ブランディング基礎

ジョブズの思想を体現する「アップルストア」〜学ぶべき小売店舗の役割とは〜

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アップル新宿アップルの小売店舗「アップルストア」は2001年にアメリカで1号店を開店して以来、爆発的に人気を博し、2018年現在で世界500店舗以上に拡大、2018年4月にはApple新宿がオープンするなど快進撃が続いています。小売の実店舗が低迷する中で、なぜアップルストアは成長を続けているのでしょうか。理由を考えてみましょう。

ブランディングにおける店舗の役割を一新

スティーブ・ジョブズの伝記を書いたウォルター・アイザックソンは、ジョブズの功績の1つとしてアップルの小売店「アップルストア」の出店を挙げ、「ブランディングにおける店舗の役割を一新した」と評価しています。アップルストアによる店舗戦略は、どの点が革新的だったのでしょうか。

ジョブズの自伝

2000年当時、アップルはiMacなど革新的な機能を持つ製品を発表していましたが、他社に比べて高価格でした。そこで販売員の専門的知識が問われるわけですが、当時はPC販売の担い手がコンピューター専門店から巨大チェーンや大型店に移り、専門的知識を持たない店員がスペックを読み上げるような販売スタイルに変わってしまいました。せっかく製品の独自性を持っていても、販売員の力量不足で、アップル製品の革新性、そして世界観が消費者に伝わりづらくなっていたのです。

「我々のメッセージを店で伝える方法を見つけられなければだめだ」。ジョブズはそう考え、直営店の設立を決意します。当時のPCメーカー業界はネット直販で無店舗のデルが成功し、一方ゲートウェイは郊外店を展開して大失敗しており、直営店舗を展開するのは無謀だと思われていました。しかしジョブズは、会社の敷地内の倉庫に店舗のプロトタイプを作って、店舗のデザインづくりに没頭します。

デザインのディテイルを追求

アップルストアの店内

アップルの製品の特徴は徹底したミニマリズム(完成度を追求するために装飾的趣向を凝らすのではなく,それらを必要最小限まで省略する表現スタイル)。その世界観を表現するために、ジョブズは倉庫にこもって、デザインを追求します。そのディテイルへの追求は、フィレンツェの歩道に使われている砂岩を使用したタイルを敷き詰めた床、自ら特許を取得したシースルーの階段などに表れています。

6カ月におよぶプロトタイプでの検討が終わろうとしていた時点で、部下に「製品別ではなく、人々がしたいことを中心にレイアウトをすべきだ」と指摘されたときも、癇癪もちのジョブズはいったん激怒しますが、やがて誤りを認め、レイアウトを作り変えています。

床面積あたり売上1位の小売店に

2001年5月19日、アップルストア1号店がヴァージニア州タイソンズコーナーにオープンしました。マスコミなどの冷ややかな批評に反して、消費者がアップルストアに殺到し、1週間の平均来店者数は5400人、同年の売り上げは12億ドルに達しました。

その後のアップルストアの快進撃は知られるとおりです。アップルストアは2018年時点で世界500店舗以上に拡大、アメリカでの床面積あたりの売上額は、ティファニーなどを引き離し、断トツの1位となっています。

アップルストア1号店を紹介するスティーブ・ジョブズ

体験型店舗が成功の理由

近年アメリカでは店舗のある小売業の不振が続いています。その中でアップルストアが成長を続ける理由は何でしょうか。

1つは、店舗のデザインを通じてブランドの世界観を打ち出すことで、店舗の売り上げはもちろん、ブランドの認知度の向上や口コミ効果にもつなげていることです。アップルストアは通常、街の目抜きのラグジュアリーなブランドが並ぶ通りに出店することが多く、アップルのブランド力向上に寄与しています。

2つめは、体験型の店舗であることです。アップルストアは体験できる端末が多いことが特徴の一つで、例えば2018年4月にオープンしたApple新宿ではAppleWatchなど90種類以上の製品を実際に手にして、アップル製品で実現できることが体験できます。

地域のコミュニティをめざす

アップルは実店舗の展開を通じて地域の教育のコミュニティづくりを目指しています。
アップルは次のように述べています。

「すべてのAppleの直営店の核にあるものは、地域社会の人々が互いにつながり、学び、それぞれの創造力を解き放つために集う場所を提供することで、教育や発想を刺激したいという思いです。」

Apple新宿においても、アートやデザインなどを対象としたセッションを毎日開催、参加者はソフトの操作の基本から撮影までを学んだり、コーディングを教わったり、自身の制作中のプロジェクトを持ち込んでアドバイスを受けたり、共有スペースを使って仲間と作業したりできます。

企業規模、地域を問わずできるコミュニティづくり

体験型の店舗を目指すこと、そして地域の教育のコミュニティを目指すことは、企業の規模を問わず参考にできるのではないでしょうか。例えば地域の写真館が撮影教室を開く、事務機器販売会社が新しいワークスタイルを体験できるスペースを設ける、CDショップがライブコーナーを設けてアーティストのミニライブを開く、などです。

ネット通販によって、実店舗でのモノ売りはますます厳しくなるでしょう。実店舗で体験できる、学べるコミュニティづくりを目指すことが、自社のブランディングにつながるでしょう。

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