13日 更新日:

ブランディングのコンサルを行う際に、必ずその上位概念となるマーケティング戦略の骨格作りを行います。ブランド・マネージャー認定協会では、複雑な戦略形成もたった8つのステップでマーケティング戦略からブランド戦略まで再現性あるフレームワークを使いながら進めております。

その一番初めに行うステップで市場を把握する(市場を分析する)上で定石と言われるフレームに「3C分析」と「SWOT分析」があります。多くの方が一度は目にしたことのあるフレームかと思いますが、これらのフレームは世の中でも非常に幅広く用いられている経営分析の手法の一つです。一見、使い方が難しく感じられるかもしれませんが、実際に使い方に慣れてみると、非常に使い勝手のいいフレームワークの一つでもあります。

今回はその一つ「SWOT分析」を使って、実在する企業「ヤマトホールディングス」の企業戦略について解説していきます。限られた情報ではありますが、想定される事象を推測しながら行い、ヤマトはどこに市場機会があるのか仮説検証を行ってみたいと思います。疑似的とは言え、是非とも使い方を参考にしてみてください。

ヤマトホールディングスは、傘下に皆さんが良くご存知の知名度の高い宅配便で有名なヤマト運輸を保有する持株会社です。一般的に物流のイメージが強い会社ですが、実はシステム開発企業など物流以外にもいくつかの関連企業がグループ内に存在しています。

ヤマトホールディングス グループ企業
http://www.yamato-hd.co.jp/business/group.html

ここで、改めて簡単ではありますがSWOT分析とは何かをご説明致します。SWOT分析とは、会社を取り巻く環境について下記の4つの項目を基に関係する情報を拾い出し、整理して行きます。そのことで、頭の中でバラバラになっている情報が整理整頓され、新たなる考えを創造するのにとても効率的に進められます。

◆強み(Strength)
◆弱み(Weakness)
■機会(Opportunities)
■脅威(Threats)
*因みに、これらの英語の頭文字をとってSWOT分析と呼ばれています。

実際には、企業の外部環境(対象企業に対する社会的影響要因)・内部環境(対象企業に対する内部的影響要因)を踏まえて複数の項目を拾い出して行くのですが、今回は理解しやすくするために、あえて非常に簡素なかたちでSWOT分析を行って行きます。

まず、下記のようなかたちで図にまとめていくと、内容が把握しやすくなります。

では、各項目について解説していきます。

◆強み(Strength)

ヤマトホールディングスは、ヤマト運輸の全国物流網とそれに伴う荷物の代引き処理など、各種の決済手段を確保しています。実際に、これらを行うためのシステム開発会社もグループ内で保有しています。これは、企業としての「強み」の源泉となります。

次に、

◆弱み(Weakness)

ヤマトホールディングス傘下である、ヤマト運輸については本業である物流関連企業としてトップシェアを誇る企業ですが、本業以外の事業が育っていないところは、「弱み」でもあります。

■機会(Opportunities)

インターネットの普及と電子決済手段が進むにつれて、通信販売を行うEC企業が増加・伸長し、リアル店舗の売上を超える企業が増加しました。結果として、荷物の取扱量が急増し、ヤマトホールディングスの業務量は拡大し続けています。

■脅威(Threats)

昨今の人手不足による人件費が高騰し、これはヤマトホールディングス以外の各企業でも、経営を圧迫する要因となっています。特に物流業界においてはドライバー不足が深刻であり、なおかつ自動車関連の整備士も社会全般で減少の一途を辿り、不足気味となっています。

更に、それぞれの項目をそれぞれ組み合わせてゆくクロスSWOT分析を行うことで、企業として今後どのような戦略を検討していくか、どこにビジネスチャンスがあるかを模索する有効的な方法があります。

■クロスするやり方

① 強み(S)×機会(O)
② 強み(S)×脅威(T)
③ 弱み(W)×機会(O)
④ 弱み(W)×脅威(T)
これらの項目をもとに、下記のようにクロスSWOT表にまとめてみました。

では、各項目を確認して行き、どの様な市場機会が考えられるか仮説を立ててみましょう。

① 強み(S)×機会(O) ➡「積極攻勢」領域

全国的な物流網を保有するヤマト運輸では、増加する荷物の取扱量を効率的に処理するため、大規模で最新技術を用いた先進的な巨大物流センターを設立することにより、自社の強みを活かした戦略的投資が可能となります。最近ではDXへの意欲的な投資を行う企業も増えてきており、省人化を進めながら限られた人材をより生産性の高い業務へと配属しています。

② 強み(S)×脅威(T) ➡「差別化」領域

東証一部上場企業であり、事業の安定性が高いという利点を活かして、社員の採用と長期的な人材育成を強化することで、今後の人材不足を補うことが可能となります。そうすれば、派遣社員や人材紹介の会社も設立することで、他社への人材供給を行い新たなる収益を獲得することも想定できます。まさに人財は価値創造する原石として磨き上げる最大の投資標的かもしれませんね。

③ 弱み(W)×機会(O) ➡「弱点強化」領域

EC向けの荷物取扱量が増加することに合わせて、自社で保有している決済技術を応用して、EC用決済企業を新たに設立することにより、単なる集荷・配達を行う物流会社でなくEC企業の補完的業務を担える企業として事業領域の延伸を行うことで、競合と比べ営業活動が優位になります。

④ 弱み(W)×脅威(T) ➡「防衛・撤退」領域

今後の整備員不足を補うため、グループ内でその業務を担える人材を育成し、確保することを狙います。このことにより、今後のトラックなどの輸送車両を整備する人材を囲いこむことが可能になります。また、購買業務のアウトソーシングによる受託業務も請け負うことで、共同購買によりスケールメリットのある調達を行い、自社調達コスト削減と、他社への受託マージンを獲得することで、更なる収益の上積みが期待できます。

今回、非常に簡単にまとめましたが、このようにSWOT分析とクロスSWOT分析を用いることで、社外条件である外部環境と社内条件である内部環境を考慮し、自社に最適な戦略≒仮説の市場機会を検討することができるようになります。

ブランディング(ブランド戦略)を設計する際には、必ず初めに市場の把握(市場の分析)を行いますが、実際のコンサルの現場ではもっと深堀しながら進めており、マクロ分析、セミマクロ分析、ミクロ分析などクロスさせる内容がさらに増えてきます。それでもVUCA時代に於いては不透明なことばかりです。だからこそ丁寧に起きている事象を拾い上げ、そこから何が解釈(推測)でき、どの様な対策(仮説)が設定できるか考え進めるのが戦略構築の醍醐味です。是非とも、SWOT分析を上手に活用して、自社の環境とそれに伴う分析を進めていただければと思います。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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