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Case Study

売上を7倍にした「フルグラ」から学ぶ!マーケティングの目標設定とは?

投稿日:2016年8月10日 更新日:

売上7倍

マーケティングやブランディングが成功しているかどうかを測るためには指標が必要です。今回は、ブランド構築の最後のステップである「マーケティングの目標設定」について事例を交えながら解説します。

マーケティングの目標設定:KGIとKPIとは

マーケティングにおいてよく使われる指標といえば、KGIとKPI。

KGI(Key Goal Indicator)は、重要目標達成指標を意味し、「2016年の売上を3億円にする」など、最終目標を示します。

KPI(Key Performance Indicator)は、重要業績評価指標であり、一言で言うと中間目標です。「2016年の売上を3億円にする」というKGIを設定した場合、「月に2500万円の売上をあげる」「月の売上を達成するために月の訪問回数は○回以上とする」などの中間目標へと落とし込みます。

その他にも、ROI(費用対効果)やLTV(顧客生涯価値)などの横文字はよく聞くところです。

ブランディングにおけるマーケティングの目標とは

ブランド構築における最後のステップがマーケティングの目標の設定です。ブランド・マネージャー認定協会では、次のように述べています。

目標とは、3C分析、STPマーケティングで設定した顧客(市場)とブランド・アイデンティティから判断して、いつまでに、どのくらいの実績を目標とするのかを明らかにすることです。その際に、目標をしっかりと数値化することが非常に重要です。

(出典:「社員をホンキにさせるブランド構築法」同文舘出版)

数値化するのは、売上高、利用客数、稼働率など、事業の収益性に関するものですが、ブランディングでは、顧客にブランド・アイデンティティが伝わっているかどうかも重要です。

例えば、長野県の高級旅館「しんゆ」では「神秘なる諏訪湖に心癒される宿」というブランド・アイデンティティを掲げました。この場合の目標設定は「お土産品売上高」、「リピート率」、「紹介比率」といった項目で、ブランド・アイデンティティが伝わっているかどうかを判断することができます。

目標設定のポイント

目標設定では、特に下記の3つがポイントとなります。

・3C分析やSTPマーケティングからの一連の流れと、整合性を持たせる
・設定したペルソナ(顧客・市場)にふさわしい目標値になっているか
・設定したペルソナと実際の購買者との間はかけ離れていないか

それでは、設定したぺルソナを無視して売上を求めたあまりに、目標設定に失敗したモデルケースを考えてみます。

全国展開によって失敗した飲食店A社

閉店

アメリカから日本に初出店したハンバーガーショップA社。A社は、ハンバーガー単品が1200円と強気な価格設定で、「都市部のプレミアム嗜好の強いお客」をターゲットにしていました。 それに合わせて当初の目標は都内6店舗まで拡大することでした。

日本初上陸が話題となり、連日行列が続き、すぐに目標であった6店舗まで拡大。そこから売上が増加するにつれて、目標も全国100店舗と大きくなり、数年後には、地方の大きい都市を中心に全国に60店舗まで展開するようになりました。

当初は、その話題性から毎日行列だったハンバーガーショップ。しかし、店舗が拡大するにつれて、目新しさが薄れ「どこでも食べられる高いハンバーガー」というイメージに変わってしまいました。結果的に、全国的に客離れが起こり、店舗数の縮小へとつながってしまいました。

この失敗は、「都市部のプレミアム嗜好の強い客」というペルソナを設定したにも関わらず、売上を求めて全国展開を目標としてしまい、ブランドを守れなかったのが原因と言えるでしょう。

一方、売上目標を現状の3倍以上に設定したにも関わらず、ブランドのイメージを戦略的に変えることで売上達成に成功した「フルグラ」の事例を見ていきます。

戦略的PRによって成功した「フルグラ」

フルグラ

目標設定に対して、ブランドのイメージを戦略的に変えて成功したのが「フルグラ」です。

25年前からカルビーが製造・販売をしているシリアル「フルグラ」。いくつかの穀物を主原料にフルーツがミックスされていて、栄養バランスに優れているのが特徴です。 ここ5年ほどで急激に注目を集め、売上も右肩上がりに伸びています。

