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Case Study

中小企業にチャンス到来!女性活躍推進法を活かしたコーポレート・ブランド戦略 ー採用ブランディングにも欠かせないESG/SDGsを活かしたサスティナブル経営【前編】

投稿日:2022年2月10日 更新日:

女性の社会進出は既に当たり前の時代となりましたが、2022年4月からは、公的にもその傾向を後押しすることになりそうです。

全面施行から5年の女性活躍推進法 中小企業への適用拡大でどう変わる?

2022年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画の策定や情報公表などを義務付けられる対象が現在の従業員301人以上の企業から101人以上の中小企業までに拡大します。
15年8月に成立した女性活躍推進法は、10年の時限立法として16年4月に全面施行されました。そこから5年以上経過した現在、女性の活躍は進んでいると言えるでしょうか。
女性活躍推進法は、女性が職業生活において十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するために、国・地方公共団体・企業の責務などを定めたものです。背景には、急速な少子高齢化の進展や、育児・介護と仕事の両立を可能とする多様な働き方への対応などがあります。
女性活躍推進法では義務の対象となる企業に対し、数値目標を含めた行動計画の策定やそれを都道府県労働局に届け出ることなどを求めています。
21年9月末時点における行動計画の届け出企業数は、301人以上の企業で1万6628社(届け出率97.0%)となっており、行動計画への取り組みが進んでいるとすれば、そろそろ成果が見えてくる時期と言えるでしょう。

まだまだ従業員に浸透していない行動計画

22年4月から中小企業へ対象範囲が広がることで、策定に取り組む企業も多いと思います。そもそも、同法が企業に求める行動計画とはどのようなものなのでしょうか。
ここでいう行動計画とは、企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行い、それを踏まえて策定することになっています。企業にとっては、計画期間、数値目標、取り組み内容、取り組みの実施時期などを具体的に盛り込む必要があります。
なかでも、必ず把握すべき基礎項目には以下の4つがあります。

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合※
  • 男女の平均継続勤務年数の差異※
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数など労働時間の状況
  • 管理職に占める女性労働者の割合※

印がついている項目は、雇用管理区分(正社員、契約社員などの雇用形態や事務職、技術などの職種)ごとに把握を行う必要があります。
この基礎項目以外にも、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」について、企業ごとに項目を選択し、把握した状況から自社の課題を分析して数値目標など定めます。
こうして策定された行動計画は、社内周知と外部へ公表することが義務付けられています。301人以上の企業では、それぞれ1つ以上、101人以上300人以下の企業は(22年4月以降)以下の項目から1つ以上選択して、情報公表を行わなければなりません。

21世紀職業財団の「男女正社員対象 ダイバーシティ推進状況調査」(20年度)によると、自社の行動計画の内容を知っている(「おおよそ知っている」を含む)従業員は、1万人以上の大企業であっても男性32.6%、女性40.9%と半数に満たないことが明らかになりました。この認知度は企業規模が小さくなるほど下がり、300人~499人規模の企業では男性16.4%、女性18.2%と8割以上の従業員が行動計画の内容を知らないのです。これでは、行動計画を策定した効果も期待できないのではないでしょうか。
女性の活躍に関する情報公表や他社の行動計画については、厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト」内の女性の活躍推進企業データベースにおいて検索して閲覧することができます。ビジネスパーソンの皆さんにはまず、自社がどのような数値目標を立てて取り組みを行っているのか、確認していただければと思います。

女性活躍推進法による雇用環境の整備は限定的

女性の活躍については、単純に管理職の割合だけで測れるものではありませんが、ひとつの指標として見てみましょう。20年に発表した厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、管理職に占める女性の割合(企業規模10人以上)は、部長相当職では8.4%(19年度6.9%)、課長相当職では10.8%(同10.9%)、係長相当職では18.7%(同17.1%)と役員を除く各管理職での数値は微増しているものの、女性活躍推進法の施行後において目覚ましい進歩があるとは言えません。
女性の管理職がなかなか増えない要因として、日本企業では管理職が年功的な処遇による場合が多いことがひとつ考えられます。遡れば1997年、改正男女雇用機会均等法の成立によって、募集・採用、配置・昇進などの女性差別が努力義務から禁止になりました(施行は99年)。その頃から女性の総合職採用が進んだことを考えると、まさにこれから女性管理職が増えていくタイミングと言えるかもしれません。
世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数」の21年版においても、日本は156カ国中120位(前回は153カ国中121位)と、先進国の中で最低レベルの状況を脱することができないままです。
一方、柔軟な働き方の広がりに関して言えば、行動計画に基づく雇用環境の整備というよりも、新型コロナウイルスによる感染対策としてテレワークの導入などが進んだ背景がうかがえます。

