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マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?

 

マクドナルドとモスバーガー

ポジショニングはフィリップ・コトラーが提唱したマーケティング手法であるSTPマーケティング(「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つからなる)の一つとして知られており、マーケティング、ブランディングを考える上で欠かせないものです。

今回はブランディングにおけるポジショニングの重要性についてマクドナルドとモスバーガーを比較して解説していきます。

ポジショニングとは

もともとポジショニングとは、店舗におけるお客の目の高さにあわせた商品陳列のことを指していましたが、マーケティング戦略家であるアル・ライズとジャック・トラウトによる1982年に出版された共著 「Positioning : The Battle for Your Mind」により、新しいマーケティングの考え方として広く知られるようになりました。

著作の中で二人は、
「ポジショニングとは、製品をどこに置くかという話ではない。見込み客のマインドのなかに、どう位置づけるかという話である」と述べています。

つまり、ポジショニングとは、商品・サービスが「顧客にどう位置づけされるか」を決めることなのです。

ポジショニングで独自性を打ち出すことができる

アル・ライズとジャック・トラウトは、一般に有名な企業や商品・サービスは既に顧客の中でポジショニングされているとも述べています。そうなると競合他社は、有名企業と同じ位置にポジショニングするのは難しいことが予想されます。

しかし、これを逆手にとったのがセブンアップです。コカ・コーラではないという点を訴求したセブンアップは「アン(非)コーラ」という宣伝をしました。これは、顧客に思われているイメージを強化する方法として非常に有効で、独自性を打ち出し知名度をアップさせることに成功しました。

この「顧客にどう位置づけされるか」「独自性を打ち出す」といった考え方はブランド構築をする上でも非常に重要なポイントです。

ブランド構築におけるポジショニング

それでは、ブランド構築においてポジショニングとはどのように行われているでしょう。
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会ではポジショニングを

競合との比較から、相対的に優位な自社の独自性を築けるポジションはどこかを見つけることです。

(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)

と独自性を発見することだと定義し、ブランド構築の際のステップの中に組み込んでいます。

ポジショニングの具体的な方法

ポジショニングの具体的な方法としては、ポジショニングマップを作成して分析を行います。

ポジショニングマップは下図のように、商品、サービスの属性(安いor高い、カジュアルorラグジュアリー)などから縦軸と横軸を決め、自社と競合の位置をさまざまな軸を基準に作成していきます。ここで大切なのは機能的価値、情緒的価値※とを分けて分析することです。

※時計で言えば、正確な時間を刻むのが「機能的価値」で、デザインなどは「情緒的価値」にあたります。機能的価値と情緒的価値について詳しくは 『今企業に求められる「情緒的価値」とは?をご覧ください』

ポジショニング

(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)

マクドナルドとモスバーガーのポジショニングの違いとは

ポジショニングを進めるうえで、自社の立ち位置だけでなく、競合の立ち位置を把握し比較することで、自社の独自性を発見することができます。そして独自性をみつけるためには、いろいろな条件で比べることが必要になってきます。

今回はポジショニング例として、マクドナルドとモスバーガーをファーストフードの特徴である「スピード」「価格」と、消費者の意識が高まっている「食の品質管理」という3つの機能的価値を基準に比較してみます。

1.スピード

マクドナルドによる「ENJOY!60秒サービス」

マクドナルドでは2012年に「ENJOY!60秒サービス」というキャンペーンを行っていました。このキャンペーンは、お会計終了から商品お渡しまでを砂時計で計り、60秒を超えてしまった場合にハンバーガー類と交換できる無料券をプレゼントするというものでした。これはマクドナルドのオペレーションの速さがあったからこそ実現できたものといえるでしょう。

注文を受けてから調理するモスバーガー

一方モスバーガーでは、注文を受けてから調理をしているため時間がかかります。そのため注文後に番号札を渡され、調理後に店員がお客の席まで商品を渡しにきます。あるテレビ番組の調査によるとモスバーガー1個つくるのに7分6秒かかったそうです。

2.価格

次に「価格」ですが、マクドナルドの一番安いハンバーガーは100円とマクドナルドはモスバーガーをはじめ競合他社を価格で圧倒しています。

マクドナルドの「おてごろマック」

2015年10月から始まったマクドナルドの「おてごろマック」では3種のハンバーガーを単品200円、サイドメニューとドリンクが付くセットでもワンコインの500円で提供しています。他にもSサイズのコーヒー、コーラなどのドリンク、ソフトクリームも100円で提供しています。

