Branding Method

ブランドのベネフィット(便益)とは~「最強ブランド」ナイキから考える~

投稿日:2018年6月22日 更新日:

ナイキの店ブランド戦略論の大家デービッド・アーカーによると、ブランドのベネフィット(便益)には「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」「社会的ベネフィット」の4つがあります。この4つのベネフィットについて、アメリカのシューズメーカー・ナイキを例に考えてみます。

設立初期からみられる革新的なマーケティング手法

最初にナイキの歴史を簡単におさらいしてみましょう。
ナイキは当初、日本のシューズメーカー・アシックス(当時オニツカ)のアメリカ販売代理店に過ぎなかったということは意外に知られていません。

オレゴン州出身の若者・フィル・ナイト氏が、大学院で作成したレポート「日本の運動靴は、日本のカメラがドイツのカメラにしたことをドイツの運動靴に対しても成し遂げ得るか」のアイデアに夢中になり、日本の運動靴はアメリカ市場でも受け入れられるだろうと考え、日本のシューズメーカー・オニツカと販売代理店契約を結び、設立された会社でした。

後に開花する革新的なマーケティング手法も、創業初期からみられます。例えばナイキは、トップ・アスリートと独占契約し、自社製品を実際に使用してもらい、性能を保証してもらうことで、製品の宣伝につなげるいわゆる「エンドースメント」に力を入れていますが、設立当初から、伝説的ランナー・スティーブ・プリフォンテーンと独占契約を行っており、エンドースメントがナイキのブランドイメージ向上に貢献しています。

50年近く経っても先進的なロゴ「スウィッシュ」

ランニング文化を浸透させることで、シューズの売上を伸ばすというマーケティング手法も、初期から行っています。共同創業者として招いたビル・バウワーマンは、『ジョギング』という本を著して、当時マイナーだったランニング(ジョギング)文化をメインストリームに押し上げます。

ナイキは現在においても、ランニングを支援する計測アプリ「Nike+ Run Club」などを提供していますが、ランナーのすそ野を広げてシューズの売上に貢献するマーケティング手法は設立から一貫して行っています。

そして今でも革新的でクールだといわれるナイキのロゴ、いわゆる「スウッシュ」は1971年に商標登録されています。この洗練されたロゴは、「NIKE」の文字なしで単独で使われるほど、消費者に浸透、親しまれています。
なおブランド名などを隠したブランディングのことを「デ・ブランディング」といい、ナイキのロゴはその先駆けと言われています。デ・ブランディングには

・企業らしさを控えめにすることで、顧客により身近に感じてもらう
・ブランドが浸透しているタイミングで行うことで、新しさや先進的なイメージを伝えることができる
――という効果があるといわれています。

技術面でも優れたブランドに

ナイキはオニツカとの破談ののち、機能性に富んだシューズを自社で開発しています。靴裏のワッフルのようなパターンで吸収やグリップを強化した「ワッフルソール」や、ソールの中間部分にエアバッグを仕込んだ「AIR」などの技術です。こうした機能面により、ナイキは技術にも優れたメーカーとして認知されます。

そして周知のとおり、カリスマ的人気を誇るバスケットボール選手マイケル・ジョーダンとタイアップし、そのモデル「エア ジョーダン」を販売、爆発的な売上を挙げたこと、ヒップホップ文化のアイコンだったカニエ・ウェストとタイアップしたことなどによって、クールなブランドを確立、アディダスを上回る世界一のシューズメーカーに躍り出ました。

ナイキブランドから考える4つのベネフィット

ナイキのベネフィット
さて、ブランドのベネフィットですが、前述の通り「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」「社会的ベネフィット」の4つがあります。これをナイキのブランドに当てはめてみます。

機能的ベネフィット

機能的ベネフィットとは商品やサービスの基本的な便益のことです。
ナイキのシューズでいうと、「クッション性に優れている」「地面に接するときのグリップがよい」などになります。いうまでもなくアスリートたちにとっては重要なベネフィットです。

情緒的ベネフィット

情緒的ベネフィットとは、簡単に言うと「このブランドを買うとき、または使うとき、私は○○○を感じる」と思うことです。

ナイキの例に戻りますと、一般消費者にとってシューズを選ぶポイントは、かならずしも機能面だけではないでしょう。「クールだ」「先進的だ」などの情緒面で選ぶことが多いはずです。
デービッド・アーカーは「最強のブランド・アイデンティティは、情緒的便益と機能的便益の両方を併せ持つ」と述べています。機能的便益と情緒的便益の両方に秀でたナイキは、「最強のブランド」といえるでしょう。

自己表現ベネフィット

「このブランドを買うとき、または使うとき、私は○○である」と思わせるのがブランドの自己表現便益です。
ナイキの場合でいうと、マイケル・ジョーダンのような求道者になりたい、カニエ・ウェストのようなクールなヤツと思われたい――などの欲求を満たすことが自己表現ベネフィットになります。

社会的ベネフィット

「このブランドを買うとき、または使うとき、私は○○○タイプの人たちの仲間である」と思わせるのが社会的便益です。
ナイキに当てはめると、ストリート文化の愛好家の一員であるとか、ヒップホップ文化の愛好家の一員であるとか、そういったベネフィットのことを指します。

4つのベネフィットが結びついたブランドが強い

デービッド・アーカーが提唱する、ブランドの4つのベネフィットをナイキに当てはめて考えてみました。こうしてみると、ブランドには4つのベネフィットが存在することがわかると同時に、それらが分かちがたく結びついているのが優れたブランドだといえます。

例えば「衝撃に強いエアバックが付いているナイキのシューズはとてもクールだ」というように機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットが結びついたり、「クールで先進的なシューズを履いているオレは、ヒップホップカルチャーの一員だ」といった自己表現ベネフィットと社会的ベネフィットが結びついたりします。

商品開発をするときは、どんなに優れた機能を付けたとしても、それが情緒的なベネフィットをもたらすのか、自己表現ベネフィットをもたらすのかまでを考えて設計することが大事です。

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