Case Study

実は広告メッセージだった「婚約指輪は給料の3カ月分」 デビアス社の巧みな戦略

投稿日:2018年5月30日 更新日:

デビアス

多くの人が慣習として覚えている「婚約指輪は給料の3カ月分」。しかしこれはもともと、ダイヤモンド・ブランドのデビアス社の広告メッセージでした。一企業の広告メッセージが日本の習慣となるほど受け入れられた理由は何でしょうか。考察してみました。

発祥は1970年代

多くの女性のあこがれ「ジューンブライド」(6月の結婚式)。日本では梅雨の季節であり、「日本のブライダル業界が、売上が悪い6月の結婚式をブランディングしたのだ」という指摘も見かけますが、ジューンブライドには、れっきとした由来があります。

6月(June)の語源となったユノ(Juno)という女神は、ローマ神話の主神ユピテルの妻であり、結婚や出産、育児の象徴となっていました。そのことから6月の結婚が縁起がいいとされたのです。女神が由来というのはなんともロマンチックですね。

では、日本人の多くが知っている「婚約指輪の値段は給料の3カ月分」という慣習はどうでしょうか。これはヨーロッパが由来でも古代が由来でもなんでもありません。1970年代のある企業の広告から来ています。

日本人の特性にあったダイヤモンドの婚約指輪

ある企業とは、ダイヤモンド・ジュエリーブランドのデビアス社です。同社の婚約指輪キャンペーンに携わった小池玲子氏は自著『ある女性広告人の告白』でいきさつを述べています。
それによると、1970年代のはじめの日本では、婚約指輪を贈る人は結婚する人の50%にすぎず、ダイヤモンドの婚約指輪を贈る人は、そのうちのわずか7%でした。

しかしイギリス企業であるデビアス社は、日本人には「儀式好きで、贈り物好きで、本物好き」という特性があり、ダイヤモンドの婚約指輪にビジネスチャンスがあると考えました。

習慣として根付く前の素朴な疑問

そこでデビアス社はまず、企業のスローガンである「A diamond is forever」を「ダイヤモンドは永遠の輝き」という日本語のスローガンに訳しました。またダイヤモンドを愛の象徴と位置づけ、「ダイヤモンドは愛の証」というスローガンの婚約キャンペーンを開始しました。
開始から数年後、1つの問題が起こりました。「婚約指輪はいくらのものを買ったらよいのかわからない」という素朴な質問が、宝石店に数多く寄せられたのです。

郷ひろみの発言が決定打

そこでデビアス社と代理店は、消費者に勧める価格のガイドラインを設定しました。最初は給料1カ月分としましたが、結納の時、新郎から新婦に渡される結納金の全国平均が25歳男性の給料の2~3カ月分だったことに目を付けました。そして「婚約指輪は給料の3カ月分」というガイドラインができたのです。

そしてデビアス社は、広告でこのメッセージを謳うようになりました。決定的に定着するようになったのは、芸能人の郷ひろみと二谷友里恵の結婚の際、婚約指輪の値段を聞かれ、郷ひろみが照れながら「給料の3カ月分です」と答えたことです。こうして「婚約指輪は給料の3カ月分」は単なるデビアス社の広告メッセージから離れ、一般常識にまで上り詰めました。

記念日商法の成否

こうして婚約指輪のキャンペーンを大成功させたデビアス社ですが、他にもさまざまなキャンペーンを行っています。「ダイヤモンドの結納返し」「成人式のダイヤモンド」「エタニティリング」(出産時)「スイートテン」(結婚10周年)などです。成功したキャンペーンもあれば、まったく根付かなかったキャンペーンもありますが、とにもかくにもデビアス社は、日本を世界一のダイヤモンド消費国に成長させました(1988年)。

「わかりやすさ」が決め手の時代に

デビアス社の成功の理由はなんでしょうか。
最大の理由は、冠婚葬祭という不明瞭な価格が当たり前の業界に、「わかりすい価格」を提供したことです。これは現代マーケティングにおいて非常に有効で、明朗会計を掲げる結婚式場や、満足できなかったら費用を返金する葬儀会社などが急成長しているのもこの「わかりやすさ」です。これは冠婚葬祭に限らず、英会話ビジネス(コラム参照)やメガネ業界(コラム参照)にも当てはまります。
製品のわかりやすさ、納期のわかりやすさ、価格のわかりやすさ…消費者主導の市場において、このことがビジネスが成功する要因になると考えられます。

関連記事

無印良品

無印良品の「これでいい」ブランドコンセプト

無印良品は1980年にスーパーマーケット西友のプライベート・ブランドとして出発、1989年に「株式会社良品計画」のブランドとなり、翌1990年に本格的に小売業として展開を始め、現在は全世界で900店舗 …

ブランド認知

ザ・プレミアム・モルツの成功例から学ぶ!ブランド認知とは!?

仕事に疲れて帰宅する際、「ビールが飲みたい!」と思ったら、真っ先に思い浮かぶブランドは何でしょうか。キリン一番搾りであったり、サッポロ黒ラベルであったり、アサヒスーパードライであったり…それは人によっ …

売上7倍

売上を7倍にした「フルグラ」から学ぶ!マーケティングの目標設定とは?

マーケティングやブランディングが成功しているかどうかを測るためには指標が必要です。今回は、ブランド構築の最後のステップである「マーケティングの目標設定」について事例を交えながら解説します。 マーケティ …

印刷会社が進むべき16の事業領域~アフターコロナ時代を見据えて~

今回は印刷業界について取り上げます。印刷業界は構造的な低迷もありますが、今回のコロナショックにより大きな変革の波にさらされようとしています。その変革の波をとらえ、印刷会社がどう変わっていくべきなのか、 …

ジャニスウォン

日本初上陸の「ジャニス・ウォン」が提案する「食べるアート」とは!?

(出典:http://www.janicewong.jp/) 3月25日にJR新宿駅南口にオープンした商業施設「NEWoMan」。 日本初上陸のグルメショップが数多くひしめく中、異彩を放ち話題となって …

サイト内検索

ブランド・マネージャ―認定協会サイトへ

Chess
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
スターバックスの店舗
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
打ち合わせ
CI、VI、BIの違いとは?
ブランディング
ブランディングとは? 「基本的な意味と進め方」について解説!
マクドナルドとモスバーガー
マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?
マトリックス
アンゾフのマトリクスとは? 富士フイルムの事例に学ぶ
キャリアウーマン
ペルソナ設定〜Soup Stock Tokyoの「秋野つゆ」の成功事例からみるペルソナの作り方とは?
無印良品
無印良品の「これでいい」ブランドコンセプト
星のや軽井沢
星野リゾートのブランディングから学ぶ!〜理論の実践とは〜
印刷会社が進むべき16の事業領域~アフターコロナ時代を見据えて~