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Case Study

ローカル線は廃線の道を辿るしかないのか?銚子鉄道から学ぶ、弱者の生き残りマーケティング戦略

投稿日:2019年6月24日 更新日:

地域経済の足となってきたローカル線ですが、一時的なローカル線ブームも落ち着き、人口減少に伴う利用者不足の影響により、廃線となる路線が再び増えてきています。

石勝線夕張支線が126年と5か月の歴史に幕…JR北海道としては2年余りぶりの廃止

北海道夕張市内を南北に貫く石勝線夕張支線(新夕張~夕張間16.1km)が4月1日に廃止された。1892年11月、前身の北海道炭礦鉄道室蘭線の支線として開業してから126年と5か月での終焉となった。JR北海道の路線廃止は、2016年12月に廃止された留萌本線留萌~増毛間以来となる。

レスポンス 2019/4/1
佐藤正樹氏(キハユニ工房) 署名記事

しかし、2006年に衝撃的な話題でインターネットを起点にローカル線ブームを湧き起こした、元祖ローカル線の銚子電鉄は、他企業とのコラボレーションを行うなど、いまだ現役で頑張っています。

銚子電鉄の「ぬれ煎餅」 紀伊御坊駅で販売中ことし1月から千葉県の銚子電鉄と相互交流を行っている御坊市の紀州鉄道は、銚子電鉄のヒット商品「ぬれ煎餅」を紀伊御坊駅で販売しており、4カ月弱で200セットを販売するなど人気となっている。ぬれ煎餅目当てに紀伊御坊駅を訪れる人も増えており、「紀州鉄道を身近に感じてもらうことにつながっている」と大喜び。千葉県から紀州鉄道を訪れる鉄道ファンもいて、コラボ効果が表れている。

日高新報 2019/4/24

画像引用:http://chodenshop.com/shopbrand/002/O/order/

銚子電鉄は、副業である「ぬれ煎餅」が会社の売り上げの70%という大部分を占め、本業の鉄道収入を上回るという主客転倒した逆転経営を続けています。実際に、この商品が生み出せなければ、銚子電鉄は既に破産していてもおかしくない状況となっていたのです。その経緯については、ホームページにつまびらかにされています。

奇跡のぬれ煎餅 ~小さな煎餅が銚子電鉄を救った~
http://www.choshi-dentetsu.jp/detail/vspot/31

銚子電鉄 ホームページ

詳細はホームページに記載されている通りですが、廃線寸前のローカル線が偶然にも最先端のインフルエンサーマーケティングを実施し、会社を救う結果を生み出したのです。今では当たり前となったマーケティング手法ではありますが、当時は画期的な出来事でした。その後も、銚子電鉄はユニークな商品を販売し、話題を集め続けています。

経営状況が〝マズい〟銚子電鉄が「まずい棒」 新菓子で自転車操業打破

利用者減少で「マズい」経営状況を打破しようと、千葉県銚子市のローカル鉄道「銚子電気鉄道」は3日、スナック菓子「まずい棒」を発売する。公式サイトでは「電車なのに自転車操業…」と窮状を訴え「正直、おいしいです」とPR。同社はこれまでも、ぬれ煎餅を販売して収益を上げており、新たな名物に期待している。

SANKEI.com(産経新聞) 2018/8/2

また、2014年にはクラウドファンディングによる車両検査費用の捻出を行うなど、ローカル線とはとても思えない手法を導入し、実施しています。

「もはや煎餅屋」それでも銚子電鉄を走らせたい…ふるさと納税、応援の輪は広がるか

銚子電鉄は、千葉県銚子市内を走る全長6.4キロの小さな鉄道会社。経営難が続くため、車両の検査にあてる費用をふるさと納税のクラウドファンディングで集めることにした。5月16日から8月31日までに1000万円を集めるのが目標だが、直近の寄付合計は67万5000円(6月13日時点)にとどまり、目標達成に暗雲が立ち込める。

弁護士ドットコム トピックス 2018/06/06
弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治氏 署名記事

これらの銚子電鉄の一連の行動を鑑みると、SNSなどを用いたWEBマーケティングは企業規模や地域に関係なく実施することができ、なおかつ最先端のテクノロジーを用いることで、低コストで販促や資金調達が行える可能性が高まるという、希望的展開が見出せます。大量GRPを投下する大企業と直接戦うことはできないものの、戦略次第では局地的な場所での勝負では、十分戦える余地があるということです。

千葉県には銚子電鉄以外にも、いすみ鉄道というローカル線がありますが、こちらもレストラン列車やネーミングライツを募集するなどの創意工夫を凝らして、生き残り策を模索しています。

いすみ鉄道 ホームページ
https://www.isumirail.co.jp/

現実として、ローカル線やローカル企業は地政学的な問題もあり、そう簡単に経営の好転が見込める状況ではないと思います。しかし、そういった企業こそ、しがらみのない立場で、最先端のマーケティングや技術を駆使することにより、生き残りの機会が高まるはずです。常に挑戦者であり続けることは厳しいかと思いますが、企業の究極の目的である事業継続を目標として、最後まで頑張りぬいていただきたいと願っています。

GRP…延べ視聴率のこと。スポンサーにとっては、どれだけ多くの視聴者がCMを目にしたか(到達率)と、どれだけ多くの回数CMを目にしたか(平均接触回数)が重要になってくる。このため、GRP=到達率(Reach)×平均接触回数(Frequency)とも表される。広告業界でよく使われる用語である。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

 

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