マーケティング

デジタル・ディスラプターとどう戦うか

投稿日:2018年3月9日 更新日:

ハンマーで破壊されたCD

今回は、デジタル・ディスラプターがテーマです。市場を破壊するという意味を持つデジタル・ディスラプターですが、例を用いて説明すると、既存の音楽CDを駆逐するインターネット音楽配信(iTunesなど)のことを「Disruptive Technology」(破壊的技術)と呼び、その企業(アップルなど)を「Disrupter」(ディスラプター)と呼んだりします。

ディスラプターの中でも、デジタル化によって既存企業を破壊しようとする「デジタル・ディスラプター」に対して、既存企業はどう対処すればいいかを説いた著作に『対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方』(マイケル・ウェイド他著)があります。今回はこの理論を取り上げてみたいと思います。

デジタル・ディスラプターに対する4つの対策

アマゾンのWebサイト

(出典:https://www.amazon.co.jp/

まずディスラプターが提供する価値には「コストバリュー」「エクスペリエンスバリュー」「プラットフォームバリュー」の3つがあり、多くのディスラプターはその組み合わせであるとしています。

例えばアマゾンは低価格で(コストバリュー)、ワンクリック決済で(エクスペリエンスバリュー)、広範な商品が手に入るプラットフォーム(プラットフォームバリュー)を提供しています。

同著はその上で、デジタル・ディスラプターに対する戦略を4つ提案しています。

  1. 収穫戦略 ディスラプティブな脅威を遮断し、攻撃されている事業分野のパフォーマンスを最適化するための防衛的戦略
  2. 撤退戦略 攻撃されている事業分野から戦略的撤退をするための防衛的戦略
  3. 破壊戦略 自らの中核事業をディスラプトし、新しい市場を生み出すための攻撃的戦略
  4. 拠点戦略 ディスラプションと関係する競合利益を持続させるための攻撃的戦略

新聞社がとるべき戦略とは

新聞・パソコン・スマホなどでのニュースの配信
新聞社を例として当てはめてみましょう。新聞社にとってのデジタル・ディスラプターはニュースサイトやニュースアプリです。その脅威にさらされた新聞社が取るべき戦略は何でしょうか。

1.収穫戦略

1つめは既存の紙の新聞の制作効率を上げ、そこでの収益を確保することです。記者や支社のリストラ、縦割り部門を集約する、自動化・一元化された制作プラットフォームの導入などが挙げられるでしょう。同著がいうように、できるだけ既存の事業で「粘る」ことです。

2.撤退戦略

2つめは思い切って撤退し、既存のニッチに逃げ込むことです。紙の新聞の事業は売却し、既存の事業で利益を上げている部門、たとえば投資情報の提供や、セミナーの開催・運営などのニッチとして生き残ることです。

3.破壊戦略

3つめは自らディスラプターになることです。ニュースサイトやニュースアプリを立ち上げるだけではディスラプターにはなりえません。例えばニュースサイトとマーケットプレイスを融合させて、情報収集と買い物の両方ができるサイトを構築してしまうなどのプラットフォームバリューの提供などが考えられます。

4.拠点戦略

4つめの拠点戦略がやや難解です。ディスラプターが市場を席巻している間に生まれる市場で利益を享受できるチャンス(バリューベイカンシー)をできるだけ長期間抑えるということです。事業を新設したり、買収したり、提携したりすることで行うことができます。

あなたの業界に破壊的企業は現れるか

新聞社を事例に当てはめてみましたが、どの業界にもこれらの戦略は当てはまりそうです。同著では、デジタル・ディスラプションが起きやすい業界を次のようにランク付けしています。

1位 テクノロジー
2位 メディア・エンターテインメント
3位 小売
4位 金融サービス
5位 通信
6位 教育
7位 旅行・ホテル
8位 消費財製造
9位 ヘルスケア
10位 公益事業
11位 石油・ガス
12位 製薬

 

この順にディスラプトの渦が巻いていると指摘していますが、渦の中心から離れていてもディスラプトが起きないとは限らないとしています。あなたの業界のデジタル・ディスラプターについて考え、対策を打たなければならないと思います。

-マーケティング

関連記事

トロフィー

広告にまつわるエトセトラ〜FIFAワールドカップ編〜

もうすぐFIFAワールドカップロシア大会が始まりますね。今回はワールドカップにまつわる広告のお話です。 ソニーCM「見せてくれ内田」の代償 2010年のFIFAワールドカップ南アフリカ大会の日本代表。 …

走る男

製造業からサービス業へ~トッパン・フォームズとプロネクサスに学ぶ~

今回は印刷業界のトッパン・フォームズとプロネクサスの2社の事例から、「製造業」から「サービス業」への転換のあり方を考えてみます。 印刷付帯サービスを取り込んだ2社 「製品からサービスへ」と唱えられて久 …

VR

VRやAIなどの新技術が躍進!2016年のヒット商品、2017年のヒット予測ベスト30!

日経BP社による月刊情報誌「日経トレンディ」が毎年行っている年間のヒット商品と、来年のヒット予測ランキングが今年も発表されました。今回は、そのランキングを紹介したいと思います。 2016年のヒット商品 …

マーケティング、勘違いしていませんか?

売り上げを伸ばすためには、マーケティングが重要だということは分かっているものの、実践しても思うような効果が得られないという経験はありませんか? それはマーケティングを誤って理解しているからかもしれませ …

返金イメージ

RIZAPは良心的? 全額返金保証ビジネスを比較する

RIZAPの売りは全額返金保証。でも調べてみると、生鮮食品から浄水器、掃除機、ホテル、タイヤ、葬儀屋まで、さまざまな返金保証を採用している企業があるんです。 「三日坊主」への甘いささやき、全額返金保証 …

「オンデーズ」はメガネ業界のZARAとなるか? 〜JINSとは一線を画すファッション路線〜
「オンデーズ」はメガネ業界のZARAとなるか? 〜JINSとは一線を画すファッション路線〜
5月 23, 2018 に投稿された
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
ファイブフォース分析とは!?〜マクドナルドを例に解説〜
2月 9, 2018 に投稿された
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
【誰にでもわかる!?】スターバックスから学ぶ3C分析
2月 15, 2016 に投稿された
スターバックスの4P/4C戦略【立地戦略・プロモーション戦略編】
スターバックスの4P/4C戦略【立地戦略・プロモーション戦略編】
1月 17, 2018 に投稿された
無印良品の「これでいい」ブランドコンセプト
無印良品の「これでいい」ブランドコンセプト
4月 18, 2018 に投稿された
サービスの質も向上! 従業員が自ら動くようになる「インターナルブランディング」とは?
「ブランドM&Aはなぜ起るのか」など、記事一覧はこちら
中央大学ビジネススクール教授 田中洋
【特別寄稿】ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?
ブランド力を最大限に引き出す!世界観のあるブランドが持つ強みとは?

株式会社JOYWOW代表取締役会長
阪本啓一

【特別寄稿】企業に求められる「情緒的価値」とは?
今企業に求められる「情緒的価値」とは?
株式会社イズアソシエイツ代表 岩本俊幸