ブランディング応用

【価値のリ・デザインとは!?】第5回公開シンポジウムレポート【後編】

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シンポジウム

前編に引き続き、昨年2015年10月24日に行われたブランド・マネージャー認定協会主催の「第5回公開シンポジウム」のレポートの模様をお伝えします。

リ・デザインが世の中を変えていく

シンポジウムの最後は、有識者9名によるパネルディスカッションです。パネルディスカッションでは、「リ・デザイン」をテーマに各人の見解を聞くことができました。

田中洋 中央大学大学院戦略経営研究科教授

世の中に新しい職業が生まれていく中で、価値のリ・デザインが重視されています。今回のコンテスト発表を見ながら、価値のリ・デザインとは「商品サービスの持っている意味を変えること」と「実際のアクションを変えていく」という2つの側面があるように感じました。たとえ全く同じ商品だとしても、株式会社スプリングにように「発展途上国の支援」というテーマを加えることで、アクセサリーの中に新しい意味を付け足すことができます。
また今の時代は、マイクロイノベーションも必要です。「新製品」と「既存の商品を改良すること」の中間に「マイクロイノベーション」があります。今や、大きなイノベーションを起こす機会はほとんどなくなりました。そこで、最近の例だとiPhoneのように、「動画が前機種よりも綺麗に撮れる」などのプチイノベーションをして、既存顧客の関心をつなぎとめる工夫が求められています。

小池玲子 クリエイティブハウスR-3代表

私は外資系の広告代理店で働いていたこともあり、日本企業にはブランディングが育っていないイメージを持っていました。日本企業は外国企業に比べると、「あ・うん」の呼吸でビジネスを進めている感覚があります。しかし今回のコンテスト発表を見ながら、日本企業でも論理的な目標設定がなされるようになったと感じました。
最近のトピックで、商品のリ・デザインに注力していると感じたのは「三井物産」です。スローガンやロゴを変え、さらには安定していた株価をあげることで、世界的に三井物産の価値を認めてもらわないといけない立場に自らを急き立てました。企業は国内にとどまらず、海外でも認めてもらわないといけません。事業内容は変えられないかもしれませんが、外側から見えるブランドイメージを変えることは可能です。

阪本啓一 株式会社JOYWOW代表取締役会長

受賞された事例には、サムシングエモーショナル(感情の絆)が共通しています。たとえば、究極のアナログプロダクツを実現した株式会社スプリングでは、「Tribaluxe」というアクセサリーでしか手に入らない、インドの人たちとの感情の絆を感じることができます。今回の事例を見て、やはりこれからは、サムシングエモーショナルの時代であることを再確認しました。
さらには各事例を見ながら、マイクロインタレストはカラーレンズをつくることに等しい、と考えていました。自社の商品サービスに、後から付加価値を付けて、さまざまな色へと染めていくことは楽しいことなのです。たとえば、「発展途上国のためにサービスをつくった」とはじめから言われても、消費者は楽しくありません。今回の「Tribaluxe」のように、結果的にインドの人たちを支援できた、などと新しいレンズが提供されれば、消費者の心が動きやすくなります。禁欲的なのは面白みに欠けるため、企業はカラーコンタクトをつくるイメージで、商品をつくればいいのではないでしょうか。

パネルディスカッション

榛沢明浩 株式会社トライベック・ブランド戦略研究所 代表取締役

発表された各事例は協会の同じフレームワークを使っていますが、異なる結果を出しています。たとえば各社では3C分析を使っていますが、「自社×顧客の部分」の枠内だけを考えるのではなく、そこから自社で実現可能なことを生み出していることがわかります。つまり、既存のフレームワークから自社のカラーを出せるように工夫を加えているのです。ブランディングを行う上で、既存のフレームを活かしてオリジナリティを出す視点はポイントになります。
また、今回のコンテストで発表されたような中小企業にとって、ブランディングは有利に働きます。なぜなら大手企業では「予算が余ったからブランディングをしよう」などと、ブランディングが片手間になることが多いからです。また大手企業では、宣伝部など特定の部門だけがブランディングを担当しがちなため、実行しようとするときに小回りがなかなか効きません。中小企業は、全社でスピード感を持ってブランディングに取り組めるメリットがあります。

