セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

話題の事例

中国企業のブランド進化論 アリババとダブルイレブンでの販売構造変化

投稿日:2019年11月25日 更新日:

【北京=三塚聖平】中国で「独身の日」と呼ばれる11日に毎年恒例のインターネット通販各社による値引きセールが行われ、中国電子商取引(EC)最大手アリババグループの取引額が2684億元(約4兆2千億円)に達した。過去最高だった昨年の2135億元を上回った。中国メディアは「中国の消費グレードアップと強大な内需の証明だ」(第一財経日報・電子版)と強調した。

ただ、前年比の伸び率は25・7%と、2018年(26・9%)とほぼ同水準だった。18年の伸び率も17年の39・4%を下回っていた。ネット通販各社による競争激化でアリババグループの伸び率が頭打ちになっているほか、米国との貿易摩擦で景気が減速していることが響いたとみられる。中国EC大手の「京東集団」(JDドット・コム)の取引額は2044億元と過去最高を更新したという。

中国メディアによると、取引額が10億元を超えたブランドは15社だった。通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)やスマートフォン大手の北京小米科技(シャオミ)、家電大手の海爾(ハイアール)といった中国メーカーのほか、米国のアップルやナイキ、日本のユニクロなどが入った。

2019年11月12日 産経新聞
中国「独身の日」でアリババ4兆円突破
過去最高更新も競争激化と景気減速で前年並み伸び率

中国では毎年恒例となっている、11月11日の「独身の日(シングルデー・ダブルイレブン)」。国内外問わず、このイベントに関係する各企業は、最大商戦の一つとなるこの日に向けて、商品調達や輸送体制の構築・強化に追われることとなる。

今回の特徴としては、中国企業の品質向上と国家としての自尊心の高まりもあり、シャオミやハイアールなどのグローバルブランドとなった中国系企業で、なおかつ高品質な商品については、今回のシングルデーで大きく売上を伸ばしていることである。実際に、ファーウェイはアメリカでも名指しで脅威論が起きるほど、非常に技術に優れた企業として、海外でも有名なブランド的存在に成長している。

「日本ブランド」が中国で信頼・評価されたこともあり、かつてはこのイベントで日本企業が大きく売上を伸ばし、存在感を発揮していた。しかし、中国人の嗜好変化や越境ECに関する中国での規制強化や法律の変更もあり、日本企業の販売動向は徐々に変化してきている。

現在の中国は、可処分所得の増加と多種多様な嗜好の変化もあり、20~30代の「仏系」と呼ばれる世代においては、知る人ぞ知る、通好みで実力のあるブランドの評価が高まり、売れ行きを伸ばす方向に向かってきている状況である。むしろ、この世代においては汎用的なメジャーブランドの存在感が、段々と薄くなってきてしまっている。

過去のインバウンド需要で成功した日本企業については、中国市況の変化も考慮し、そろそろ戦略を再考すべき時期にきているのかもしれない。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

関連記事

鉄道利用者の増加と沿線ブランド

利用者を増やしている鉄道会社はどこか。日本民営鉄道協会では大手私鉄16社の輸送人員を定期、定期外に分けて発表している。この10年分(2009~2018年度)をまとめた輸送人員の推移から、興味深い事実が …

ダイソー/コーポレート・アイデンティティ刷新、新ロゴ発表

大創産業は3月5日、新社長就任から1年にあたる2019年3月に、企業としてのブランド価値をより世界に向けて拡げていくために、CI(コーポレート・アイデンティティ)とロゴを刷新すると発表した。 新しいコ …

「米大統領選」はパーソナル・ブランディングの見本市?

2020年米大統領選挙への出馬を表明しているマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は今年の政治広告支出額で、先に選挙戦に参入していた資産家トム・ステイヤーらを抜き首位に立っている。 ブルームバーグ …

“ブランド模倣者”がオリジナルを超える日

生活雑貨を販売する「無印良品」の運営元「良品計画」に対して、無印良品そっくりの店舗を持つ中国企業「北京棉田紡績品有限公司」が商標権を巡って起こしていた裁判で二審の北京市高級人民法院は原告側の訴えを認め …

大手コンビニの相次ぐ「駅ナカ化」の背景 ブランド認知度向上作戦

駅ナカに“日本最小級”のローソンが続々とできている。いわゆる“駅ナカコンビニ”だけでなく、駅のホーム上や改札付近にも小さな店舗ができているのだ。最も小さな店舗は売り場面積が約6.6平方メートルで、“日 …

サイト内検索