企業によっては行動計画のハードルを下げる懸念も

行動計画の内容は、男女雇用機会均等法に違反しない内容にする必要があります。募集・採用・配置・昇進などにおいて、女性労働者を男性労働者に比べて優先的に取り扱う取り組みについては、雇用管理区分ごとにみて女性が4割を下回っている場合など、一定の場合以外は法違反として禁止されています。
たとえば、「女性労働者を増やすために、女性を○名採用する」という目標は、募集しようとしている雇用管理区分において、すでに労働者に占める女性労働者の割合が4割を超えている場合は均等法違反になります。一方、募集しようとしている雇用管理区分において、女性労働者の割合が4割を下回っている場合はポジティブ・アクションの措置として均等法に違反しません。同じ目標でも、法違反の可能性は自社の状況により異なります。
こうした法律上のルールはあるものの、行動計画において必ず盛り込むべき数値目標の設定に関しては、最低限目指すべき基準は明確に示されていません。
そうなると、あえてハードルを課して高い目標を設定するまでもないと考える企業も出てくる懸念があります。形としては行動計画を策定・届け出をし、情報公表は行うものの、消極的な対応に終始すれば、女性活躍推進法で期待される行動計画の効果が期待できません。
22年4月から義務化される101人以上300人以下の企業においては、さらに人材リソースが限られた中で取り組みを行うことになるため、本気で行わなければ、負担が増えるばかりで形骸化するおそれがあります。

「えるぼし認定」制度で企業の取り組みは変わるのか

国としても、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良であるなど一定の要件を満たした企業に「えるぼし認定」制度を設け、さらに実施状況が優れたえるぼし認定企業に「プラチナえるぼし認定」を設けるなどして、行動計画策定に対して動機付けを高めようとしています。
えるぼし認定企業は、21年10月末時点で全国に1516社あります。認定を受けた企業は、商品や広告などに認定マークを付することができたり、公共調達の加点を受けられたりするなどのメリットが受けられます。しかし、企業が積極的な取り組みを誘発するまでに至っていません。
女性活躍推進法に基づく法令順守は必要なものですが、形だけでなく誠実に取り組むことで、柔軟で多様な働き方が広がり、優秀な人材の採用・定着にもつながります。
22年4月から対象企業が拡大されるこの機会に、経営者やマネジメント層が改めて女性活躍推進の重要性を認識し、積極的な行動計画の策定に取り組んでもらえることを切に願います。

(2021年12月28日 yahooニュース NIKKEI STYLE 佐佐木由美子氏署名 配信記事)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c0586c4f635d8b8ac4f438fa28744b508530973

昨今ではESGの概念も企業間へ相当広まってきましたが、株主総会での質問においても、株主からESGやSDGs、サステナビリティに関する企業としての取り組みや方向性についての質問は非常に多くなってきています。

もはやESGやSDGsの概念は企業経営に携わる人だけでなく、マーケティングや経営企画、IRに関わる人においても、不可欠な要素だと言えるでしょう。

特に上場企業でこのあたりについて能動的かつ主体的に対処する意思や姿勢が見えない企業は、もはや社会的に存在が許容されない時代になりつつあります。

そのような外部環境の移り変わりに対して、
「ESG?当社には関係ないことだ」
「そんなの金と時間のムダ」
という反社会的姿勢では済まされない時代であり、そのような態度をとる企業は、いくら現時点で業績が良くても、今後は投資家からの支持が得られなくなることで株価が下がります。

そして、そのうちステークホルダーの圧力によって業績にも影響が出てきてしまい、やがて業績の面においてもジリ貧になっていくことは間違いありません。

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