岩本俊幸 ブランド・マネージャー認定協会代表理事

今回からはじまったブランディングコンテストを開催した理由は、当協会のフレームを活かした事例を正しく評価し、成果を形として学ぶことです。全部で10社からの応募があり、どれも素晴らしい事例ばかりで、選出することが難しかった背景があります。今回、このシンポジウムを通じて学ぶ場を形成できたので、ブランディングコンテストを今後も継続していきたいと考えています。
またコンテスト発表を見た感想として、株式会社スプリングに代表されるように、ブランディングを努力している会社は、会社の取り組みに厚みが増すのだと感じました。もちろんブランディングを成功させるためには、しっかりとした商品力があるかどうかがポイントです。株式会社スプリングは独自の商品力を活かし、リ・デザインに成功した例だと言えるでしょう。

水野与志朗 ビーエムウィン・ブランディングオフィス代表取締役社長

今回選ばれた事例の全ては、リ・デザインするためのヒントを自社で思い付いていますが、自社外からヒントを得て、リ・デザインされた商品もあります。たとえば、過去に僕はあるシャンパンのブランディングを行っていました。試行錯誤したのですが、はじめの1年は全く認知されず、暗礁に乗り上げてしまったのです。ちょうどそのとき、イタリアのバールで見かけた若い女性のシャンパンの飲み方にヒントを得て、商品をリ・デザインすることができました。これは、海外という外側からヒントを得た例です。
また企業側は、常に消費者とフレッシュな関係性を保つことが求められています。なぜなら消費者との関係性が陳腐なものになれば、ブランドは老化していくからです。鮮度を保つためにも、消費者に新しいブランドの側面を見せていくことが必要となるでしょう。そこにブランディングの本質があります。

パネルディスカッション

佐々木 研一 株式会社イノベーションゲート解析研究員(マネージャー)

企業が3C分析などで自社を理解する方法は、心理学でよく使われる「自己理解」と似ているようです。日本では、就職のタイミングなどでしか自己理解をする機会がありませんが、自分を客観的に見ることで、何ができるのかを理解することができます。同じように、自社の強み・弱みを詰めて考えることで、自社で実現可能なことが見えるようになります。なので、ネガティブな意見も含めて意見を集め、自社を深く理解することがブランディングのポイントです。
また、従業員が自社商品に対してプライドを持つことで、消費者に価値あるものを提供できます。そのためにも、従業員に自社商品の付加価値を感じてもらう必要があります。そこで、価値のリ・デザインを活かすことができるのです。リ・デザインをすることで、会社が新しく進むべき方向を示し、結果として自社商品の付加価値につながります。

徐 誠敏 名古屋経済大学経営学部准教授、静岡産業大学情報学部非常勤講師

表彰された事例を見て、競合店とは違う視点でブランディングをしていくことが大切だと感じました。たとえば、りんごの木では「お客様の人生設定」をテーマにしています。これは他の競合店では、なかなか思いつかないでしょう。またブランディングには、「言葉力」と呼べるものが必要です。「自社は◯◯だ」というコーポレートメッセージを社内にしっかりと浸透させることができるのか、によって会社の進むべき方向が変わります。この言葉力を設定することは、会社の規模を問わずにできることです。
私は日本に来て足掛け15年目ですが、海外の企業と比べて、日本企業は「社員を大事にすること」に力点を置いているように感じます。社員が活き活きとして働いていれば、消費者にも社員が会社を大事にしていることが伝わり、購入意欲を掻き立てることができるはずです。

江上隆夫 有限会社ココカラ 代表取締役

ウォークマンが音楽の聞き方をリ・デザインしたように、既存のモノよりも大きくて優秀なリ・デザインされたモノが出現すると、世の中が変わっていきます。近年では、携帯電話をリ・デザインした「iPhone」が、その代表と言えるでしょう。世の中にはときどき、iPhoneにように大きなモノが生まれヒットしていきます。また現在の日本は、消費が低調したままの社会です。その中で消費者は自分を燃やすことにお金をかけるため、消費者がワクワクするかどうか、という消費者の欲望に焦点を当てることが重要です。消費者の欲望を発見するためにも、価値のリ・デザインが意味を持ってくるのだと考えます。
また、ブランディングを行うときに計画は大前提ですが、中身を伴っていないケースも多々あります。大賞を受賞した株式会社スプリングのように、リ・デザインを推し進めつつ、一歩一歩確実に進める姿勢が必要です。

まとめ

「価値のリ・デザイン」というテーマについて深く考えさせられる会となりました。今秋に開かれる第6回シンポジウムも昨年に続き、ブランディング事例コンテストが行われます。ブランディングで悩んでいる方も参考になることでしょう。

※2016年10月1日に開催される『第6回公開シンポジウム』
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第6回シンポジウム

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