「フルグラ」は、2002年~2009年ごろは年間売上高が30億円ほどの横ばい状態でしたが、社長である松本晃氏の一声がきっかけとなり、売上100億円のブランドにすることが目標値となりました。

『フルグラ』は、もともと売上30億円のブランドでした。2009年に代表取締役会長兼CEOである松本晃がカルビーに来て、ひと通りカルビー商品を食べてみました。『フルグラ』を食べて、「こんなにうまいものが、なぜこれだけしか売れていないんだ。100億円くらいは軽く売れるだろう、何とかしよう」と社内に指示を出しました。

元々、シリアル市場は250億円ぐらいが限界で、これ以上伸びないだろうと言われていました。 しかし実際は、シリアル自体を食べたことがない消費者が77%もいたのです。 これは売り出し方に問題がありました。シリアルは「簡単に食べられて健康的」というPRによって、「手抜きの商品」というネガティブな印象を消費者に持たれてしまっていたのです。

戦略PRという新しいマーケティング戦略

フルグラ+ヨーグルト

そこで、市場にいる潜在的な消費者のイメージを変えるために戦略PRという新しいマーケティング戦略を行いました。簡単にいうと、メディアをうまく使ったイメージアップ戦略です。

まず、ネガティブなイメージの「シリアル」という言葉は使わず、「グラノーラ」へ言い方を変更。副食として食べてもらうという新しい食べ方の提案も、メディアや店頭での試食販売で行いました。

・シニア女性向けには、ヨーグルトを使って「かむヨーグルト」
・ヨーグルトに『フルグラ』を加えて食べると栄養価が上がり健康に良い
・子供が好んで食べるパンケーキと一緒に『フルグラ』を食べることでフルーツの甘みでおいしくなり、さらに身体に良い食事になる
・流行っていたマグカップ料理に噛む食感を加える「噛む足し」の訴求(これにより秋冬も売れるようになった)

そして、中目黒にあるグラノーラ専門店に注目し、「グラノーラの専門店ができるほど、ブームの兆しが来ている」というプレスリリースを各メディアへ発信。当初のターゲットであったシニア女性、お母さん世代が読んでいるメディアや、流通(バイヤー)が読む経済誌に取り上げられることで、各バイヤーからの注文が殺到しました。

ブランドのイメージの変化により、売上目標を達成!

こうして、一部の健康志向の人だけが食べている「特殊なシリアル」というイメージから、 グラノーラがメインの「フルグラ」はアレンジして食べることができる、という新しいイメージを生み出すことができたのです。

ブランド・マネージャーであり、「フルグラ」のマーケティングを担当していた藤原かおり氏は、次のように話しています。

もともとのマーケティング手法が、ご飯やパンの代わりにシリアルを食べてほしい、という非常に押し付けがましい手法でした。ですから、『フルグラ』をヨーグルトに加えてもらうなど、とにかく副食でも良いので、一度試してもらう、食卓にプラスしてもらうことを目指したことが成功のポイントだと思っています。

戦略PRの結果、シリアル自体を食べたことがない77%の消費者に対して、ブランドのイメージやポジショニングを変化させて訴求したことにより、「フルグラ」は売上目標を達成することができました。そればかりか、シリアル市場自体が拡大を続け、2020年には1000億円規模になると言われています。

成功と失敗を分けた2つのポイント

事例に挙げたハンバーガーショップA社と、「フルグラ」では、どちらも売上増加を目標としていますが、ペルソナ(顧客・市場)のニーズを把握しているか、ブランドがどう思われていて、どう思われることがゴールなのか、という2つの点において、理解に大きな差がありました。目標設定は、3C分析やSTPマーケティングを徹底して行い、ブランドを理解した上で、進めるのが本流と言えるでしょう。是非参考にしてみてください。

その他 参考になる記事

・「『フルグラ』がチャレンジするカルビーの朝食革命

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