セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Case Study

「明治 ザ・チョコレート」の4P分析〜実は激安戦略?〜

投稿日:2018年2月14日 更新日:

明治 ザ・チョコレートのWebサイト

2016年9月に発売してから1年間で約3000万枚を販売し、一大ヒット商品となった明治の板チョコ「明治 ザ・チョコレート」。今回はこの商品の4P分析を行い、成功の理由を探りたいと思います。

クラフトチョコレートを200円台前半で販売

「通常の板チョコの倍はするにもかかわらず」「2倍に値上げでより売れた」「高級チョコレートを増産へ」…「明治 ザ・チョコレート」の分析記事にはこのような文言が並びます。しかし、「明治 ザ・チョコレート」は、本当に高価格戦略をとったのでしょうか。

コンビニのチョコレートのコーナーを眺めると、「明治 ザ・チョコレート」は決して高価格ではないことがわかります。「明治 ザ・チョコレート」(219円、あるコンビニの税抜販売価格)はたしかにチョコレートでは廉価な板チョコ「明治ミルクチョコレート」(109円)の2倍の価格ですが、同じ明治の「チョコレート効果」と同価格(219円)です。板チョコに限らなければ、明治「メルティーキッス」(246円)、森永「カレ・ド・ショコラ」(330円)などのチョコレートよりも安めの価格設定です。

コンビニに限定すると中価格帯の「明治 ザ・チョコレート」ですが、チョコレート市場全体からいうと、「明治 ザ・チョコレート」は「低価格」の価格戦略です。
結論からいうと、「明治 ザ・チョコレート」は、「クラフトチョコレートを」(Product)、「激安価格で」(Price),「コンビニ・スーパーで売った」(Place)ことが、勝因といえるのです。

大手メーカーの購買力とチャネル力を活かす

「明治 ザ・チョコレート」は、最近の「クラフトチョコレート」ブームに乗った商品です。クラフトとは「手作り感のある」という意味で、地ビールの「クラフトビール」に始まり、「クラフトアイス」そして「クラフトチョコレート」と、チョコレートにまでクラフトブームが波及しました。

クラフトチョコレートは、カカオ豆の仕入れからチョコレートの製造までを一貫して行う「Bean to Bar」が特徴で、主にチョコレート専門店で販売されていました。価格は一概にいえないのですが1000円以上が一般的で、なかには2000円代の板チョコもあるのが、クラフトチョコレートの市場です。

価格は1000~2000円で、チョコレート専門店でしか買えなかったクラフトチョコレート。これを約200円台前半で、コンビニで売ってしまったのが「明治 ザ・チョコレート」の勝因です。
カカオ豆とチョコ
「Bean to Bar」という言葉がトレンドですが、明治は実に1926年以来カカオ豆からチョコレートを作っているという歴史的蓄積がありました。明治はさらにカカオ農園の管理から行い、高品質なカカオの安定供給を成功させます。これらの製品戦略(Product)により、チョコレート専門店にも対抗しうるクラフトチョコレートの製造が可能になったのです。

また、大手菓子メーカーの明治だからこそ大規模な経済が働き、200円台前半の価格(Price)設定が可能になりました。コンビニで売ることができたのも同様に、明治の強いチャネル力(Place)によるものです。

専門店を疑似体験できるプロモーション戦略

明治 ザ・チョコレート

最後のP、プロモーション戦略(Promotion)ですが、特徴的なのはパッケージで、クラフト感を出すためにまさにクラフト紙を使っています。このことからも、いわゆる高級ブランドのチョコレートをイメージさせているのではなくて、チョコレート専門店の手作り感をイメージさせようとしているのがうかがえます。

注目なのは8バージョン(コンフォートビター、エレガントビター、ブリリアントミルク、サニーミルク、ビビットミルク、ベルベットミルク、抹茶、フランポワーズ)の商品ラインアップで、これらのバージョンをすべてコンビニの商品棚に陳列すると、一つのコーナーのような空間ができあがります。このことからも専門店でチョコレートを選ぶような体験を提供しようとしていることがわかります。もちろんこれも明治のチャネル力があるからこそ、コンビニにそれだけのスペースが確保できました。

ちなみに斬新といわれる縦型のパッケージですが、これは8種類の商品を並べるための省スペースの試みなのではないでしょうか。

マーケティングミックスの好例に学ぶ

「明治 ザ・チョコレート」は、4Pのマーケティングミックスがうまくかみ合った好例です。「クラフトチョコレート(Product)を200円前半(Price)で、コンビニで売る(Place)」というのが斬新であれば、「コンビニで(Place)で、8種類の商品ライアップをそろえて(Product)、疑似クラフトチョコレートコーナーを作る(Promotion)」というのも斬新です。

このようなマーケティングミックスは、大手企業に限らず有効です。4P分析というシンプルなフレームワークを使って、自社の製品を開発していくことが、マーケティングの第一歩といえます。

関連記事

chocolate_cake2

1つ3000円のガトーショコラでわかるブランディング術

イタリアンレストラン・ケンズカフェ東京の「特選ガトーショコラ」は、縦6㎝横13㎝高さ5㎝ほど。この小ぶりなスイーツは3000円という高値でありながら、お取り寄せで飛ぶように売れているのです。今回はその …

投票率の低さをマーケティング・ブランディングの観点で考える

2022年、7月20日に第26回参議院選挙が行われました。止まらぬ物価高、不穏な世界情勢、円安、コロナ禍・・・・とさまざまな課題に加え、投票日の2日前には背景はどうあれ、思いもよらぬ痛ましい事件が起こ …

印刷会社が進むべき16の事業領域~アフターコロナ時代を見据えて~

今回は印刷業界について取り上げます。印刷業界は構造的な低迷もありますが、今回のコロナショックにより大きな変革の波にさらされようとしています。その変革の波をとらえ、印刷会社がどう変わっていくべきなのか、 …

ユニクロ

ユニクロのポジショニング戦略とは? カギは「割り切り消費」

カジュアル衣料のユニクロは老若男女を問わずベーシックな商品を提供していますが、決してターゲティング(顧客の絞り込み)を軽視しているわけではなく、カジュアルファッションでは目立ちたくないという層や、洋服 …

トロフィー

広告にまつわるエトセトラ〜FIFAワールドカップ編〜

もうすぐFIFAワールドカップロシア大会が始まりますね。今回はワールドカップにまつわる広告のお話です。 ソニーCM「見せてくれ内田」の代償 2010年のFIFAワールドカップ南アフリカ大会の日本代表。 …

サイト内検索