仮説創造力による顧客提供価値の設計 その2

新年明けましておめでとうございます。2019年も昨年以上に活躍できる年にしたいと思っています。その中の一つに、昨年よりスタートした、特許庁所管のINPITでは、「ブランド専門家」として認定され、各都道府県にある知財総合支援窓口を通じ、多くの企業様のブランディング支援を行ってきました。また、厚生労働省所管のJEEDとの取組では、営業パーソンの生産性向上のための養成講座の講師を担当しており、単なる学術的な理論でなく、より実践的なマーケティングスキルを身につけて頂き、自立自走型の営業パーソンを目指すカリキュラムを設計しております。この様に、通常のコンサルティング業務以外にも国策と連携し、ブランドやマーケティングを軸とした支援活動を今年もより多く取組んでゆきたいと思います。

さて、今回のコラムですが、前回に続き、仮説創造力による顧客提供価値について書き進めて行きたいと思います。前回、顧客提供価値を仮説創造する過程において顧客のニーズを発見する方法、また顧客の本質的欲求を探る手段に「不の解消」フレームがあるとお伝えしました。これは決して難しいものではございませんが、むしろこれが顧客提供価値を設計するのにどう関係するかというのが重要かと思います。
企業はどうしても自社の商品を自分の視点で美化し、販売しようとする傾向が強く、また、商品そのものがニーズだと思っている企業が多々ございます。この「不の解消」フレームは、顧客の本質的な欲求とニーズをあぶり出すフレームで、それを知ったうえで、企業はどのように商品価値ではなく提供価値を設計するべきかを考える流れとなります。

そもそも“顧客”は誰ですか?

コンサルティングのご相談される企業様に、御社が商品を提供しようとしている顧客(ターゲット)は誰ですか?とお訊ねすると、実際、言葉に詰まる企業様が非常に多く、何となく分かっているけど、明確に定めていないケースがほとんどです。ターゲットも無く、うちの商品は良いから売れるはずなのに売れないと悩む企業様には、まずターゲットを定めるようにお伝えしております。その時にまだぼんやりしていても、考えて行く間で明確にできることも多々ありますが、伝統的なマーケティング手法にSTP理論があります。この理論を使ってターゲティングを定めるのも有効かと思われます。

ターゲットが思う「不」とは

自社が提供したい顧客(ターゲット)が明確になったところで、今度はそのターゲットが思う自社のサービスに係わる「不」をあぶり出す作業に移ります。「不」とは、不安、不便、不信、不快、不備、負債などから生じる不満のことで、ターゲットは自社が提供する類似した商品やサービスについてどのような「不」を、どのような時に感じているかを整理する作業です。
例えば、コーヒーを飲みたいと思った時に、近くのコンビニはいつも並んで会計に時間が掛かってやだな~と不快に思ったり、スタバのコーヒーが飲みたいと思っても近くに無いな~と不便に思ったり、過去に一回も買った事のないどこかのコーヒーだと美味しいのか不安だったり、人は色々と「不」があります。これらをまずは整理して行きます。

“だったらいいな~”を考える

この「不」を発見したら、次にその「不」がどうだったらいいのか、そのターゲットになりきって考えて行く作業になります。例えば、ひき立てのコンビニコーヒーを飲みたいが、レジがいつも並んで待たされることに不快だと思う人は、コーヒーメーカーの脇にセルフでパスモやクレカで会計が出来る様にしてくれればいいのになぁ~と、考える。そうすれば、他のものを買う人と一緒に並ばず、クイックスルーできて、待たずに済むと考えるでしょう。
この方のニーズは、コーヒーではなく、待たずに簡単に手ごろなコーヒーを飲みたいというニーズです。したがって、美味しいコーヒー豆で、ひき立てのコーヒーが提供できることは、
どこのコンビニも行っているいたって普通の商品・サービスであり、それだけではお客様はお店に来てくれないのが現実です。

このように、商品そのものの品質や性能にこだわり、強調したい企業様は非常に多いです。がしかし、同じような商品やサービスを提供する競合が多い市場では、単なる商品の提供ではお客様の「不」を解消し切れていないのが現状です。なので、まずはターゲットの「不」を知ることから始め、そしてその「不」をどのように解消すべきか仮説創造することが重要となります。
次回、企業が顧客提供価値を創造するにあたって、顧客の「不」をどのように解釈し、どのように設計すれば良いのか書き進めたいと思います。本年もよろしくお願い申し上げます。

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