便利でロジックな「フレームワーク」に潜む落とし穴 ― その3― (前編)

さて今回は、私がクライアントのコンサルティング支援をする際にいつも気をつけている
“3つのポイント”の最後となる「論理の落とし穴」についてお話を進めて参ります。
“論理”と言うと、なんとなく固苦しい言葉に聞こえてしまいますが、
難しく考えず“理屈”と置き換えて理解してみてください。

まず事象間の「論理」を知る

脳の思考停止をさせずキチンと事実情報を集めてゆくと、ある程度の現状把握ができて、
どの様な問題が起きているのか「推測」が可能となり、今後解決してゆくべき課題の最善方法となる「仮説」が立てやすくなります。
つまり、幾つかのフレームを使いながら丁寧な情報収集と整理を進めることで、
事象間の「論理」を補完する機能が働き、他人に対し説得力が増す「仮説」が成り立ちます。
したがいまして、まずは事象間の論理(それぞれの理屈がどのようにつながっているのか?)を知ることが仮説構築に必要なステップとなります。

説得力のある「仮説」が大事

事象間の論理を知ることで推測がしやすくなり、その結果、説得力のある仮説が形成できます。
人は説得力のない仮説にはなかなか納得せず、仮にそれが素晴らしいアイデアや独創的で魅力的な発想であっても、
簡単に首を縦に振ってはくれません。
これは上司や部下、取引先との関係でも言えるでしょう。
会社は従業員の思い付きの発想に意思決定はもちろん、投資はできません。
なので、なぜそのアイデアが良いのか誰が聞いても納得できる理由が必要となります。
そこで、論理の組み立てが上手にできていると、他人は耳を傾け真剣に考えてくれます。
ただし、ここで誤解をしてはならないのが、仮に立派な論理が構築できたとしても、それが必ず受け入れられる保証はありません。
例えば、新規事業の提案やマーケティング・プラン、ブランド戦略などを論理的に設計しても、
資金が無い、人手が無い、ノウハウが無いなど、多くの企業はやりたくてもできない環境にいることが現実です。
なので、それを承知の上で今できることは何かを探ることが、意義ある仮説構築になるかと思います。

「論理の落とし穴」を知る

繰り返しになりますが、幾つかのフレームを使い時系列にまとめていきながら事象間の論理を把握すると、
説得力のある仮説が組み立てられます。
その仮説をベースに戦略を組み立ててゆきますが、実はここに大きな落とし穴が潜んでいます。
それは、市場における同質化です。
同質化を避け価格競争からの脱却を図るために戦略を組んでいるのに、
結果同質化を生む要因の一つには、論理的に導き出された答えをそのまま戦略化させてしまうことがあります。
あれ?論理は大事なはずでは?と、思う方もいるかと思いますが、
その背景に競合他社も定石の環境分析や市場・顧客動向の分析を行いどこに勝ち目があるのかと精査してゆく結果、
どこもかなり近い答えが出てくるということがあります。
すなわち、各社が同じ成功要因に向かって同じことをしようとする結果、
市場では同質化が進み価格競争が激化。
そのため、企業同士の体力勝負となってしまい、弱者は疲弊してしまうという理屈です。

後編に続く

後編:「だから、ブランドが重要」、「仮説創造力でスモール・イノベーション」

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