ブランディング応用

MBAホルダーとコンサルタントの思考法と問題解決手法の違い これらを有効に機能させるために必要な見極めは

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業績が堅調な各企業において、新規事業の立ち上げや業務改革に伴うコンサルティング会社の利用機会が増加し、コンサルティング会社の業績も好調となっています。

【業界研究】コンサルティング業界の現状・動向・課題について

調査会社のIDC Japanによると、2015年の国内コンサルティングサービス市場は前年比6.3%増の6,463億円でした。国内コンサルサービス市場のうち、戦略、業務改善、財務・経理等のビジネスコンサルティング市場は同8.6%増の3,389億円と高い伸びをみせました。また、IT戦略やIT業務といったITコンサルティング市場も同3.9%増の3,074億円と堅調に拡大しています。

同社は、とくにデジタル関連のコンサルティング市場が伸びるとみており、コンサルティング業界の市場規模は今後、年平均3.8%で成長し、2020年には7,773億円に達すると予測しています。

Uranaru.jp 2019/3/28

世間一般では、「コンサルティング業界=MBA」と思われがちのところがありますが、実際にはそうとも限りません。そして、それぞれの思考法や問題解決手法も、違いが多数見受けられます。

いわゆるコンサルタントと呼ばれる職業に就いている人は、社外の第三者視点による見識や、斬新な提案をビジネス上のキーポイントとしており、依頼主の企業に対するセカンドオピニオン役を務める機会が多くなります。そのため、様々なフレームワークを駆使して企業分析を行い、そこから導き出す回答に独自性を持たせ、新たな企業の指針や問題解決方法を提案するという手法を得意としています。

これは、限られた時間内で依頼主と対峙しなくてならない立場であるため、効率的に最高の結果を目指すために必要不可欠な手法でもあります。もともと、依頼主である企業側は、コンサルタントよりも業界の専門性が高く、その企業自身についても詳しいのが当たり前です。それに対して、第三者の立場で新たな見解や適正意見を述べて、企業支援を行っていくことで、コンサルタントは依頼主に対する存在価値を見出していくのです。

これに対し、きちんとMBAを学んできた人は、フレームワークをあまり重視しない傾向があります。どちらかというと、フレームワークよりも論理的思考を重視し、複数のデータや意見や分析を基に、仮説検証と論点整理を繰り返すことで、少しずつ理論を完成させていき、最終的な問題解決や成果につなげていくという手法をとります。これは、修士論文を作成する過程において、必ず身につけることになる思考法でもあります。

コンサルタントとMBAホルダーの思考法は前述の通りですが、これはどちらが正しいとか、間違いであるという話ではありません。立場や役割の違いであるだけで、それぞれの問題解決手法に誤りがある訳でもありません。ただし、どちらについても気を付けておきたいポイントがあります。それは、その提唱者は「事業者(会社員または経営者)としての実務経験があるのか」ということです。

事業者としての実務経験のない空理空論は、現実性がないにも関わらず、なまじ素晴らしいプレゼンテーションができるため、経営陣はすっかり魅了されてしまいます。しかし、それを現場に落とし込まなくてはならなくなった実務者は困惑し、現場は疲弊していくことになります。結果として、高い金額を払い、分厚いパワーポイントの資料と現場の不満が残されるだけになりがちです。こうして、いわゆる「机上の空論」のために、思ったような成果が出せなかったという失敗例になってしまいます。特に、日本の企業はMBAホルダーを毛嫌いするところがあるため、なおさら批判は大きくなりがちです。

日本の会社は「MBAホルダー」をなぜ嫌うのか

いっとき「ビジネスエリートのパスポート」「キャリアアップの切り札」として脚光を浴びたMBA(経営学修士)だが、ここのところ往年の輝きを失っている。その理由は、苦労して“MBAホルダー”になっても、華々しい出世どころか企業内で冷遇される風潮があるからだという。

NEWSポストセブン 2019/4/30
同志社大学政策学部教授 太田肇氏署名記事

こうした事態を防ぐためには、事業者経験をもち、なおかつ実務者としての立場を理解できる、MBAホルダーやコンサルタントに、業務に関する相談を仰ぐことで、失敗の可能性を減らすことができるでしょう。

もしも、事業者経験が豊富で、実務者の立場が理解でき、企業の大小を問わず、現場への落とし込みまで伴走できるMBAホルダーのコンサルタントとの縁があった場合には、それは数少ない貴重な縁となる可能性が高いとも思われます。
是非とも、その方との長いお付き合いをお勧めいたします。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

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