セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Case Study

終活ビジネスで新たな市場を開拓!「イオンのお葬式」が独自のサービスでブランドを確立できた理由とは?

投稿日:2016年9月16日 更新日:

老夫婦

ここ数年、よく耳にするようになった「終活」。いわゆる「人生の終わりのための活動」のことを言い、生きているうちに自分の葬儀の準備などを行う高齢者が、年々増加しています。終活に早くから注目して、終活ビジネスに参入したのがイオンによる「イオンのお葬式」です。今回は、なぜイオンが終活にビジネスチャンスを見いだして成功することができたのかを解説します。

拡大する終活ビジネス

矢野経済研究所の葬祭ビジネス市場に関する調査によると、終活という言葉が流行りはじめた2010年時点での葬祭関連合計は2兆2,189億円で、その中でも終活ビジネス関連だけで、1兆円近い市場規模だと言われていました。そして、2013年には、1.7兆円規模まで市場が成長しています。

最近では、葬儀や埋葬、供養など終活に関する専門の展示会も開かれていて、2016年8月22日から3日間行われた「エンディング産業展2016」では3日間で22,000人以上が集まりました。
エンディング産業展は、葬儀、埋葬などだけでなく、花業界、石材、仏壇業界、寺院業界、流通・IT業界など、さまざまな業界が参入しているのが特長で、今年に続き2017年も開催されることが決まっています。

エンディング産業展

こうした終活ブームの背景として、核家族化に伴い、家族へ迷惑をかけたくないという思いや、人生の最後の場面もポジティブに捉えたいという死生観の変化が指摘されています。
そして、高齢化社会を迎える中で、年々死亡者が増加している(東京オリンピックが開催される2020年には、143万人に増加することが予想されている)こと自体も市場拡大の要素です。

イオンのお葬式

イオンのお葬式

(出典:http://www.aeonlife.jp/

2009年からサービスを開始した「イオンのお葬式」。その名前のとおり、イオンが手がける葬儀事業です。イオンはあくまで葬儀社との仲介役ですが、140項目の「葬儀サービス品質基準」に関する研修を受け、修了した葬儀社のみを「イオン特約店葬儀社」に認定するなど、イオンが間に入ることにより、業界のしきたりに固執しない独自のサービス品質が整備されています。

イオンのお葬式の価格

(出典:http://www.aeonlife.jp/

料金は、火葬式が19万8000円、1日葬が34万8000円、家族葬が49万8000円など、セットパックのプランを用意していて、明確な料金体系をウリにしています。

イオンがこうしたサービスをはじめるきっかけとなったのは、葬儀業界自体の慣習にありました。発案者であるイオンリテールイオンライフ事業部事業部長の広原章隆氏はこう語っています。

「8年前に父が亡くなり、近畿地方の実家で自宅葬を営みました。業者から最初に提示された金額は180万円、ところが葬儀後の請求額は追加料金が発生して250万円に増えていました。やむをえず支払いましたが違和感が残った」。その経験を職場で話すと、同僚から「そうそう、仕方なく支払うけど葬儀料金はおかしいよね」という声が次々に上がった。

契約書がなかったり、追加で料金がかかっても言いづらかったりと、通常のビジネスモデルでは当たり前のことが、葬儀業界ではうやむやになってしまうこともしばしば。発案者である広原氏の提案が社内で共感を呼び、サービスを開始したイオンのお葬式。「終活」という言葉も広がる中、サービス開始から4年経った頃には、会員が年間2万件に増加。市場拡大を踏まえ、2020年までに、会員数20万人まで拡大するという目標を掲げています。

イオンの終活フェア

終活フェア

イオンでは、「終活フェア」をイオンモール内で定期的に開いています。終活フェアでは、葬儀だけに限らず、介護や遺言、お墓の選び方について、専門家がセミナー形式でのアドバイスを行っています。
さらに、

・各種ご相談コーナー(相続・保険など)
・写真撮影会
・棺の体験会
・音楽葬の生演奏
・エンディングノートのプレゼント

など、気軽に寄れて終活について考えられる工夫がされていて他のサービスと同じような販促活動を行っています。

棺の体験会

葬儀に対するニーズが多様化している中、「音楽葬であげたい」「できるだけ低価格にしたい」など、お寺や葬儀社へ相談しづらい場合も多く、イオンのお葬式は、そうした「終活」の受け皿になっているのです。

このようにイオンのお葬式は、「明確な金額設定」「相談しやすいためトラブルが少ない」「他のサービスと同様の販促活動」といったいままでの業界の常識を覆したことが成功の大きな要因と言えます。

まとめ

終活とイオンのお葬式について、見てきました。冠婚葬祭について考え方が変化しているということは、イコール市場が変化していっているとも言えます。イオンのお葬式が市場の変化に対応できたのは、発案者である広原氏自身が葬儀業界の課題と顧客のニーズを理解していたからでしょう。自分が疑問を持っているところに、新たな商品・サービスのきっかけがあるかもしれません。是非、参考にしてみてください。

関連記事

M&Aによるブランドシナジーを考察 ーカインズによる東急ハンズのM&A【前編】

都市部を中心に雑貨販売の店舗を展開する東急ハンズ社が、郊外・地方を拠点にホームセンター店舗を運営するカインズ社に傘下入りすることで合意しました。 東急ハンズ、カインズ傘下に…将来は名称も変更へ 東急ハ …

ローカル線は廃線の道を辿るしかないのか?銚子鉄道から学ぶ、弱者の生き残りマーケティング戦略

地域経済の足となってきたローカル線ですが、一時的なローカル線ブームも落ち着き、人口減少に伴う利用者不足の影響により、廃線となる路線が再び増えてきています。 石勝線夕張支線が126年と5か月の歴史に幕… …

星のや軽井沢

星野リゾートのブランディングから学ぶ!〜理論の実践とは〜

(出典:http://www.hoshinoresort.com/resortsandhotels/hoshinoya/karuizawa.html) 「リゾート運営の達人」をコンセプトに掲げ、数々の …

「イノベーションのジレンマ」を「両利きの経営」で乗り切る~コダックVS富士フイルムの事例に学ぶ

時として業界をリードする優秀な大企業が、革新的な技術を持った新興企業になすがままに敗れ去ることがあります。ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授は、このことを「イノベーションのジレンマ」と …

売上7倍

売上を7倍にした「フルグラ」から学ぶ!マーケティングの目標設定とは?

マーケティングやブランディングが成功しているかどうかを測るためには指標が必要です。今回は、ブランド構築の最後のステップである「マーケティングの目標設定」について事例を交えながら解説します。 マーケティ …

サイト内検索