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Case Study

夏は、カルピス。そのブランドの役割と変遷。 ロングセラー商品の機能進化

投稿日:2019年9月17日 更新日:

夏の定番商品といえば、カルピスだったという時代があります。おそらく、現在30代以降の年齢の方であれば、そのような時代を過ごした人も多いのではないでしょうか。

夏の暑い昼下がりに、原液を薄めたカルピスに氷を入れ、さっぱりした乳酸菌の美味しさで口の中が満たされる。また、学校の帰り道に、カルピスウォーターをゴクゴク飲んで、喉の渇きを潤す。そのような、淡い思い出と記憶が蘇ります。

そんなカルピスですが、最近ではさまざまな進化を遂げています。

「真夏日の『カルピス』」発売、“雪塩”入りで熱中症対策にも/アサヒ飲料 アサヒ飲料は6月25日、「真夏日の『カルピス』」(490mlPET/税抜130円)を全国で発売する。

9月末までの限定販売。「カルピスウォーター」と同等の乳成分量を配合しつつ甘さをおさえることでさっぱりとした味わいが楽しめる、“暑い夏にぴったり”な乳性飲料。宮古島の「雪塩」を加えており、水分補給だけでなく、塩分も補給できる。食塩相当量は厚労省が熱中症対策のガイドラインで示す基準を満たす100mlあたり0.1g。

パッケージは、白地の背景に「カルピス」の水玉模様をあしらい爽やかな印象にするとともに、太陽のイラストを描くことで夏らしさを表現。また、商品特長である宮古島の「雪塩」入りであることや塩分や水分が補給できることを明記している。

なお、「カルピス」は1919年7月7日に発売され、今年で100周年。同ブランドの今年1~5月販売数量は前年比103%と好調に推移している。

食品産業新聞社 ニュースWEB 2019/6/23

カルピスは、かつてはアミノ酸で有名な、味の素の傘下企業でしたが、現在はアサヒ飲料の傘下企業となっています。

アサヒグループは、ディアナチュラや1本満足バーなどの機能性食品・サプリメントを手掛けるアサヒグループ食品もあり、健康分野には比較的強いグループ企業でもあります。そういった点においても、乳酸菌を用いた健康飲料のイメージがあったカルピスとの親和性は高く、一定のシナジー効果があるといえるでしょう。

また、アサヒグループは、グループ内にアサヒビールがあり、マーケティングに強い企業でもあります。その点においても、カルピスの販促における恩恵は大きいと思われます。

精緻な技術力と商品開発に熱心な味の素グループより受け継いだ文化と、アサヒグループの強みであるマーケティングセンスがうまく組み合わさることで、企業としての化学変化が生じたことが、現在の好調な業績につながっているのでしょう。

今回の前述における新商品についても、技術力と商品開発力を生かつつし、マーケティング戦略を基に組み立てた強力な販促が期待できる商品となっています。

カルピスというロングセラー商品の持つブランドにおける安心感と爽やかさ。それでいて、夏に大きく問題になる、熱中症対策。それを「美味しく解決」することができる商品でありながら、新たな進化を遂げたカルピスとして新鮮味のあるブランド・コンセプトを掲げることができています。

長い年月をかけて顧客との信頼関係を築いたブランドは、時として新鮮味を失いがちです。しかしながら、ブランドとしての根本は揺るがず、なおかつ新たな進化を模索し、顧客を取り込むべく挑戦し続けるというのは、ロングセラー商品のイノベーションにおいては非常に重要な視点であると思われます。

これからも、カルピスが爽やかでありつつ、確かな技術力とマーケティングセンスをもとに、斬新なコンセプトを打ち出してくることを楽しみに待ちたいと思います。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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