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SWOT分析でわかるカラオケ業界の方向性~ビッグエコーを例に~

投稿日:2018年6月27日 更新日:

ビッグエコー

多様化するカラオケ利用シーン

「カラオケ」というと40代以上の方は「昔はよくカラオケ行ったよなあ」「二次会といえばカラオケだったよなあ」「若いころはカラオケオール(オールナイト)も普通だったよな」と懐かしく振り返るかもしれません。そういった方にとっては、カラオケ市場が1996年の6620億円から2015年には3994億円と、約3分の2までに減っていると聞いても「そうだよな」と納得されるかもしれません。

しかし見方を変えると、カラオケ市場は、減少に歯止めがかかった2010年以降は、微増傾向にあります。つまり10代、20代の若者にとってはすっかり定着したレジャーなのです。特に10代女性のカラオケ参加率は60%を超え、20代女性も50%前後となっています。女子会やママ友会、一人カラオケなどシーンが多様化しているのであって、決して「カラオケ離れ」が進んでいるわけではありません。

ただし、職場の宴会や二次会などお酒や食事の場としてのカラオケは、存在感が薄れているともいえます。料理のメニューを充実させた「レストランカラオケ」という業態を確立していたシダックスが、カラオケ事業から撤退したのもその象徴かもしれません。一方フードの持ち込みを自由にし、フードメニューを限定して調理場を縮小させた「まねきねこ」が急成長しています。

疑似体験がキーワード

多様化する利用シーンに応じて、各社がさまざまな趣向をこらしています。
カラオケ最大手のビッグエコーでは、映像をモニターではなく、壁2面を使ってプロジェクターで投影することで、ライブの臨場感を疑似体験できる「デュアルプロジェクタールーム」を設置しています。

VR(バーチャルリアリティ=メガネ型のモニターで、実際にその場所にいるかのような体験ができる)を使って、ライブ会場にいるかのような感覚が味わえるカラオケ店も登場しています。
疑似体験どころか、ライブのボーカルを体験できるサービスも登場しています。「BAN×KARA-ZONE GZ」ではカラオケの曲に合わせてバンドが即興で生演奏をしてくれます。

CDなどの音楽コンテンツ市場が縮小する一方で、声優・アイドルのライブなどリアルな音楽体験市場は伸びています。ライブの臨場感を味わいたいという消費者の趣向に合わせて、カラオケ業界も進化していっているのです。

カラオケルームをビジネス用途に

カラオケボックスは固定費の割合が売上に対して約8割と高いことが特徴です。閑散時間である朝から昼間において、いかにカラオケルームを有効活用してもらうかも成長のカギです。
ビッグエコーでは、外回りの営業パーソンの商談や、マイクやモニターを使った会議などにカラオケルームを活用してもらうビジネス用途のサービスを開始しました。駅前などの立地や防音ルームなどの強みを生かしたサービスです。

ビッグエコーのSWOT分析

ここでビッグエコーのSWOT分析を行いたいと思います。ご存知の方も多いと思いますが、SWOT分析とは企業の内部の「強み(

Strength)」と「弱み(Weakness)」、外部の「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」の4つを抜き出してみて、経営戦略を立てる上での参考にするものです。

強み

ビッグエコーは1988年に1号店を出店したカラオケルーム業界の先発組で、繁華街や駅前などの人通りの多いところに積極的に出店し、業界1位の店舗数と売上を挙げています。ビッグエコーの強みは、そのような店舗の立地と知名度、ブランド力ということになります

弱み

賃料が高い繁華街や駅前に立地し、またビル全体をカラオケルームにした店舗など大規模な店舗が多いため、固定比率が高く、利用者が少ないと売り上げの減少に直結します。また昼間のルームの稼働率が低いのも課題といえます。

機会

アイドルやアニメの声優など、音楽をライブで楽しむ消費者が増えてきました。一方喫茶店などで商談を行うビジネスパーソンが多くいるということもビジネスチャンスでした。

脅威

趣味の多様化、宴会や二次会などの減少、人口減少などが脅威に挙げられます。

図にすると以下のようになります。

SWOT分析をすると、前述のビッグエコーの新しいサービス、「デュアルプロジェクタールーム」と「カラオケルームのビジネス活用」がなぜ開発されたのかがわかります。

特に「カラオケルームのビジネス活用」に関しては、商談の場に適した立地という強み、昼間のルーム稼働率が低いという弱み、外回りの営業パーソンの商談の場という機会――とそれぞれの分析から浮かび上がってくるサービスです。もちろんビッグエコーを運営する第一興商が同様のSWOT分析を行ったかどうかはわかりませんが、SWOT分析の有効性が示されていると思います。

カラオケは第二形態へ?

その他でも、オンライン英会話を展開したり、大音量で映画を楽しめるサービスを開始したりと、各社既存のリソースを生かした取り組みを行っています。将来はカラオケルームで勉強したり、会議をしたり、映画を楽しんだり、生伴奏のライブ会場になったりするかもしれません。「カラオケの第二形態」がやがてやってくるかもしれませんね。

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