Case Study

100年企業に学ぶ愛されるブランド ~虎屋、カルピス~

投稿日:2016年7月11日 更新日:

虎屋

現在日本における創業100年以上続く長寿企業は、なんと全国に約2万6,000社(※)。比較的小規模な企業が多い中で、誰もが知る大企業も少なくありません。今回は、100年企業がどのようにしてブランドを守り続け、変革しているのか、大切なことは何かを紹介していきます。

※帝国データバンク「長寿企業の実態調査」(2,013年)より

ブランド・プロミスは変えてはいけない顧客との「約束」

ブランド構築の目的とは、企業が長期的に経営を安定させるためです。一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会では以下のように定義しています。

価格競争に巻き込まれずに、少しでも高く、少しでも多く、あなたの商品やサービスをお客さまに買ってもらうことで、企業の利益を増やし、長期的に経営を安定させていくため

(出典:「社員をホンキにさせるブランド構築法」同文舘出版)

企業が経営をしていると、うまくいっている時もあれば、うまくいかない時もあります。うまく行っている場合はそのまま進めればいいのですが、悪くなるといろいろ変えてみようとします。そこで問題が生じることがよくあるのです。この時に決してやってはいけないことが「ブランド・プロミス」を変えることです。

ブランド・プロミスとは、企業が消費者・顧客に届けているメッセージの中で「約束していること」です。もし変えるのであれば、新しいブランドを立ち上げる必要があります。次からこのブランド・プロセスを守りながら、時代に合わせてさまざまな変革を起こしてきた「虎屋」について紹介します。

ブランド・プロミスを守りながら新たな取り組みに挑戦 ~虎屋~

夜の梅

室町時代後期に京都で創業し、約480年以上の歴史を持つ和菓子の老舗「虎屋」。その主力商品といえば羊羹です。「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」、この経営理念の実現に向け、古くからの伝統の味を社員一丸となって守り続けています。

しかし、伝統を守るだけではありません。今の時代の人においしいと言ってもらえるために、変化することをいとわないのです。羊羹にしても、時代と共に小さいサイズが好まれる中、どうすればお客さまに喜んでいただけるか?若い人にはどうすれば食べてもらえるのか?高齢のお客さまが食べやすい形やパッケージは?常に研究と改良を重ねています。

黒川社長が常に社員に伝えていることは、「大切なのは今だ」ということ。「昔から味を変えていない」というと、「それは素晴らしい」と言われますが、どんなに昔の味を守ってもおいしくなければ意味がありません。大切なのは今の人に「おいしい」と言ってもらえること。そのためには味を変えることもいとわないと言うのです。

その一つの取り組みが「TORAYA CAFÉ」です。
TORAYA CAFÉのコンセプトは
「『とらや』のあんを使って自由で新しいお菓子の世界の提案する」
というもの。現在、都内4店舗を展開し、若い女性を中心ににぎわっています。

さらに、「ようかんを世界に」というスローガンをもとに、海外への取り組みも行っています。すでに30年以上も前からパリに出店しており、中東では現地で食べ慣れているデーツ(ナツメヤシの実)と食感が似ていることもあって非常に人気があるといいます。
こうして虎屋は「ブランド・プロミス」を守りながら、今を見つめて挑戦し続けているのです。

toraya-cafe

経営戦略から一貫したブランド戦略

ピラミッド図

(出典:「社員をホンキにさせるブランド構築法」同文舘出版)

ブランド戦略は、経営戦略から一貫して立てることが重要です。最初に、自社がどの市場で勝負をするのか、といった経営戦略が土台となり、次にそれを達成するために「何を、どこで、誰に、いつ、どう売るか」といったマーケティング戦略を立てます。その上で、自分達の商品やサービスを差別化するために、付加価値を付け、顧客に浸透させていくといったブランド戦略を立てていきます。この軸をブラさず一貫して続けることが、ブランドを長く継続させていくためカギとなるのです。

この、経営戦略から一貫したブランド戦略について、誰もが一度は飲んだことのある「カルピス」を参考に紹介していきます。

創業者のビジョンをブラさずブランドを育てる ~カルピス~

カルピス

(出典:http://calpis.jp/top.html

カルピス社は1917年に創業し、1919年日本初の乳酸菌飲料「カルピス」を発売。以来「カルピス」は100年以上もの間愛され続けているブランドです。

創業者である三島海雲(かいうん)は、大阪府箕面市にある教学寺の三男として生まれました。25歳の時仕事で内モンゴルを訪ね、そこで当地の遊牧民が毎日のように飲んでいた酸っぱい乳を飲んだところ、そのおいしさと健康効果に驚きました。このときの酸っぱい乳が乳酸菌で発酵させた“乳酸”でした。

日本に帰った海雲は、その頃すでに始めていたヨーグルトよりも、今までにない健康で体に良い物を多くの人に提供しようと思い、内モンゴルで製法を学んだ乳酸の研究を重ね、1916年に、乳酸菌で発酵させたクリームを商品化した「醍醐味」を発売。その後「醍醐味」を改良しおいしく体に良い飲み物として開発したのが、乳酸菌飲料「カルピス」です。

海雲は「カルピス」の本質をこう語っています。

・おいしいこと
・滋養になること
・安心感のあること
・経済的であること

カルピス社は「カルピス」の発売以来、商品は近年までほぼ「カルピス」のみでした。しかし、決して新規事業の展開に消極的だったわけではありません。基準となるのはただ一つ。創業者のビジョンにあっているかどうかです。このビジョンをブラさずブランドを育てているからこそ、「カルピス」が日本国民に愛されるブランドとなったのです。

現在カルピスのブランドサイトには「私たちがお約束すること」として、以下のメッセージが掲げられています。

私たちは、「カルピス」の研究を起源に持つ
乳や乳酸菌などを扱う微生物応用技術等を
活用した素材や商品を通じて
お客さまの心とからだの健康に役立ち
社会に貢献します。

ここにも海雲のビジョンが込められているのです。

いかがでしたでしょうか?
時代と共に社会的環境は大きく変わります。企業にとって必ずしもいい時ばかりではありません。そのようなときこそ、これらの100年企業が大切にしてきたように、ビジョンやブランド・プロミスをブラさず顧客に提供し続けることが重要なのです。

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