ブランディング応用

科学的にブランディングを考察する ロジカルシンキングを用いたブランディング戦略

投稿日:

ブランドにはさまざまなものが存在していますが、簡単に整理すると、基本的には2つのものがあると考えられます。

それは、

  • ①これから新しく作り上げるブランド
  • ②既存のブランド

の2種類です。

これらを定義していくにあたり、ブランディング(ブランド戦略)を行う場合、複数の選択肢があるかと思いますが、選択肢が多すぎるがゆえに、どれが最も正しい選択肢なのか、悩みが尽きないところだと思います。

そこで、ロジカルシンキングを用いて、できるだけ科学的にブランディング(ブランド戦略)を設定してみようというのが、本稿の目的です。

まず、「科学的」の概念ですが、これは、論証可能であるということを意味しています。そして、論証可能であるかを説明するためには、下記の2つの手法を用いて行うことが一般的です。

それは、

  • A.演繹法
  • B.帰納法

の2種類です。

Aの演繹法ですが、これは世の中にある森羅万象を基に、さまざまな事象や複数の事実・事情などを踏まえ、最も正しいと推定される結論を導いていく方法です。

具体的な使用方法としては、下記のようなやり方です。

命題:新機軸の何か新しい化粧品が作れないか?

  1. 正規・非正規による多様化した雇用形態が進んでいる
  2. 現在は、スメハラや加齢臭などに敏感な社会である
  3. お洒落に気遣いをする男性が増えている

結論:防臭効果のある、男性向け商品を開発しよう!

これは、あくまでもわかりやすく単純化したものですが、実際には複数のデータやSWOT分析、ブレインストーミングなども用いて、状況を洗い出していくことが大切です。複数の事実に対して新しい定義を発案して、結論を作り上げていくというプロセスになるため、前述の「①これから新しく作り上げるブランド」のブランディング(ブランド戦略)について考察することに向いている思考方法です。

Bの帰納法ですが、これは、あらかじめ、ある程度の結論が決まっており、それを導き出すための論拠を模索し、仮設を検証していくという思考法です。そのため、前述の演繹法とは逆の発想になります。

具体的な使用方法としては、下記のようなやり方です。

命題:今回新たに化粧品を開発する理由を、具体的に提示してほしい

  1. 正規・非正規による多様化した雇用形態が存在している
  2. 現在は、スメハラや加齢臭などに敏感な社会となってきている
  3. お洒落に気遣いをする男性が増えてきているというデータがある

結論:既存ブランドの追加アイテムとして、防臭効果のある男性向け商品を開発するべきである

こちらも、演繹法同様に、あくまでもわかりやすく単純化したものですが、結論が正しいという論理的な補強を行うべく、複数の事実を検証していくというプロセスになるため、やや保守的な商品の開発に向いています。そのため、前述の「②既存のブランド」のブランディングについて考察することに向いている思考方法です。

帰納法が既存ブランドに向いている理由としては、既に一定の顧客を確保しており、多くの支持者がいるなかで、商品コンセプトを大きく変更した場合、既存顧客の大量離反が発生する可能性があるためです。そのため、既存ブランドで既に確定しているブランド・アイデンティティ(≒ブランド・コンセプト)から大きく外れないために、結論に対して事前に一定の制限を加えておく必要があります。帰納法はあらかじめ結論を決めておけるため、このような対処を行うことが容易となります。

しかし、このようなときに、もしも演繹法を使用していた場合には、結論が決まっていないため、想定していたブランド・アイデンティティから大きく外れた結論が出てしまい、既存ブランドとは相いれないブランド戦略が選択されてしまう恐れがあります。

逆に、新商品を開発したいときに帰納法を使用していた場合には、あらかじめ思考について制限が加えられてしまうため、画期的な商品開発や斬新なブランド戦略は発案されにくくなります。

このように、自社のブランディング(ブランド戦略)に対してどのような思考方法を用いれば、比較的対応がしやすいかを検討しておくことは、決してムダではないといえるのではないでしょうか。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

-ブランディング応用

関連記事

地方創生の切り札「地域ブランディング」の難しさ

昨今しきりに地方創生が叫ばれています。「地域ブランディング」(地域ブランドの構築・育成)はその切り札のようにも見なされています。有名な事例を1つ引くなら、「くまモン」の大ブレイクは多くの方がご存知と思 …

バルミューダのトースター

「モノ」を売らずに「体験」を提供することで情緒的価値を生み出す 〜「ドヤ家電」バルミューダのトースター〜

(出典:https://www.balmuda.com/jp/about/) ドヤ家電という言葉をご存知でしょうか。ドヤ家電とは、ついつい人に自慢したくなるような家電製品のこと。日経MJが発表した20 …

毀損したブランドは、甦ることができるのか 大塚家具のお家騒動に見る、傾向と対策

日本中を巻き込んだ大塚家具のお家騒動は、大塚家具の経営不振により、新たな展開を迎えることとなりました。 大塚家具社長、実父と和解へ=経営権争奪から4年ぶり再会-新団体で協力 https://www.j …

ブランド野菜の地域ブランディング~嬬恋村のブランドキャベツ~

キャベツで有名な嬬恋村で、今年も話題のレースが開催されます。 今年も“キャベツ感”がスゴい!毎年話題の参加賞、遂に公開! 「嬬恋キャベツヒルクライム2019」参加者募集中 8月2日まで サンケイスポー …

夏は、カルピス。そのブランドの役割と変遷。 ロングセラー商品の機能進化

夏の定番商品といえば、カルピスだったという時代があります。おそらく、現在30代以降の年齢の方であれば、そのような時代を過ごした人も多いのではないでしょうか。 夏の暑い昼下がりに、原液を薄めたカルピスに …

ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
2月 9, 2018 に投稿された
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
2月 15, 2016 に投稿された
「オンデーズ」はメガネ業界のZARAとなるか? 〜JINSとは一線を画すファッション路線〜
「オンデーズ」はメガネ業界のZARAとなるか? 〜JINSとは一線を画すファッション路線〜
5月 23, 2018 に投稿された
ブランディングとは? 「基本的な意味と進め方」について解説!
ブランディングとは? 「基本的な意味と進め方」について解説!
5月 16, 2018 に投稿された
CI、VI、BIの違いとは?
CI、VI、BIの違いとは?
4月 25, 2018 に投稿された
サービスの質も向上! 従業員が自ら動くようになる「インターナルブランディング」とは?
「ブランドM&Aはなぜ起るのか」など、記事一覧はこちら
中央大学ビジネススクール教授 田中洋
【特別寄稿】ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?
ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?

株式会社JOYWOW代表取締役会長
阪本啓一

【特別寄稿】企業に求められる「情緒的価値」とは?
今企業に求められる「情緒的価値」とは?
株式会社イズアソシエイツ代表 岩本俊幸