【特別寄稿】田中洋 特別寄稿

【特別寄稿】サービスの質も向上! 従業員が自ら動くようになる「インターナルブランディング」とは?

投稿日:2015年5月29日 更新日:

少子高齢化の問題や労働環境の厳しさにより、人材の確保が厳しいサービス業。他業種に比べて人の入れ替わりも早く、せっかく教育してもなかなかサービスの質が安定しないなど、サービス業の経営者は多くの悩みを抱えているようです。

そこで、今回は、従業員のモチベーションやサービスの質をも向上させる「インターナルブランディング」について紹介します。

サービス業が抱える問題とインターナルブランディング

サービス業において、自社のサービスの品質を改善することは非常に難しい問題です。

その理由は、サービスの品質はひとり一人によってばらつきがあるという点です。しかも、サービスはその場で消費されるため、サービスが提供されるや否や消滅してしまい、あとから評価するのが難しいという点もあげられます。

このようなサービス業が抱える根本的な問題を解決し、サービス業の行動の基盤として一役を担うのが、「インターナルブランディング」です。

企業におけるブランドがもたらす影響は、顧客や取引先、地域社会といった社外に対するものと、従業員といった社内に対するものの2つに分けられます。

社外に対するものを「エクスターナルブランディング」といい、社内に対するものを「インターナルブランディング」といいます。

「インターナルブランディング」は、「ブランドの持つ力」を活用して、組織内部のメンバーあるいは利害関係者に対し、組織の課題を解決しようするものです。

組織に対するブランディングの役割

組織メンバーに対しブランドは、こういう企業だからこのようにふるまうべきだ、という行動や倫理、規範となるものです。

さらに、価値観やモラル、視点といった考え方の基準となります。企業理念や経営理念といったものよりも、ブランドの方がより社員に共通認識として浸透させやすいのが特長です。

ブランドはもともと社外に対し発信するものであるため、外に対しふるまうサービス業においては、特に有効となるのです。

つまり、サービス業のブランド化(ブランディング)とは、「お客様にこういうふうに見せたい(思われたい)ので、それを基準にして私たちはこう振る舞いましょう」と社員に浸透させることです。

例えばホテルの場合、従業員ひとり一人に現場での権限が委譲されています。ということは、従業員自身が現場で考えて問題を解決しなくてはなりません。

しかし、何をどう判断すればいいのかということがあまり統制されていないのが実情です。

そこでブランディングによって、組織の方向性を明確にし共有化することで、ひとり一人に判断基準が備わり、サービスの質が標準化されるのです。

ブランディングの成果をはかる

ブランディングの目的は「価格競争に巻き込まれず、少しでも高く、少しでも多く、自社の商品やサービスを買ってもらうこと」です。

そのためには、ブランディングをしたらその効果を測定しなくてはなりません。しかし、何が売上に対しもっともインパクトを与えているかはわからないため、何らかの代表指標を作ります。

例えばブランドに対する好感度だったり、顧客満足度(CS)だったり。CSが高まると売上が伸びるということは実証されていませんが、CS向上を目指すことで会社が一つにまとまるため、どの企業でも積極的に取り組んでいます。

また、従業員満足度(ES)も代表指針のひとつです。CSもESもブランドもすべてがつながっていて、最終的な売上に至るまでに、CSが非常にインパクトを及ぼす場合もあれば、ESやブランドが影響を及ぼす場合もあります。

代表指標は業種によって異なるため、企業ごとに売上につながるプロセスを解明する必要があるのです。

ブランドの影響下で、授業員が自ら創造的に動くことが理想の形

CSもESもブランドの関係性はとても密接です。ESが高い企業は、自分たちが満足しているブランドにできるだけ沿った行動をしようとし、その行動が顧客にいい影響を与え、CSが高まるというもの。

例えばグーグルなら、「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」だから、社員ひとり一人が「私はこういうアイデアで実現する」と自ら考え、創造しています。それによって生まれたサービスがCSを高めているのです。

このように、ブランドの持つ意味を自分なりに解釈して主体的に行動する社員の組織体を「ブランド・インスパイアード・カンパニー」と名付けています。

インスパイアとは「刺激を受けて発想する」という意味です。トップダウンで全員が同じ方向を向き、同じ行動をするというのがブランドではなく、ブランドの影響下においてそれぞれの社員が創造的に自由に動いているのが理想の形と言えるでしょう。

まとめ

インナーブランディングは組織の方向性を定めるばかりでなく、結果的に外への影響力をも持ち、企業の成長につながるものです。特に組織に課題を抱えるサービス業においては、一度インナーブランディングの取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

Profile

田中洋田中 洋 Hiroshi Tanaka
中央大学大学院
戦略経営研究科教授
日本マーケティング学会副会長

 

京都大学博士(経済学)
(株)電通 マーケティング・ディレクター、法政大学経営学部教授、
コロンビア大学大学院ビジネススクール客員研究員などを経て2008年4月より現職。
消費者行動論・マーケティング戦略論・ブランド戦略論・広告論に精通し、
多くの企業でマーケティングやブランドに関する戦略アドバイザー・研修講師を勤める。
その著作・研究活動により、日本広告学会賞を三度、中央大学学術研究奨励賞、
また東京広告協会白川忍賞特別功労賞を受賞している。

http://hiroshi-tanaka.net/

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