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BCPと経営戦略。事業継続のために、従業員の安全を優先する

投稿日:2019年7月16日 更新日:

大規模災害が多発し、企業のリスク管理が叫ばれる中、帝国データバンクはこのほど、事業継続計画(BCP)に関する企業の意識調査を行った。BCPを策定している企業割合は15.0%で、「策定中」「策定を検討している」など策定の意向がある企業と合わせても45.5%と、半数に満たなかった。「BCPの策定が進んでいない実態が浮き彫りとなった」と同社。

策定していると回答した企業割合を9の業界別に見ると、最も多いのが金融の42.5%。以下、農・林・水産(18.4%)、サービス(17.3%)、製造(17.0%)、運輸・倉庫(16.4%)、建設(14.5%)など。
従業員数別では、千人超が52.6%と最も多く、以下、301~千人43.3%、101~300人28.2%、51~100人20.3%と、規模が大きくなるほど策定している割合が高くなっている。

(中略)

策定の意向がある企業に、事業が中断するリスクに備えてどのようなことを実施、または検討しているかを聞いたところ(複数回答)、「従業員の安否確認手段の整備」が72.2%とトップ。以下は「情報システムのバックアップ」(61.5%)、「緊急時の指揮・命令系統の構築」(47.2%)、「事業所の安全性確保」(41.4%)、「災害保険への加入」(39.3%)、「調達先・仕入れ先の分散」(33.5%)などだった。企業がさまざまな対策を行い、リスクに備えている様子がうかがえる。

観光経済新聞 2019/7/4
企業のBCP、策定15%にとどまる

予想外の天災や非常事態に備え、BCPを策定しておくことは、もはや企業の社会的責任として、必須のものになりつつある。しかし、残念ながら実態としてはまだまだ策定企業が少ないことが、現実である。

企業の目標は、事業の継続性であり、最も優先すべき事項である。しかし、事業継続のために必要となるのは、そこで働く人材である。実際、昨今では人手不足が常態化し、倒産に至る企業も増加し続けている状況である。

「人手不足倒産」、過去最多ペースでなお推移 人材不足が経営リスクに

https://news.livedoor.com/article/detail/16726949/
livedoor news 2019/7/5

従業員にとって、その企業で働くことは、生活や人生において占める時間が多くなることになり、ある意味人生の一部を預けているともいえることになる。そのようななかで、自分の勤務先が従業員の安全よりも、事業の継続性を優先することを前面に打ち出した場合、何が起きるのであろうか。その時は間違いなく、労使間における信頼性の破綻が発生する。企業優先の考えの押し付けは、結果として自社のブランド価値を損ない、離職者の増加を招くことにつながるのだ。

その反面、従業員を何があっても最優先し、会社の人的資源価値を最大限守り抜くための施策を真剣に検討していることを従業員が知った場合、従業員は勤務先の会社を守るために、無理のない範囲で懸命に業務を遂行しようとするであろう。結果として、何らかのトラブル発生時においても、会社が生き残る確率が高まり、なおかつトラブルの解決を通じて従業員同士の一体感が生まれる、芯の強い企業となる。

今回の2019年7月における九州の豪雨のように、不意をついて災害はやってくる。自社の経営戦略の重要な観点としても、BCPの策定は是非ともお勧めしておきたいところである。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

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