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「6ポケット」と「ラン活」で活性化するランドセル市場

投稿日:2018年2月21日 更新日:

ランドセルをもつ孫と祖父母
ランドセル市場が活況を呈しています。その理由を考えていくと、成熟化にむかう日本の中小製造業においても、大いにビジネスチャンスがあることがわかります。

少子化のなかで成長するランドセル市場

少子高齢化社会に伴い、小学校に入学する児童は減っています。小学校1年生の人口は、2006年の118.2万人から2014年には109.1万人に減少しています。

日本人のほとんどの方が人生にほぼ1回きり1個しか買わないもの。それがランドセルです。ランドセルの年間販売数が小学1年生の人口と近いと考えると、どんなにランドセル業界がプロモーションしても、小学生1年生の人口を大きく上回る200万、300万個と売れることはないでしょう.

ではその市場は縮小傾向なのかというと、実は拡大しているのです。理由は単純で、1個あたりの単価が上昇しているからです。ランドセル工業会によると、ランドセルの平均価格は2006年の2万9900円から2014年には4万2400円と上昇、人口と単純に掛け算すると、2006年の353億円市場から、2014年には462億円市場に成長したことになります。

祖父母が買い手となる「6ポケット」現象

なぜランドセル市場が活況なのか理由を考えてみましょう。

最大の理由は、「6ポケット」(シックスポケット)現象によります。6ポケットとは、両親2人とその両親(祖父母)4人の計6人が財布(ポケット)からお金を投じて、子供や孫に高額な商品を買い与える現象をさします。いうまでもなく少子高齢化社会による現象で、とくに祖父母が、たった1人(あるいは少数)の孫のために、お気に入りのものを買ってあげて喜ばせたいという心理をついて、様々な子供向け高額商品が世に出されています。その代表格がランドセルというわけです。

現在のランドセルは明治20年、伊藤博文がのちの大正天皇の入学祝に献上したものが原型といわれています。ランドセルは、入学祝いにぴったりで、もともと年長者からの贈り物に最適だったのでしょう。現在でもランドセルを購入した人のうち約71%が祖父母(母方の親39%、父方の親32%)となっています(セイバン調べ)。

「工房系ランドセル」が大人気

萬勇鞄のランドセル

萬勇鞄のランドセル

 

2つめの理由は、日本の老舗メーカーによる手作りの高級ランドセルが人気であることでしょう。いわゆる「工房系ランドセル」は、革や糸の色、パーツの形を吟味し、丁寧に手作りしたものや、革の裁断面にニスを塗り、丁寧に仕上げたものや、背負いやすさを追求した形状のものまで様々です。

これらの日本のクラフトマンシップに溢れるランドセルは口コミで大人気になり、メーカーの受注サイトのサーバがダウンしたり、店舗やショールームが長蛇の列をなしたりしています。工房系ランドセルの多くは職人による少量生産で、受注生産も多いことから、熾烈な購入合戦となっています。

メーカーは過熱する消費者のマインドに対応するために、検討時期を早く、長くしています。そのため入学の前年の5月には受注が始まります。なお前述のとおり職人による少量生産なので、注文しても入学直前の3月に届くということもざらです。5月に購入を決めて、3月まで辛抱強く待つのが、今の工房系ランドセル購買のプロセスなのです。

成熟化社会で成長する3つのキーワード

このような様々なランドセルが登場し、お気に入りのランドセルを探して店をめぐることを、婚活などの言葉にかけて「ラン活」といわれています。ランドセル市場が活況な3つめの理由は、まさにこの「ラン活」といわれる、ランドセル購買プロセスのイベント化ではないでしょうか。

まず一番の買い手である祖父母にとって、お盆に孫が帰ってきた折に、孫と一緒にショップを回って、ランドセルを買ってあげる。孫も喜び、喜ぶ顔をみたい祖父母も喜ぶという体験。ランドセル商戦のピークが7~8月(45%、セイバン調べ)であるというのも、その点と関係があると思われます。

父母にとっても同様です。ネット検索やSNSで評判のメーカーを探したり、ショールームに子供と並んで、一緒に選んだりする行為自体が楽しいのではないでしょうか。
6ポケット、工房系ランドセル、ラン活。3つの要因が浮かび上がってきます。少子高齢化、成熟化する社会においても、高齢者の購買意欲をあおり、クラフトマンシップを前面に出し、購買プロセスをイベント化することで、成長市場になりうるのです。これはどんな成熟産業、中小企業にも当てはまるのではないでしょうか。

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