ブランディング応用

自社の採用ブランドの問題点を特定する

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採用ブランディングについて その3

現在の採用ブランドの問題点を知る

採用市場における自社のポジショニングと、採用競合企業が明確になれば、次に取り組むべきなのは、現在の「採用ブランド」の問題点を知ることです。企業もまた人間と同じように社会の中で存在していますから、企業の中には社員がいて、社員の中にはすでに退職した人もいて、社外には取引先もいます。多くの人々と関係を持ちながら、成り立っているのです。テレビや地元紙などのメディア報道、ホームページなどに掲載されている企業理念や沿革、経営者の発言、社員やお客様の口コミなど幅広いものを通じて、人々の頭の中には、その会社に対するイメージが形成されているでしょう。良いイメージばかりであればいいですが、残念ながらどのような企業でも多かれ少なかれ悪いイメージはあります。それでは、採用市場での自社に対する現在のイメージを知るにはどうすれば良いでしょうか?

まず考えられるのが、 「転職会議」「Vokers」 といった「転職口コミサイト」で自社についての口コミをチェックことです。ただし、こうした口コミサイトに投稿するのは会社とのミスマッチによって退職した社員が多いためか、どちらかといえばネガティブな評判が集まりやすい傾向にあります。自社に対するネガティブな口コミを隅々までチェックしたり、社内で共有して議論の材料にしたりすることに抵抗を感じる方も多いかもしれません。しかし採用ブランディングを強化・改善する上で、「現状の何がマズいのか?」を知ることは非常に重要です。こうした口コミの多くは、企業が成長する過程で経験した「組織の拡大に制度が追いつかず、手薄だった点」あるいは「良かれと思って実施した施策だったが、一部の社員には不評だった点」などについて触れています。今後より良い策を講ずるにあたって、これらのフィードバックは、直視すべき重要な指摘なのです。

自社の改善すべき点を特定し、改善し、発信する

つらい作業を終え、社員たちが「改善してほしいと願う点」に関する情報が集まりました。ここで注意していただきたいのが 「改善してほしいと言われた点」と「本当に改善すべき点」は必ずしも一致しない ということです。ここでもう一度、自社の事業戦略やビジネスモデルについて、将来の戦略や実現のための手段も含めて考えてみてください。

その先には、一部から反発を受けたとしても 守り抜くべきルールや評価基準、企業文化 といったものが含まれるのではないでしょうか?もちろん「ぜひ採用したい!」「ぜひ引き続き我が社で働いてほしい!」と思った人材に断られることは悲しいことです。しかし、その都度相手の言うことを鵜呑みにし、自社にとって欠かすことのできない重要な要素をおろそかにしてしまったのでは、「事業成長」という採用の本来の目的を達成したといえません。例えば、地方都市に本社を置き、地域の強みに根差して成長してきた企業があったとします。このようなバックグラウンドを持つ企業が、優秀な候補者から「自分は東京支社で働きたい。地方では働きたくない」と言われたとして、その要望を受け入れるべきでしょうか?

大切なのは、その人材の採用が自社の全体的なパフォーマンスを向上させることにつながるかどうかです。こうした判断は経営者・事業責任者にとっても重要な経営判断でもあり、人事、採用担当だけの問題ではありません。社内からは「いくら優秀でも本社で働きたくないという人を許容すれば、徐々に顔を合わすことのない社員が増えてしまう。それは結果的に組織の力を弱めてしまうのでは」という反発もあるかもしれません。また一方では「テクノロジーも発達しているのだから、東京と本社でビデオ会議などを活用して連携すれば問題ないのではないか?」という意見もあるでしょう。

こうした、組織の方向性を左右する選択肢は、メリットもリスクも考慮しながら十分に話し合い、決定すべきことです。その他にも、特に組織内の会議体やイベント、勤務体系、就業規則などの変更も、これまでの成長を下支えしてきた企業文化に深く根ざしたものであることが多く、注意が必要です。現場からは「このやり方だから事業が伸びてきた」「やり方を変えたら成長スピードが落ちる」という反発もあるでしょう。一方で、過去に企業が守ってきたビジネスの進め方の中には、会社が成長を遂げるにつれ、最適解が変わっていく部分もあるのです。わかりやすい例は女性社員に育児と仕事を両立しながら活躍してもらうために、早朝や夜間に行われていた朝礼や、会議、部下のトレーニングなどのルールを変更する場合などです。これまで組織の団結を強め、成果を出すために当たり前のこととして受け入れられてきたプロセスを変更することは、不安を伴うものです。しかし仮に、「今後の成長のためには、女性も活躍できる職場であることが欠かせない」という経営者や周囲の強い意志があるのであれば、結論は自明ではないでしょうか。

将来の成長を見据えた際、変えるべき点、そして変えずに守るべき点は何なのか を見つめ直しましょう。特に歴史ある企業の場合、こうした議論が経営陣を交えてなされることが、より本質的な採用ブランディングの変革には必要です。仮に採用企業としてのメッセージを研ぎ澄まし、戦略的に発信したとしても、 そもそもの組織のあり方や仕事の進め方が、優秀な人材がいる採用市場とズレていたのではブランディングの効果も限られるのです。

 

松下 弘司(まつした こうじ)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 認定トレーナー
オラクルクローラー代表
戦略コンサルティングファームでプロジェクト・リーダーとして幅広い分野のBPRプロジェクトを経験。その後、コンサルティング会社オラクルクローラーズを立ち上げ、現在は、企業家として新規事業開発をするほか、企業の経営顧問として経営戦略・ブランディング(ブランド経営)の支援を行う。

https://brand-manager.jp/

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