特別寄稿

【特別寄稿】今企業に求められる「情緒的価値」とは?

投稿日:2015年4月1日 更新日:

これまで日本の企業においては、「技術の粋を集め、最高の製品を世に出せば売れる」とされ、どの企業も自社の商品やサービスの質を上げることに専念してきました。

しかしながら、グローバル社会の進行により、国の枠を超え企業間の競争は激化。せっかく出した新しい機能もあっという間に真似され、安い商品がどんどん市場に参入してきます。このようにコモディティ化された市場においては、価格競争を余儀なくされ、企業の利益が減少してしまいます。

また国内だけを見ても、少子高齢化の影響により市場が縮小し、少ないパイの取り合いが行われています。こうした厳しい環境の中、企業は機能面だけで自社商品を差別化することが難しくなりました。

そこで多くの企業が機能以外の部分、「情緒的価値」をいかに付加するかに重点を置くようになってきました。なぜなら「情緒的価値」をいかに訴求していくかによって、付加価値を付け、価格競争を脱することが出来れば、企業の利益はもちろん経営の根幹をも大きく左右すると言っても過言ではないからです。

「情緒的価値」を付加していく「ブランド構築」「ブランディング」

それでは「情緒的価値」とは何でしょう?商品の価値には「機能的価値」と「情緒的価値」があります。時計で言えば、正確な時間を刻むのが「機能的価値」で、デザインなどは「情緒的価値」にあたります。

例えば、「ユニクロ」と聞くと「機能的で低価格の衣料」を、「ルイ・ヴィトン」なら「高品質で高価格のファッションブランド」を想像することができるでしょう。
現在、明確な定義づけがあるわけではないのですが、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会では、『ある特定の商品やサービスが消費者・顧客によって識別されているとき、 その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ』と定義されています。

この「ブランド」となるものが主に「情緒的価値」の部分であり、「機能的価値」にどれだけ「情緒的価値」を付加できるかが重要となるのです。「機能的価値」だけだと価格競争に陥ってしまう。そこにどんな「情緒的価値」を乗せて「ブランド」を構築していくか、そのための手法やプロセスを「ブランド構築」や「ブランディング」と呼んでいます。

経営戦略とブランディングを一貫して行うことが経営を安定化させる

しかし、「ブランド」とは単に1商品のことだけを考えれば良いわけではありません。企業全体としての「ブランド構築」「ブランディング」を考えることが、長期的に経営を安定化させるために必要なことなのです。もちろん、商品ブランドと企業ブランドはどちらが優れているというものではなく、一貫しているという事が重要です。

例えば商品ブランドとしての「ヒートテック」が、何万円もする高級インナーだったなら、企業ブランドとしての「ユニクロ」とのイメージの違いから価格に見合った価値を感じてくれないかもしれません。またその逆も然りです。「ブランド」に企業活動全体との一貫性を持たせることで、価格競争に巻き込まれず、少しでも高く買ってもらい、ブランドを気に入りリピーターになってくれるファンを増やすことができるのです。ひいてはそれが企業の利益を増やすことにつながります。ブランドを高めることができれば経営は安定し、長期的経営が可能になります。

この長期的というところがとても重要で、それを実現するためには、経営戦略と企業活動とが一貫しているかどうかが大きなポイントとなるのです。経営戦略から一貫したブランド構築ができていれば、ブランドとして絶対変えてはいけない、消費者や顧客に約束している「ブランド・プロミス」が明確になります。

そのためにはまず、経営理念に基づいた経営戦略という土台があって、それを具体化するためのマーケティング戦略を一体化します。その上で付加価値としてのブランド力を高めることに注力することで、消費者は自社のブランドの価値を認めて購入し、安心して繰り返し購入してくれるのです。

ブランドの役割

この「安心して」ということも「ブランド」の役割の一つなのです。例えば消費者が何か商品を購入する際、無意識にリスクを回避したいと思います。

リスクとは、購入した商品が期待した機能を果たさなかったり、身体や心理的に害を加えるといったリスクのことです。誰しも、買って失敗はしたくないものです。一方、「ブランド」が確立されると、「ここまでの機能や安全性は保障してくれるだろう」という信頼が生まれます。その信頼こそが、ブランドの役割のひとつなのです。

最近でも話題になった食品の異物混入や食品偽装問題では、消費者が企業にもっていた「安心・安全」を大きく裏切る結果となったからこそ、大きな問題として取り上げられているのです。つまりブランドとは、諸刃の剣でもあるということです。ブランドは作るだけでなく、ブランド・プロミスを常に守り、一貫した活動をしていく事が求められます。

中小企業に必要なチームブランディング

しかし、大企業のようにマーケティング部門や経営企画室など専門の部署を持たない中小企業にとっては、専任の担当者がいなかったり、社長がすべてを行っていたりと、なかなか「ブランディング」に取り組むことが難しい場合が多いのが現状です。

そこで中小企業におすすめなのが、スタッフを巻き込んでブランディングを行うチームブランディングというプロセスです。チームブランディングでは、ブランド構築にかかわる活動に、プロジェクトメンバー参加して行います。せっかく行ったブランディングもトップダウンで押し付けるだけでは、単に指示されたことを行うだけになってしまいます。

しかし、チームブランディングを実行することで、各自が自ら考えて動くようになり、団結力や士気が高まっていくのです。中小企業にとっては特に、メンバー間の信頼とモチベーションが高まりチームワークの醸成が期待でき、従業員に自分事として浸透しやすい経営目標を達成するためのアイデンティティの構築にも役立つのです。
ですから、経営環境の厳しい今こそ、社内一丸となって企業の付加価値を高めるためのブランディングに取り込んでいくときなのです。

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