ブランディング応用

ローカル飲食チェーンにおける、地域ダントツのブランド戦略 地場に生き、地場で活きるために

投稿日:2019年8月14日 更新日:

街歩きや地域のローカル文化を紹介するテレビ番組が、現在は非常に多くなりました。その中でも、長い間人気を継続して放送されて続けている番組が、「出没、アド街ック天国」と「秘密のケンミンSHOW」でしょう。

「出没、アド街ック天国」は1995年から放送開始であり、24年間に渡り放送されており、「秘密のケンミンSHOW」も、2007年からの放送で、12年間放送されています。

両番組の影響力は非常に高く、放送された後には、取り上げられた飲食店は満員が続き、商品は注文が殺到して品切れが続くという、一時的なブームを生み出します。

しかし、ブームというのは必ず去るものであり、その後に継続させるということが何よりも重要です。そのためには、地場で生きるローカルチェーンは、リピーターを獲得する継続的かつ地道な努力を続けなくてはなりません。

「出没、アド街ック天国」と「秘密のケンミンSHOW」の両方で放送された、人気のローカル飲食チェーンがあります。茨城県にある、イタリアン料理のグルービーという会社です。

グルービー ホームページ

https://www.pasta-groovy.co.jp/

グルービーは1999年創業の、パスタとサラダが人気のお店で、茨城県内で10店舗を経営しています。番組でも取り上げられた「海賊パスタ」が大人気で、このパスタはイカやエビ、カニなどの豊富な海鮮の具材から、旨味がホワイトソースとトマトソースに溶け込み、濃厚な味わいを醸し出します。付け合わせのサラダは、野菜から抽出した旨味を基に作ったオリジナル野菜ドレッシングを、野菜のサラダにかけて食べるという、オリジナル性がありつつ、実にヘルシーな一品です。

また、グルービーは提供する料理のメニューが大変多く、パスタだけで100種類以上あります。その他にもピラフやピザ、グラタンなどが揃っており、味も和風から洋風まで取り揃えることで、顧客が選択する楽しみを増やすと同時に子供からお年寄りまで来訪して楽しむことができるメニュー構成になっています。実際に、店内はファミリーでの来訪客が多数となっていることが窺われます。

取り扱いメニュー数が多いため、注文はタブレットを用いることで、人手不足になりがちな従業員の接客時間を短くし、なおかつ注文誤りを防ぐことが可能になっています。また、メニューの改廃も行いやすく、店舗オペレーションの簡略化につながります。

値段については、昨今の競合するファミリーレストランよりも、高めの設定となっています。価格帯としては、1000円を超えるものが多く、ケーキやスープ・ドリンクなどのセットにすると2000円を超えることもあります。ただ、全体的に量が多く、なおかつ使用している具材の質がいいので、値段に合わせた満足感は残ります。そのため、コストパフォーマンスが競合他社より劣っているという印象は持たれません。

これは、地方のローカルチェーン店として、顧客数が少ないことに対する、1人当たりの客単価を考慮した結果の設定なのでしょう。また、購買単価も増やすため、店舗で使用するオリジナル野菜ドレッシングは購入可能になっており、それ以外のテイクアウト商品も多く、ケーキ類はちょっとしたケーキ屋と同じようなものを扱っています。

外食産業、特にファミリーレストランは客数減少対策として、客単価の向上に取り組む傾向が高まっていますが、グルービーはそれを率先して行っている印象があります。

外食市場/2018年「居酒屋」10年連続売上減少「ファミレス」客単価上昇

https://www.ryutsuu.biz/strategy/l012924.html

流通ニュース 2019/01/29

このように、グルービーは外食企業としての店舗オペレーションも確立されており、手堅いマーケティング戦略により、競合する大手外食企業とも遜色ない運営が行われています。その点を鑑みると、恐らく茨城県でなくても、成功していた企業なのかもしれません。しかしながら、一時的に千葉県に出店していた時期があったものの、既に撤退し、現在は茨城県内での展開に専念しているようです。

そもそも、「出没、アド街ック天国」と「秘密のケンミンSHOW」の両方の番組で放送されること自体、人気店であり、名誉あることだといえます。その反面、茨城県のお店だからこそ、取り上げられる機会があったのかもしれません。これは、前述のように街歩きや地域のローカル文化を紹介するテレビ番組が多くなったこととも関連します。

つまり、その地域で強い店舗であるという印象を持たれることで、その地域内では絶対的なブランド価値を持つ企業として、顧客支持を集め続けることが可能になるということです。逆説的に考えると、ローカル色が払拭されてしまうと、その企業の魅力が抑えられてしまう可能性も同時に浮上してきます。これは、諸刃の剣のジレンマでもあります。

グルービーが、今後、他地域に戦略的に出店するかは、まだわかりません。しかし、その場合、自社のブランド価値を最大限活かしたかたちでの出店を行うことができるかが、他地域での成功のカギになる可能性が高いと思われます。

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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