ブランディング応用

【価値のリ・デザインとは!?】第5回公開シンポジウムレポート【前編】

投稿日:2016年8月12日 更新日:

シンポジウム

今回は、昨年2015年10月24日に行われたブランド・マネージャー認定協会主催の「第5回公開シンポジウム」の模様をお伝えします。

会場の東京国際フォーラムに集まっていたのは、実際にブランディングに携わるデザイナーや、マーケティング担当者などを中心に、企業の経営者からブランディングに興味のある学生の方まで幅広い層でした。

「〜ブランディングの現場から〜 ブランド最前線 価値のリ・デザインで生み出す新市場」をテーマに、基調講演やブランディング事例コンテストで選ばれた実践事例の発表、パネルディスカッションなど大いに盛り上がりを見せたシンポジウム。今回の内容は前後編でお伝えします。

価値のリ・デザインとは

阪本氏

ブランド・マネージャー認定協会の評議員阪本啓一氏による基調講演「ブランド最前線:価値のリ・デザイン(再定義)で生み出す新市場」。
ソニーの「ウォークマン」が「レコード」という録音再生機をリ・デザインしたように、最近では既存の商品サービスをリ・デザイン(再定義)することが重要視されていると語る阪本氏。

そして、「価値のリ・デザイン」を、大きく3つの視点から説明しています。

(1)マイクロインタレスト

高度経済成長期とは違い、現代では、「みんなが欲しがる」といった文言では訴求効果が得られません。そこで、マイクロインタレストに注目します。つまり、消費者の細かなインタレスト(興味関心)がどこにあるのかを考え、どのインタレストに的を絞るべきかを考えていきます。

(2)ブランドの寿命は短い

モノを売るためには、まず150人の消費者の心を掴むことが必要です。しかしブランドの寿命は短いため、150人の消費者を振り向かせることのできるメディアを賢く選択することが求められています。

(3)ドヤリングの時代

マイクロインタレストである現代の時代背景と、ブランドの寿命の短さを上手に活用しているのが、バルミューダ株式会社の販売しているスチームトースター『BALMUDA The Toaster』です。バルミューダでは、「パンを美味しく食べたい」という消費者の気持ちにフォーカスするのではなく、「バルミューダのトースターを使う自分が好き」「SNSでドヤリングしたい」といった消費者をターゲットとしています。

講演では、その他にも国内外のリ・デザインの事例が紹介されました。顧客から商品・サービスへの興味関心を持ってもらうためにも、自社ではどのような価値を提供できるのか、という「価値の蒸留」を行うことが不可欠です。

阪本氏は、これからのリ・デザインとして、高齢化社会の進む日本における「高齢者施設のリ・デザイン」や、人のぬくもりを感じる「アナログプロダクト」などの可能性を提示していました。

ブランディング事例コンテスト 〜受賞発表と事例紹介〜

表彰

ブランド・マネージャー認定協会で学んだ知識体系が、現場でどう活用されているのか。 実際に優れた成果を出している事例の表彰と発表です。

ブランドに必要な情緒的価値や独自性、経済効果や社内浸透の度合いなどの視点で評価が行われ、その結果、2015年度の大賞に「株式会社スプリング」とブランド・マネージャーである「株式会社オレンジフリー」、また準大賞は「株式会社りんごの木」「株式会社JACKカンパニー」が選ばれました。

【準大賞】美容室をリ・デザインする〜株式会社りんごの木〜

りんごの木

長野県長野市を中心に美容室7店舗を経営している「株式会社りんごの木」。
アートディレクターである今井まどかさんによる発表です。

課題

りんごの木では、
「他の美容室との差別化ができない」
「スタッフ教育での判断基準が不明確」
などの課題がありました。そして、ブランディングの大きな動機となったのが、会社とスタッフの方向性を明確にしたいという想いです。

スタッフはもちろん、お客様といっしょに作り上げたブランド

「40周年感謝プロジェクト」として1年以上かけて行ったブランディング。まず、自社をリ・デザインするにあたってスタッフにりんごの木で働くことについてインタビューを行い、お客様にも「りんごの木を利用する理由」を聞くアンケートを実施。

それらを分析した結果、わかったのは、
機能的価値として「カウンセリングが丁寧」
情緒的価値として「アットホーム」「70歳になっても通いたい」
といった自社の強みです。

そこで、コーポレートメッセージとして「あなたの人生を髪から美しく」を掲げ、ロゴやキービジュアルの制作に取り掛かります。 キービジュアルでは3世代で利用してくれているお客様をモデルとし、世代を超えて通える美容室であることをアピールしました。

