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ブーム終焉後の生き残り策 焼酎の気になる今後

投稿日:2019年10月21日 更新日:

帝国データバンク福岡支店が7日までに発表した焼酎・泡盛メーカーの2018年売上高ランキングで、霧島酒造(宮崎県都城市)が659億円で7年連続の首位となった。ただ、前年より3.4%減。上位50社の売上高合計も2.4%減の計3140億円だった。

上位50社のうち6割弱の28社が減収。ハイボール人気を追い風に好調なウイスキー販売とは対照的で、焼酎市場はブームが一服し、苦戦しているのが浮き彫りになった。

芋焼酎「黒霧島」が主力の霧島酒造は、九州以外での売り上げが低調だったのが響いた。「いいちこ」で知られる三和酒類(大分県宇佐市)は4.2%減の445億円で2位。

2019年9月7日 共同通信社
霧島酒造が7年連続で首位 焼酎売上高、ブーム一服

一時期はプレミア焼酎人気もあり、大ブームとなった本格焼酎。かつて焼酎は割り材としての甲類焼酎が定番だったが、 現在は、芋・麦・米などを原材料とした、乙類焼酎(本格焼酎)もよく知られることとなった。

ブーム過熱時は、1本10万円を超える転売銘柄まで現れるほどの猛威をふるったが、現在は焼酎の取り扱いを減らす店も増えてきている。

ハイボール人気により、現在は国産ウィスキーが全般的に品薄となっているが、一時期は本格焼酎も同様の状況であった。ウィスキー人気が焼酎人気を凌いだことが、今回の焼酎売上の低迷の遠因だと言われている。しかし、それは本当であろうか。

一番の問題は、ブームの際に広がった顧客層を、拡大・維持できなかったことであろう。

昔の焼酎はイメージの芳しくない酒で、安かろう悪かろうの、代名詞的存在の酒であった。それが、この近年のブームを通じて、工夫を凝らした様々な商品が販売され、ポジティブな印象が増したのが現在の状況である。そういった点で、焼酎は以前よりも顧客への支持・浸透が図りやすい環境ができあがっているのだ。

そういったポジティブな環境は、簡単に生み出されたのではない。多くの蔵が、地道な努力や研鑽を重ねて、商品デザインや味わいなどの研究を重ね、何年もかけて、ようやくブームにつなげることができたのが、近年の焼酎ブームである。

ブームが発生すると、努力の投入量よりも結果が上回る状況が続く。それまでの、努力と結果の関係が逆転するのだ。そして、その状況はいつまでも続くと勘違いしやすい。そうなると、業界全体が顧客支持を失っていくこととなる。

現在人気のウィスキーも、以前は長期の需要低迷に喘いでいた。現在のハイボールブームは、サントリーが苦肉の策で仕掛けた起死回生のマーケティング戦略が、大当たりしたことが成功要因のように認知されているところがあるが、実際にハイボールを徹底的にアピールして売り出すと決めるまでには、相当な時間と人員を投入して市場を研究し、実践に踏み切ったはずである。

焼酎業界は、最も大きい企業の霧島酒造でも売上高は659億円であり、個々の蔵ではもっと小規模な企業が多い。そのため、各企業個別の努力だけでは、対策に限界がある。

ブームが去りつつある今こそ、業界全体として焼酎のブランディングや、メディア・広報体制とマーケティング戦略の強化が求められるところである。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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