東京・銀座中央通りには、数多くの高級ブランド店や複合商業施設「GINZA SIX」が店を構える。この地に、東京西部を地盤とするドラッグストア大手のサンドラッグが「サンドラッグ銀座6丁目店」を1月19日に開店した。GINZA SIXの通りを挟んだ真向かいという、まさに銀座の“一等地”である。
銀座は訪日中国人にとって、特に人気のある観光スポットだ。中国検索サイト大手のバイドゥが直近1年で日本に旅行経験のある北京市と上海市在住の約1000人にアンケートを取ったところ、関東圏で買い物に費やした時間が最も長かったのが銀座だった(2018年4月中旬~5月初旬調べ)。その銀座の中心部に、サンドラッグが攻め込んできたのだ。
(東洋経済 2019/02/20
サンドラッグ「銀座一等地」に進出する真の狙い)
ローコストオペレーションを貫くサンドラッグ。競合チェーンとの駆け引きとも思われる銀座一等地での進出。訪日中国人の旅行支出で「爆買いが終わった」と報道されて久しいが、新たな市場機会を狙う販売戦略が展開された。
円安や中国の関税強化を原因に急失速する“爆買い”。この急変に対応するため、訪日中国人の「銀座での滞在時間」の長さに目を付けた戦略だ。「ターゲットの動線上、効果が見込めそうなところに何らかの仕掛けを打つ」というのはマーケティングの定石で、比較的良く知られている。しかし、アンケート情報に基づいてその定石を踏まえた結果、「安価な商品を大量に販売する業態の店舗が、銀座という一等地に出店する」という、常識を覆す施策が導き出された点が面白い。
「富裕層はもう来ない、銀座から消えた中国人観光客はどこへ行く」マスコミが煽る中にも、そこには、訪日中国人のニーズを意識した戦略があると考えられる。医薬品、ベビー用品、食品、日用品、健康食品、化粧品といった豊富な種類の消費財は日本の得意分野ともいえる。そしてこれらはサンドラッグの得意分野だ。便利な消耗品から日本の薬品、健康食品と陳列していれば、中国人にとっては買い物から「日本の家庭」をブランド体験できる機会ともいえる。
アンケートから得られる情報が、効果的なブランド戦略に結実するか気になるところだ。
はやま 紺(はやま こん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得者
紺デザイン室 ブランド・クリエイター
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