セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Case Study

無印良品の「これでいい」ブランドコンセプト

投稿日:2018年4月18日 更新日:

無印良品
無印良品は1980年にスーパーマーケット西友のプライベート・ブランドとして出発、1989年に「株式会社良品計画」のブランドとなり、翌1990年に本格的に小売業として展開を始め、現在は全世界で900店舗を数え、成長を続けています。多くの消費者に受け入れられている理由を考えてみましょう。

「これでいい」という価値観

無印良品のキッチン家電

1つは、「エッジを立てない」ことです。無印良品は創業以来「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」という企業理念を打ち立てており、ナチュラルでシンプルなデザインを好む消費者層に愛されてきましたが、それが極端なエコロジー志向やミニマリズム(形態や色彩を最小限になるまで突き詰めたデザイン志向)に陥ることなく、一般的なライフスタイルを好む消費者層にも受け入れられました。無印良品のホームページでは

無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。

と記されています。あえて特徴を出しすぎない、「エッジを立てない」ことが幅広い層に支持された理由だと思われます。

ワンストップショップの利便性

2つめは、ワンストップショップとしての利便性です。無印良品は家具、寝具、家電、食器・掃除用品から化粧品類、文具まで7000点もの商品を取り扱っています。一般的な生活をするのに、無印良品の商品だけで生きていくことも可能なほどのラインアップです。生活用品を取りそろえるのにも便利ですし、普段あまり買わないものを選ぶ際にも気軽に立ち寄れます。もちろん東京・有楽町の旗艦店をはじめとした大型店舗以外ではワンストップショップとして機能していない店舗も多いですが、ネット通販がそれを補っています。

「豊かな低価格」

3つめは、絶妙な品質と価格のバランスです。無印良品では「豊かな低価格」と呼んでいますが、安心・安全な商品を、比較的低価格で買えるのは大きなメリットです。その品質と価格のバランスの良さが支持される大きな理由でしょう。特にアパレルにおいては高級ファッションの低迷が続いており、割り切って買う「割り切り消費」の時代にマッチしていると思われます。
無印良品の店舗

理念にもとづくブランドテリトリー

最後に挙げるのは、「企業理念を軸としたブランドテリトリーの成功」です。一般的に企業は、商品カテゴリーによってブランド領域(ブランドテリトリー)を決定します。しかし無印良品は、「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」という企業理念に合っていれば、トースターだろうが、コートだろうが、布団だろうが、調味料だろうが、消しゴムだろうが、すべて無印のブランドテリトリーに入ってくるのです。無印良品の明確な企業理念と、それにもとづくブランドの統一感が、独自の世界観を築き、ファンを獲得しているといえます。

重要なのはブランドコンセプト

「無印良品」の成功の理由を見てきました。こう見てみると「自然と。無名で。シンプルに。地球大」というブランドコンセプトが、すべての成功の要因につながっていると思います。このコンセプトだからこそ、「これでいい」「豊かな低価格」を実現させ、あらゆる商品カテゴリーにブランド拡張させ、ワンストップショップの機能を果たしたといえます。ブランドコンセプトの重要性がよくわかる事例のように思います。

関連記事

スターバックスとエシカルブランディング プレミアムラインの論拠と証明

スターバックスが1995年に日本に進出して、24年が経ちます。その間、日本のコーヒー文化は大きく変化しました。競合企業のタリーズコーヒーは1997年に運営を開始し、元来日本で喫茶店を展開していたドトー …

ブランドリニューアルの難しさを考察 アサヒスーパードライのブランドリニューアル【後編】

前編では、アサヒスーパードライのフルリニューアルについて、コトラーの4つのブランド戦略を用いて解説しました。 今回は、その不安点について検討してみます。 一般的に主要ブランドのリニューアルは、長年の固 …

緊急事態にこそブランド力を示すとき~アパホテル、シャープ、ルイ・ヴィトンに学ぶ~

新型コロナウイルスの感染拡大で休業を余儀なくされたり、売り上げが落ち込んだりして「マーケティングやブランディングどころではない」と考えている方も多いかもしれません。 しかし、「緊急事態にこそブランド力 …

ブランドリスク管理の重要性について  ーサントリー社に見る、ブランド毀損と影響と余波【後編】

前編では、サントリー社のブランド毀損に繋がる経営者の問題発言に関する経緯と、これまでのサントリー社のマーケティング・ブランド戦略について検証してきました。 後編では、毀損したブランドの回復について検討 …

瞬足

子どもの2人に1人が履く「瞬足」ブランド誕生への道

今回は、国内シューズメーカーであるアキレス株式会社が2003年から発売を開始し、現在では子どもの2人に1人が履く驚異のブランドへと成長を遂げた「瞬足」の開発経緯を紹介します。 開発メンバー全員が共有で …

サイト内検索