ブランディング基礎

ビジネスモデルは俺流ではない!? 流行に終わらなかった「俺のイタリアン」が守る「鉄の法則」

投稿日:2018年4月6日 更新日:

イタリアン

ミシュラン星付き店顔負けの食材と料理人を駆使したイタリア料理が、3000円でおつりがくるくらいの値段で食べられる「俺のイタリアン」。不況真っ只中の2011年9月21日、新橋に1号店をオープンすると大きな話題となり、2時間待ちの行列ができるほどのブームとなりました。ブームが去った後も業績を伸ばし、現在「俺のイタリアン/俺のフレンチ」は19店舗まで拡大しています。あらためて成功の理由を考えてみましょう。

両極を組み合わせた「俺のイタリアン」

成功の理由の1つは、「両極の組み合わせ」です。
新業態の考案にあたって坂本孝社長と幹部がひらめいたのは、不況時にも繁盛していた「立ち飲み居酒屋」と、「ミシュラン星付きレストランで修行した凄腕シェフを迎えた店」の両方をくっつけた業態でした。単価3000円で高級レストランが提供するような料理が食べられることを可能にしたのは「立ち飲みスタイル」にあります。

テーブル席を設けず、ほぼ立食のスタイルにしたことから、客回転率が高まり、高いフード原価率でも利益が出せるビジネスモデルを確立しました。「立ち飲み高級イタリアン」は消費者へのインパクトの面からも、オペレーション効率の面からも、成功のカギとなりました。

両極端の共存という意味では、ネーミングもそうです。おしゃれなイメージがあり、実際横文字の多いイタリアン/フレンチ料理業界の中で、日本語であり、無骨な印象を与える「俺の」という言葉を加えたネーミングは、他のレストランからも差別化でき、敷居も低くなりました。

ミシュラン店とサイゼリヤの中間にポジショニング

ポジショニング
斬新なインパクトを与えた「俺のイタリアン」。しかし調べていくと、オペレーション効率の面からは、「中庸」のポジショニングを取っていることが分かります。

確かにミシュラン星付きレストランに比べれば、一人当たりの予算約3000円というのは激安価格です。しかし上には上がいます。イタリアン・ファミレスチェーンの「サイゼリヤ」はその代表です。サイゼリヤはパスタは300~400円台、グラスワインは100円です。おそらく客単価は「俺のイタリアン」の約半分ほど。

回転率と客単価を両軸としたマトリクスに、ミシュラン店、俺のイタリアン、サイゼリヤのポジショニングをマッピングしてみました。ミシュラン店は客回転率が1を割ることもありますが、客単価は3万円を超える店も多いです。

一方ファミレスのサイゼリヤはその反対で、一日の客回転率は非常に高い一方、価格は非常に安い。「俺のイタリアン」はその真ん中ほどのポジショニングだと言えます。

実は飲食ビジネスの鉄則に従っている

一般的に考えると、一定の収益を挙げる店は、客単価と客回転率はトレードオフになります。客単価が高ければ客回転率は低く、客単価が低ければ客回転率は高い。そして「俺のイタリアン」のように、客単価が中程度ならば客回転率も中程度でなければ儲かりません。そう考えると、「俺のイタリアン」がブームで終わらなかった理由は、飲食ビジネスの鉄則に徹したことです。

同様に立ち飲みスタイルをステーキ店に持ち込んだ「いきなり!ステーキ」も、リブロースステーキ 300グラム 2070円と、ファミリーレストランに比べて決して安くはありません。一見派手なビジネスモデルでも、しっかり利益が挙げられる「仕組み」が確立されているのです。

-ブランディング基礎

関連記事

東京ドーム

プロ野球を彩るキャラクターたち~マーケティングの見地から~

「ジャビット」「つば九郎」「ドアラ」を知っていますか、そうです、プロ野球のマスコットキャラクターです。では「謎の魚」「バファローズポンタ」「DBスターマン」は?ここまで知っていればかなりのプロ野球通。 …

ペヤングチョコやきそば

誰が食べるのか!?チョコ味のやきそばのブランディングを考える

(出典:https://www.myojofoods.co.jp/ippei/) ここ数年、カップ麺市場では多くのメーカーがユニークな新商品を発売しているのが目立ちますね。今回はこれらのユニークな新商 …

カルピスのラインナップ

なぜカルピスは100年愛されてきたのか?〜その背景に迫る〜

(出典:http://calpis.jp/lineup.html) 「カラダにピース」でおなじみのカルピス。でも一時期ブランド力が低迷していた時期があるんです。ブランド復活の原動力は技術力、そして創業 …

ユニクロ

ユニクロのポジショニング戦略とは? カギは「割り切り消費」

カジュアル衣料のユニクロは老若男女を問わずベーシックな商品を提供していますが、決してターゲティング(顧客の絞り込み)を軽視しているわけではなく、カジュアルファッションでは目立ちたくないという層や、洋服 …

セグメンテーションとターゲティング

ブランド構築における「セグメンテーション」と「ターゲティング」の考え方!

ブランディングや新商品の企画において、それを誰に買ってもらいたいか、当然のようにターゲットの設定をすることがあると思います。その際、ターゲットは広すぎても、最初から絞りすぎても正解ではありません。 そ …

【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
2月 15, 2016 に投稿された
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
2月 9, 2018 に投稿された
クラフトボスの「クラフト感」って? ブームだけじゃないヒットの理由
クラフトボスの「クラフト感」って? ブームだけじゃないヒットの理由
3月 30, 2018 に投稿された
マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?
マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?
12月 28, 2015 に投稿された
はじめてでもわかる!ブランド・アイデンティティとは
はじめてでもわかる!ブランド・アイデンティティとは
3月 30, 2016 に投稿された
サービスの質も向上! 従業員が自ら動くようになる「インターナルブランディング」とは?
「ブランドM&Aはなぜ起るのか」など、記事一覧はこちら
中央大学ビジネススクール教授 田中洋
【特別寄稿】ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?
ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?

株式会社JOYWOW代表取締役会長
阪本啓一

【特別寄稿】企業に求められる「情緒的価値」とは?
今企業に求められる「情緒的価値」とは?
株式会社イズアソシエイツ代表 岩本俊幸