ブランディングの効果

ブランディングを実施した結果、お客様から「家族で通いたい」と言われたことや、スタッフがブランド・アイデンティティに沿った行動を行うようになったことなど、成果を実感しています。完成したロゴはスタッフに丁寧にプレゼンし、ロゴの入ったパンフレットやマグカップを無料配布するなど、社内のブランディングにも努めました。その結果、スタッフからブランド・アイデンティティに沿った施術メニューの提案もありました。

【準大賞】居酒屋をリ・デザインする〜株式会社JACKカンパニー〜

株式会社JACKカンパニー

静岡県浜松市で居酒屋『たんと』を3店舗経営している株式会社JACKカンパニー。
ブランディングの中心にいた同社の営業本部長である越川淳さんによる発表です

課題

『たんと』では「スタッフの入れ替わりが激しく、誇りを持って働く人が少ないこと」が課題でした。そこで業績の向上、やりがいづくり、さらには顧客満足度を追求するためのビジネスへと転換することにしました。よって、「働く人が自分らしさを追求すること」もブランディングの目的になりました。

地元愛から生まれたブランド・アイデンティティ

居酒屋などの業態では、同業と競争することで価格競争に巻き込まれてしまいます。まずは3C分析とポジショニングを行うこととなりました。そのとき、浜松名物のうなぎ屋など、全くの異業種をポジショニングしています。たとえ異業種だとしても、地元で誇りを持って成長している企業と一緒にブランディングを進めることにしたそうです。その結果、「遠州の誇りを感じてもらいたい」という想いを閃きました。
そこからブランド・アイデンティティとして「遠州人が自慢したくなる活気溢れる、元気な酒場」が決定。

このブランド・アイデンティティが、
・お客様に提供するメニュー
・スタッフ教育
・社内での会議

など全ての判断基準のもととなり、スピーディーな判断につながっています。また、ターゲット層に常に意識してもらうことを目標とし、制作した同社のテーマソングを店内で放送することや、ロゴ入りのノベルティの無料配布を行いました。

ブランディングの効果

ペルソナを意識した年間計画にお金を使うことで、割引を廃止したにもかかわらず、既存店の売上高が5年連続で前年を上回る、うれしい結果となりました。スタッフがブランド・アイデンティティにもとづいた接客や販売活動ができるようになり、活き活きと働ける環境づくりに成功。 また、社内研修では外部講師を招いて、好感を持たれる身だしなみやメイクなどを学び、遠州人に自慢されるスタッフを目指しています。

【大賞】アクセサリーをリ・デザインする〜株式会社スプリング〜

株式会社スプリング

大阪に本社を構え、アクセサリーの製造・販売を行っている株式会社スプリングとブランド・マネージャーである「株式会社オレンジフリー」による発表です。

取締役である立花佳代さんと営業部長の荒谷博之さんが、「ブランディング後は環境が劇的に変化した」と語るだけあり、その道筋の困難さが伝わってきました。

課題

同社は2つの主力ブランドを仕分けることや価格競争からの脱却、売り込みの営業コストを押さえることが課題でした。そこで、「スピードはブランドを成長させるパワー」というテーマを設定し、理想論ではなく現実的に機能するブランドを作ることにしました。

ブランドへの評価につながった生産背景

3C分析などを行い、旬のファッションとリンクするアクセサリーを制作することが決定します。そして、「アーバン×トレンド、働くいい女の存在感」をブランド・アイデンティティとして掲げた「Tribaluxe」が、審査の厳しいパリファッションウィークの合同展示会である「THE BOX」に出展が決まりました。
これは、北インドの村で、住民にアクセサリーづくりのトレーニングを3年間行った生産背景と、「エンパワーメント」という商品づくりの考え方が評価された結果です。

ブランディングの効果

「THE BOX」への出展がターニングポイントとなり、大手百貨店や有名セレクトショップとの取引がはじまります。これにより、値下げすることなく販売でき、売り込まなくても売れるブランドへと成長しました。また、「Tribaluxe」の制作現場であるインドの村にも、電気が付く、室内で作業できるなどの変化が起こります。同社では、インドの現地の人とブランドを育てる喜びを感じているそうです。
加えて、ブランディングにより社内のベクトルがひとつになった結果、仕事の速度もあがり、競合他社から抜きん出ることができました。今後の活動としては、海外市場の開拓や、女性の地位向上などをはじめとしたインドの村への働きかけ、SNSなどを活用した企業メッセージの配信を予定しているそうです。

続きは、後編にてお送りいたします。

※2016年10月1日に開催される『第6回公開シンポジウム』
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第6回シンポジウム

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