また、電子クーポンをダウンロードできるモバイル会員数が3,500万を突破していることからもお客が安さを求めていることがわかります。

プレミアム感を打ち出すモスバーガー

モスバーガーでは最安のハンバーガーを220円、一番高いハンバーガーを580円(期間限定のとびきりハンバーグサンド「傑作ベーコン」スライスチーズ入り)で提供しています。こちらでもWeb会員向けにクーポンを配布していますが、不定期で更新されています。

このようにモスバーガーでは、プレミアム感を打ち出した商品販売やクーポンを不定期に配信するなどマクドナルドの低価格路線とは一線を画しています。

3.食の品質管理

モスバーガーの生野菜は全て国産

モスバーガーでは、生野菜は全て国産で、お店には産地、生産者が黒板に明記されています。そのため消費者はモスバーガーに対し「安心・安全」だと感じています。また、注文を受けてから調理しているため、作り立てを味わうことができます。

食の問題が相次いだマクドナルド

一方、マクドナルドでは、2014年の期限切れの鶏肉問題や2015年の異物混入問題で、品質の面で不安に思う消費者も未だ多いのが現状でしょう。WebサイトのQ&Aでは「トマトの鮮度は、ちゃんと保たれているのですか?」など、飲食店として当たり前に行っているであろう品質管理について、心配している消費者の質問が掲載されています。

3つの条件でみてきましたが、それぞれポジショニングの縦軸と横軸に当てはめると

・マクドナルドは「早くて安い」「早いが質がよくない」「安いが質が良くないので不安」
・モスバーガーは「遅くて高い」「遅いが質がいい」「高いが質が良く安心」

というポジショニングを想定することができ、マクドナルドは安さと早さ、モスバーガーは品質に重きを置いているのがわかります。

独自のポジションを確立できたモスバーガー

あるネットリサーチの2011年のアンケート※によると、消費者がファーストフードに求めているサービスの重視点は、「価格」59.5%、「スピーディ」56.3%、「清潔感」46.9%が上位3項目となっています。マクドナルドは「スピード」と「価格」でモスバーガーを圧倒しました。しかし、2015年の異物混入問題により、同年10月以降、都心部を中心に閉店が相次ぎ深刻な業績不振に陥っています。

モスバーガー成功の要因

対照的に、2015年上期の売上が対前年比で6.5%増えたモスバーガーの成功の要因は何でしょうか。

マクドナルドの食の問題の影響ももちろんありますが、長年行ってきた取り組みが要因として考えられます。「安くて早い」というマクドナルドと同じポジショニングをするのではなく、モスバーガーは「食の品質管理」に力をいれてきました。生野菜は全て国産にし、農薬や化学肥料に頼らない栽培方法で作られた野菜を使っています。

また先ほどのアンケートによると、モスバーガーは味の項目で男女ともに、ハンバーガーチェーン1位という結果でした。

安心、安全な品質に加え、昨今のヘルシー志向、プレミアム志向、マクドナルドの食の問題などの後押しを受けて、モスバーガーはファーストフードの考え方とは真逆の
「遅くて高いが、それでも食べにいきたい美味しさ」
という正反対のポジショニングをすることにより成功しています。

モスバーガーはますます強いブランドに

今回は機能的価値からポジショニングを考えてみましたが、情緒的価値から考えてみると、モスバーガーは「ヘルシー志向」という面で消費者に支持されていることがわかります。

最近では第3の価値とも呼ばれる社会的価値が非常に大切になっていると考えられています。モスの食育プログラムといった活動は社会的価値の要素が強くみられ、ますます強いブランドとなっていくことでしょう。

ポジショニングはブランド構築に必須な考え方

ポジショニングについて、マクドナルドとモスバーガーを比較した具体例をもとに紹介してきました。ポジショニングは視覚的に競合と自社を相対的に考えることができます。さらに、これまでになかった市場での独自性を打ち出すためにも必須な考え方です。

是非、マーケティング、ブランディングを行う際のアイデアとして取り入れてみてください。

その他 参考になる記事

スペシャルインタビュー 一貫した哲学が支えるモス・ブランドの広がり – 前編

 - ブランディング応用

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