ブランディング基礎

なぜカルピスは100年愛されてきたのか?〜その背景に迫る〜

投稿日:2018年4月20日 更新日:

カルピスのラインナップ

「カラダにピース」でおなじみのカルピス。でも一時期ブランド力が低迷していた時期があるんです。ブランド復活の原動力は技術力、そして創業以来のコンセプトを守り続けてきたことでした。

思い出とともに愛されるブランド

カルピスは1919年、内モンゴルの遊牧民が飲んでいた発酵した乳から着想を得た三島海雲が、おいしくて、滋養になって、安心感があって、経済的――とのコンセプトのもとに開発した飲み物です。戦後の貧しい時期に子ども時代をすごした人にとっては、甘くて滋養になって、親しみのある飲料だったことでしょう。

30代以降の人は、カルピスというと子供のころのこんな思い出が蘇ってくるのではないでしょうか。

暑い夏の盛りに、家に帰ってすぐ、冷蔵庫を開けてカルピスのビンを取り出し、原液をコップにいれて水と氷を混ぜて、一気に飲み干した思い出。甘くて冷たくて、幸福感に浸った思い出。あるいはギフトでカルピスの原液セットをもらうと、嬉しくて飛び上がった思い出がある人もいるでしょう。

技術力でシーンを広げる

これほど日本国民に愛されたカルピスですが、1980年代末あたりから長期にわたって、ブランド力が落ちた時期があります。その理由は飲料のアウトドア化に完全に乗り遅れたからです。

コンビニや自動販売機が街のいたるところにできて、飲み物は外で買って外で飲む習慣が根付きました。水で希釈するカルピスは自販機では売れず、コンビニでも缶やペットボトルの飲料に追いやられました。

またコンビニに代表されるように利便性が追求されている昨今において、コンビニでも売ってなくて、水で薄める手間がかかるカルピスは、親しみやすい飲料とはほど遠くなってしまったことも一因に挙げられるでしょう。

おそらくカルピス社も、そんなことは重々承知していたと思われます。しかしそれができなかったのは、濃度を均一にできる技術がなく、消費者に水で希釈して混ぜてもらう作業がどうしても必要だったからです。1973年に発売された希釈済みの「カルピスソーダ」が炭酸だったのは、普通の水では長期の品質維持に問題があったからです。
カルピスソーダ

カルピスが再び「親しみやすさ」を取り戻したのは、1991年の「カルピスウォーター」の発売です。水で希釈せずに飲めるカルピスの手軽さが受け、大ヒット商品になりました。濃度を均一にできる技術が確立されたため、ボトルネックが解消されたのです。

ヒット商品の背景には、このような技術者のたゆまぬ努力があることを教えてくれる事例です。

100年間本質を守り続ける

カルピスはここ5年で売り上げが130%伸長しており、今やアサヒ飲料が重視する6大ブランド(カルピス、三ツ矢サイダー、ウィルキンソン、WONDA、十六茶、おいしい水)の1つになっています。

カルピスがこのようなブランド力の浮き沈みがありながらも、約100年にわたって愛されつづけたのは、カルピスの開発以来の精神を守り続けたからといえるでしょう。アサヒ飲料の代表取締役社長である岸上克彦氏は次のように話します。

当社にとって変えてはいけないことは、カルピスの4つの本質です。 おいしく、健康に役立ち、ピュアで自然に由来し、家計を圧迫しないこと。 これらの点を全く変わらずに貫くことによって、日本初の乳酸菌飲料としての誕生、 そして(中略)「カルピスウォーター」の登場によってカルピスを飲むシーンが広がったことにより、 段階的に大きくブランドを確立してくることができたといえるでしょう。

本質を守りながらも、時代に合わせて飲むシーンを広げることで、ブランドが発展したのです。

-ブランディング基礎

関連記事

セグメンテーションとターゲティング

ブランド構築における「セグメンテーション」と「ターゲティング」の考え方!

ブランディングや新商品の企画において、それを誰に買ってもらいたいか、当然のようにターゲットの設定をすることがあると思います。その際、ターゲットは広すぎても、最初から絞りすぎても正解ではありません。 そ …

マクドナルド

マクドナルドV字回復の理由〜取り戻したブランド・アイデンティティ〜

マクドナルドは2011年に当時の過去最高益を記録したのち業績は下降線をたどり、2015年12月期には347億円の赤字にまで落ち込みました。当時のマスコミや識者からは「マクドナルドのビジネスモデルは賞味 …

日本地図

「東西うどん」から「47都道府県ビール」まで〜花ざかりなご当地メニューの今〜

最近、コンビニやスーパーなどで「ご当地」をウリにした商品をよく見かけます。47都道府県ごとの名前を冠したビールや、本来、東日本と西日本で味を変えている商品が全国発売されるなど、同時に味比べができること …

セミナーのイメージ

ホントはいい人?田端信太郎のセルフブランディング術

フリーマガジン「R25」、ライブドアニュース、VOGUEデジタル版、LINEなど数々のメディアの立ち上げ・運営に関わり、現在はZOZOに在籍している「メディア野郎」こと田端信太郎氏。ツイッターでもたび …

虎屋

100年企業に学ぶ愛されるブランド ~虎屋、カルピス~

(出典:https://www.toraya-group.co.jp/toraya/shops/detail/?id=13/) 現在日本における創業100年以上続く長寿企業は、なんと全国に約2万6,0 …

ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
2月 9, 2018 に投稿された
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
2月 15, 2016 に投稿された
「オンデーズ」はメガネ業界のZARAとなるか? 〜JINSとは一線を画すファッション路線〜
「オンデーズ」はメガネ業界のZARAとなるか? 〜JINSとは一線を画すファッション路線〜
5月 23, 2018 に投稿された
クラフトボスの「クラフト感」って? ブームだけじゃないヒットの理由
クラフトボスの「クラフト感」って? ブームだけじゃないヒットの理由
3月 30, 2018 に投稿された
マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?
マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?
12月 28, 2015 に投稿された
サービスの質も向上! 従業員が自ら動くようになる「インターナルブランディング」とは?
「ブランドM&Aはなぜ起るのか」など、記事一覧はこちら
中央大学ビジネススクール教授 田中洋
【特別寄稿】ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?
ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?

株式会社JOYWOW代表取締役会長
阪本啓一

【特別寄稿】企業に求められる「情緒的価値」とは?
今企業に求められる「情緒的価値」とは?
株式会社イズアソシエイツ代表 岩本俊幸