Case Study

RIZAPのブランド価値向上経営への挑戦 のれん代とブランド価値

投稿日:2019年7月19日 更新日:

前期まで急成長を続けてきたRIZAPが、2019年度決算を発表しました。

ライザップ決算、193億円の赤字。膨れ上がったグループ企業の”ダイエット”は最小限にとどまる

個別指導のトレーニングジムなどを展開するRIZAP(ライザップ)グループは2019年5月15日、2019年3月期決算(国際会計基準)を発表した。純損益は193億円の赤字となった。

2018年11月の時点で大幅に下方修正した通期業績予想では、70億円の赤字を見込んでいたが、さらに赤字幅が拡大した。買収した企業の既存店舗の閉店などの費用がかさんだという。

一方で、「緊急性の高い構造改革」については、2019年3月末までに一定のめどがついたとして、2020年3月期は営業利益の黒字化を見込んでいる。ライザップグループにとってこの1年は、「改革」の真価が問われることになる。

瀬戸健社長は決算説明会の席で、「痛みの伴うことは、できるだけ短期間で終わらせたいという思いで、損失を確定させた。今期は、黒字化を100%達成したい」と述べた。

BUSINESS INSIDER JAPAN 2019/5/16
小島寛明氏 署名記事

RIZAPは、インパクトのあるCMを大量投下し、GRP(※)を増加させることで企業認知を高めて上場を行い、時価総額を上げ、経営不振企業の買収を実施し、企業規模を拡大させていくという、マーケティング戦略とファイナンス戦略を一体化させた企業運営を行うことで、急成長を遂げてきました。

その際に、会計手法として用いられたのが、「負ののれん」です。負ののれんについては、会計関連のホームページで詳細な説明がなされておりますが、簡単に言うと、買収先企業の純資産よりも低い金額で買収を行うことで、その差分を利益として処理するという会計手法です。

「負ののれん」とは?発生する理由と会計上の処理を解説https://kigyolog.com/article.php?id=77

企業LOG  2018/11/16
宮嵜涼志氏 署名記事

RIZAPは、業績不振に苦しむ企業の再建を行うことで自身と買収先の企業価値を高め、業績への貢献を高めていき、更なる買収を繰り返すという経営戦略を展開してきました。ある意味、投資ファンドのような経営手法でもあります。

経営再建を行う際に必要となるのは、特に投資金額と業務執行の人材ですが、それ以外では買収・被買収企業の、企業としての信頼性と知名度と、顧客からの支持です。つまり、再建を行うにはブランド価値が大きくものを言うことになります。

その点で、RIZAPは急成長中の、市場からの期待値が高い企業であり、買収された企業も、現在は業績不振で苦しんでいるとはいえ、一定の知名度や社会的実績がある企業です。老舗でありながら経営不振である企業は時に強いブランドを保有していることもあります。そのような老舗企業と、急成長している新興企業とは、相互補完性があり理想的な組み合わせでもあります。

しかしながら、本体であるRIZAPの経営が一旦つまずくと、先行きが不安なもの同士の組み合わせとなり、市場からの評価は得られなくなります。結果として、相互の企業のブランド価値が崩落し、より一層の苦境に立たされることとなります。

幸いなことに、RIZAPは本業の事業については好調を維持し、売上高もまだ伸びています。複数の企業とのコラボレーション企画も進行中です。

RIZAP コラボ商品続々登場!!

http://www.family.co.jp/campaign/spot/rizap.html

ファミリーマート ホームページ

吉野家とライザップがコラボ

https://www.sankei.com/economy/news/190508/ecn1905080023-n1.html

産経新聞 2019/5/8

空腹時に飲んでふくらむダイエットサポート飲料に“新提案”!
大正製薬×RIZAP コラボ製品 「コバラサポートR」新発売

https://www.taisho.co.jp/company/release/2019/2019031501.html

大正製薬 ホームページ

また、M&A戦略の失敗が喧伝されてしまっているRIZAPですが、ジーンズメイトやワンダーコーポレーションなど、RIZAPの傘下入り後に黒字化している企業が出てきているのも事実です。それに、RIZAPの決断により、救われた買収先企業や従業員も沢山存在しています。そもそも、単独で経営困難な企業を引き受けてM&Aを行っているのですから、簡単に良い結果が出るわけではありません。

新興企業としての挫折や失敗を経験した企業は、それを糧にして、新たな再成長を遂げることも多くあります。現在は大企業となった、ソフトバンクやアップルも、数々の挫折や失敗を経験して、あれだけの大企業へと成長しました。RIZAPも、本業での収益化を更に進めていくと同時に、新たな再建型事業モデルを確立して、企業並びに事業ごとのブランド価値を再び向上させていっていただきたいと思います。

※GRP…延べ視聴率のこと。スポンサーにとっては、どれだけ多くの視聴者がCMを目にしたか(到達率)と、どれだけ多くの回数CMを目にしたか(平均接触回数)が重要になってくる。このため、GRP=到達率(Reach)×平均接触回数(Frequency)とも表される。広告業界でよく使われる用語である。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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